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リアクション
アジトの内部。
そこでは今だ激しい戦いが繰り広げられていた。
「悪く思うなよ、こちらも仕事じゃからのぉ」
姿を隠しては現れるを繰り返しながら戦う辿楼院刹那は、暗器を投げつける。
その戦い方に契約者たちは翻弄されていた。
「哭いているぜェ……俺の安定がてめぇらの血を啜りてぇってなァッ!」
大石鍬次郎が吼える。
手にした長刀・大和守安定を素早く取り回し、大勢の契約者たちを相手にひとりで立ち回る。
その動きは歴戦を戦い抜けた者の動きだった。
”人斬り”と呼ばれる鍬次郎は、敵の太刀を受けながしながら敵の隙をうかがう。
そして隙があれば必殺の一撃を放ち、契約者たちを押しのけていた。
しかし契約者たちは、傷つきながらも諦めることなく立ち上がってくる。
「チッ、しぶとい奴らだぜ……それに数が多い。オイっ! どうすんだよ、葛葉!?」
鍬次郎は益材さん、玉藻さんと呼ばれるリビングアーマーに守られている葛葉を振り向いた。
その時、抜け穴の奥からいくつもの悲鳴が響いてきた。
争いを繰り返していた者たちは、そのおぞましい声に思わず手を止める。
「……どうやら潮時のようですね」
悲鳴の中に白衣の男の声があったのを聞き取った葛葉はそんなことをつぶやいた。
そんな彼女はおもむろに魔法と科学を融合した「魔科学」により作られた魔科学兵器・禍津殺生石を取り出した。
するとその禍津殺生石が放つ瘴気が、葛葉の躰へと纏わりついていく。
彼女はそれを受け入れ、瞼を閉じた。
穴という穴からスルリと中へ入り込んだ瘴気は、その禍々しいまでの力で葛葉の体を内側から突き上げる。
その度に、彼女に生えていた狐のような尻尾がひとつまたひとつと増えていき、最後には六つの尾となった。
事が終わり、ぶるりと体を震わせた葛葉はゆっくりと目を開いた。
そしてその顔に、苦味のある快感を得たような表情を浮かべる。
「ふっ」
と、葛葉は今までとは格段に違う禍々しくおぞましい気配を放ち始めた。
その気に契約者たちは圧倒される。
そんな葛葉はぬらりと光る瞳で契約者たちを見つめた。
「炎におぼれて死なば死ね」
そしてそう言い放ち、その手を勢いよく横に薙いだ。
すると朱色の炎が飛沫のよう周囲に飛び散って契約者たちを襲う。
さらにその炎たちはこの場所に残っていた書類や薬剤などに引火して、辺りを火の海へと変えていく。
「……もうこれ以上戦うこともないでしょう。それよりもあの人が持っていったデータが残っているかどうかが心配です。皆さん、ここは引きますよ」
葛葉はそう言うと、抜け穴を使って炎の中から脱出する。
それに続くように、契約者たちと敵対していた者たちも抜け穴の奥へと消えていった。
炎の壁に阻まれて彼らを追うことの出来ない契約者たちは、苦々しい表情を浮かべながらもこの場所を次々と離れていった。