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リアクション
N‐1に次々と攻撃を加えていく契約者たち。
「余は太陽神アメン=ラーの化身であるぞ!」
そんな中、N‐1に向かってびしっと人差し指を突きつけてそう叫んだのはトゥトゥ・アンクアメン(とぅとぅ・あんくあめん)。
古代エジプトのファラオ・ツタンカーメンの英霊である彼は、N‐1に自分の霊格の方が上であることをわからせようと王のような威厳を見せつける。
『――GUUUUUU!』
だが、N‐1にその王の威厳は通用しなかった。いまの彼にとって自分以外のその他は”喰らう”対象でしかない。
N‐1は大きく息を吸い込むと、トゥトゥの声が聞こえた方へと炎の息を吐きだした。
「危ない!」
ダッシュローラを唸らせて現れた霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)が、トゥトゥを庇うように前に出た。
そして手にしていたサブマリンシールドで炎を防ぐ。
「もらったよ!」
と、炎の闘気を燃やす緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が拳を振り上げてN‐1に飛びかかった。
彼女は烈火の気合とアイアンフィストを組み合わせた炎の拳をN‐1の巨体に叩き込む。
「むむっ!」
だが、拳を打ち込んだ透乃はその感触に眉をひそめた。
外見はそんなに硬そうには見えないが、その皮膚はまるで龍の鱗のように硬かったのだ。
『――GAAA!!』
N‐1は猪のような顔を振って巨大な牙を振り回す。
透乃は地面を蹴って飛び退くとN‐1から距離を取った。
「へぇーっ、なかなか強いみたいだね。これは楽しみだよ」
透乃がそう言うと、炎の闘気を再び燃え上がらせる。
そんな彼女は、腰を軽く落として拳を引くと力を溜め込んでいく。
「陽子ちゃん。少しあの怪物の注意を引きつけておいて」
「まかせてください」
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はそう言うと、凶刃の鎖【訃韻】を片手で器用に操り出す。
「いきますよ!」
そんな彼女の声と共に、凶刃の鎖がN‐1へと襲いかかった。
「みんな、サポートするわ」
ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)が呪文を唱え、仲間たちの中に眠る荒ぶる力を覚醒させる。
「はああッ!」
ルシェンのサポートを受けた榊 朝斗(さかき・あさと)は、力がみなぎるのを感じながら手にしたトンファー式の無光剣”ウィンドシア”を振るった。
目に見えぬ刃がN‐1の体を襲うが、その頑強な皮膚がその攻撃を弾く。
「斬れない!? だけど、それなら……!」
朝斗は身を翻し、N‐1へもう一度攻撃を行う。
今度は無理に斬ろうとはせず、刃が触れた瞬間にサンダークラップを発動させて強烈な電撃をお見舞いする。
その攻撃は効果があったのか、N‐1は苦痛に呻く声をあげた。
「今だ、みんな!」
それを見て、朝斗は皆に向かって叫ぶ。
「いっくよぉッ!」
その声に応えるように、力を溜めていた透乃が地を蹴って駆け出した。
対するN‐1は口から地獄の炎を吐き出して、透乃の接近を妨げようとする。
だが彼女は止まらない。
透乃はそのまま突き進み、炎に飲まれしまった。
「――でりゃああああッ!」
だが、炎の中から気合の入った声が響いてくる。
鍛え上げて完成された透乃の肉体は、龍の鱗を纏ったかのように硬く、N‐1の炎にも耐え抜いていた。
そんな透乃はついに炎を突き抜け、N‐1に肉薄。
チャージブレイクで攻撃力を増大させた炎の拳を疾風の如き速さで突き出した。
すると手榴弾が爆ぜたかのような派手な音を響かせて、透乃の拳がN‐1の体に突き刺さる。
その会心の一撃は、いままで物理攻撃を受けつなかったN‐1の硬い皮膚を突き破り、その身に大きなダメージを与えた。
N‐1は緑色の血を吹き出して、その巨体をよろめかせながら後ろへと下がった。
「やああーッ!」
と、上空からレイカ・スオウの声が響いてきた。
彼女はN‐1の真上から急降下して一気にその距離を詰める。
「これでどうです!」
そして敵の背中に張り付くと、ディス・キュメルタの玄を引いて氷術を叩き込んだ。
ディス・キュメルタを介して零距離で放たれた氷術は強力な超至近距離魔術となり、N‐1の巨体を吹き飛ばす。
だが超至近距離魔術は術者への反動も大きく、レイカの身までも空中に吹き飛ばした。
「くぅッ!?」
強化光翼で姿勢を制御し、レイカは空中でなんとか止まる。
そんな彼女がぽつりとつぶやいた。
「あと5回……!」
その回数は自分が反動に耐えられる限界の数だった。
レイカは目を細めて、地面に倒れたN‐1に視線を向ける。