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ACT6・M


「豊和、本当に別の出入口なんてあるんですか?」

 アジトから少し離れた森の中、南部豊和と一緒に他の出入口を探しているレミリア・スウェッソンがつぶやいた。
 先ほどまでがレン・オズワルドと一緒に別の出入口を探していたが、彼は近くにある河を調べてみると言ったので、いまは別行動中だ。

「うーん、絶対にあると思うんですけどね」

 豊和は眉根を寄せて難しい表情を浮かべる。
 そして周囲を注意深く見渡す。
 だが、それらしいモノは発見できない。
 ため息をついて豊和がその場を離れようとした時、地面の一部が突然開いた。

「えっ!?」

 豊和は思わず声をあげる。

「豊和、隠れて……!」

 だがレミリアの声を聞いて豊和は慌ててしゃがみこみ、背丈の高い雑草の中に身を隠した。

 開いた地面からは白衣を来た男たちが次々と這い出でてくる。
 どうやら秘密の抜け穴のようなものならしい。
 その様子をじっと見ていた豊和は隣に隠れているレミリアに囁く。

「あれって、他の方に見せていただいた写真の男とそっくりですよね?」
「そっくりというか、その人だと思いますけど……」

 ふたりはしばらく無言で顔を見合わせる。
 そしてどちからともなく頷くと、身を隠しながら白衣の男たちの元へそろりそろりと近づきはじめた。

「なんとか抜け出しましたね、博士」
「そうですね、とりあえずは河に用意してある舟で逃げましょう」

 知識を持っている以外は特に取り柄のない男たちは、そんな豊和たちの接近に気づかずに会話を交わす。

(レミリア)
(まかせてください)

 小声でそんな会話を交わす豊和たち。
 と、レミリアが草陰から飛び出して白衣の男へと躍りかかった。

「何っ!?」

 白衣の男はそれに驚いて声をあげる。
 そして男は足をもつれさせ、地面へと倒れ込んだ。
 レミリアは仰向けに倒れる白衣の男を踏みつけ、その首元に処刑人の剣を突きつける。
 そんな状況を見た助手が、慌てて拳銃を取り出した。

「撃てるものなら、撃ってみろ……!」

 口調が変わっているレミリアは、その身からおぞましいまでの殺気を放つ。
 その気に当てられて、助手たちは力なくその場に腰を落とした。

「やりましたね、レミリア」

 豊和は草陰から姿を現して言った。
 レミリアはその言葉にうなずいて答える。

「――ククっ、アハハハハハッ!」

 と、仰向けに倒れていた白衣の男が突然大笑いを始めた。
 そんな笑い声を聞いて、豊和たちは白衣の男へと訝しげな視線を向ける。
 すると白衣の男は、視線を空を見つめたまま両手を上げた。

「助けに来てくれたのですね、M!」

 助けに来た――その言葉を聞き、その場にいた者たちは様々な思いを持って一斉に白衣の男が見つめる上空へと視線を向けた。
 するとそこには、ヴィクトリア朝時代のような古き良きメイド服を着こなしたひとりの女性が浮かんでいた。
 金色の髪をした彼女は隻眼で、青い瞳の片方は黒い眼帯で隠されている。
 そしてその眼帯には、下の男たちが着ている白衣に刻印されている六芒星の中に”W・F”と描かれたマークが同じように刻印されていた。