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リアクション
「Mッ! なにをしているんです!? 早く助けてくださいッ!!」
白衣の男に”M”と呼ばれるその女性は、男の呼び掛けには答えず、片方しかない青い瞳で静かに彼を見つめている。
「ひとりか――それなら私だけで十分だッ!」
と、そう言ったレミリアは封印を解凍し、能力を極限まで高めた。
そしてMを睨みつけ、周囲の重力へと干渉する奈落の力を発動させる。
Mは攻撃をされてようやくレミリアに気がついたといった様子で視線を彼女へと向けた。
「……ムダ」
そして、Mは短くそう言い放つ。
すると青い瞳の奥が妖しく輝き、レミリアの奈落の力を打ち消した。
「なっ……!?」
レミリアは目を見開く。
だが彼女は、すぐにもう一度同じことを試みた。
しかしそれは出来ない。
なぜならレミリアは、Mによって能力を封じられてしまったからだ。
彼女は何が起こったのかわからなかったが、苦々しくMを見つめる。
「さすがはMです。さあ、早く僕を……」
《助けない》
「えっ――」
と、白衣の男の頭の中だけに、テレパシーでMの声が響く。
「なっ、なにを言ってるんですか!?」
突然ひとりで慌て出した白衣の男に皆は眉をひそめる。
《あなたはもういらない》
「そんなバカなッ! あのお方は僕の研究の素晴らしさを理解してくれていたのでは――!」
《あなたはもう用済み……データだけもらっていく》
「なっ、なんだって……! ふざけるな、この研究は僕のモノだッ! だっ、誰にも渡すものかァッ!!」
と、白衣の男の体がいきなり燃えた。
レミリアは驚いて白衣の男から飛び退いた
「うっ、うわあああああッ!?」
燃える白衣の男は狂ったようにその場をのたうち回る。
「あづいぃッ、あぁぁァ嗚呼ぁあアずぅぅぅいぃぃっッッ!!」
白衣の男の皮膚が焼け爛れていく。
そんな絶え間なく続く激痛に、白衣の男は喉が裂けんばかりに叫び続けた。
そんな白衣の男の脳裏に最後の言葉が響く。
《使えない犬》
もがき苦しんでいた白衣の男の動きがだんだんと鈍くなっていく。
そして黒い消し炭のような塊になると、ついに白衣の男はまったく動かなくなってしまった。
ガチガチと顎を震わせながらそんな光景を見ていた助手たちは、なんとかこの場を離れようと地を這うように逃げ出した。
だが、そんな助手たちの体にも次々と自然と火がついていく。
彼らも白衣の男と同じような恐ろしい悲鳴を上げると、そのうちに動かなくなってしまった。
「……」
それを見届けたMは、白衣の男たちが持ち出してきた資料などをサイコキネシスを使って自分の周りに引き寄せた。
「あっ!」
周囲の惨状に顔を青くさせていた豊和は、ようやく我に返ってその行動を阻止しようと賢人の杖を構える。
だがそんな彼に向かって真空波が飛んできた。
「うわぁっ!?」
豊和はそれを受けて大きく後ろへと吹き飛ぶ。
「豊和!?」
能力を封じられたレミリアは彼の側に駆け寄ってその身を抱き起こすと、空に浮かぶMを睨みつける。
Mはそんなレミリアに一瞥をすると、資料と共にどこかへと去っていってしまった。