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鳴動する、古代の超弩級戦艦

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鳴動する、古代の超弩級戦艦

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7章 「人の生み出した悲しき兵器」


 〜古代兵器・中枢エリア〜


 コマンダールカルカ・ルー(るかるか・るー)、トランスヒューマンの剣の花嫁ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
 セネシャルエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)、ネクロマンサーの吸血鬼メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)
 4人は中枢システムの所まで辿り着き、その中枢システムと戦闘を繰り広げていた。

 部屋の中心に鎮座する巨大な人型の魔物……イリュジオン。
 彼こそがこの古代兵器の頭脳であり、中枢システムの役割を果たしていた。
 彼は古代に人の手によって作られ、新兵器として使用されるはずであった。
 しかし、あまりにも自我が強くなり過ぎた為に、危険と判断され封印処理を施したうえで、
 地底深くに埋められたのである。

 必要とされたはずの力。必要とされたはずの自我。
 ただ、人間の為に、役に立ちたいと思ったからこそ、辛い研究に耐え、調整に耐え、獲得した力。

 それを不要とされた時の絶望が、深い哀しみが、彼の心を復讐という言葉で塗り潰してしまったのである。

「我を生み出した人間が……我を不要と判断したように! 我もまた、人間を不要と判断しよう!!」
「っ……貴方を生み出した人間達はもうこの世にはいない、勝手に恨まれても困るのよ!」

 ルカはブライトオブブレイドを中段に構え、跳躍。イリュジオンの胴体を横一文字に斬り裂く。
 胴体を足場にさらに跳躍し、ブライトオブブレイドを上段に構え、縦に引き裂いた。

「ぐううおおおおおーッ! ちょこまかとうざったいぞ人間ッ!!」

 巨大な腕を薙ぎ払うが、ルカにはその攻撃は当たらず、代わりに腕を両断され、腕は地面に転がった。
 傷跡からは大量の血が吹き出し辺りを真っ赤に染め上げる。

「ほら、どうしたの? もっと来なさいッ!!」
「このおおおおーーッ!! 死ねえええええ人間ーーーッ!!」

 ルカの挑発に乗り、イリュジオンは複数の光弾をルカに向かって放つ。
 それを回避しながらタイミングを計り、いくつかの光弾をイリュジオンの顔に向かって弾き返した。
 光弾はイリュジオンの顔に命中すると、小規模な爆発を起こした。

「ぬぐあああーー!!」

 ルカはそのタイミングを逃さず、さらにイリュジオンの身体をブライトオブブレイドで斬り裂いていく。

 ルカがイリュジオンの注意を引き付けている間、ダリルが部屋内に機晶爆弾の取り付けを行っていた。

「メシエ……ルカの状況を教えてくれ」
「そうだな、イリュジオンの頭に血が上っている分、ルカが優勢だな。このままの状態を維持すれば
 設置し終わる前に倒してしまうかもしれんな」

 ダリルは表情を変えずに機晶爆弾を設置しながら会話を続ける。
 当然、手は一切休むことはない。

「まぁ、仮に倒したとしてもここを爆破するのには変わりはない」
「そうだな、構造から考えればここを大爆発させ、誘爆を起こせば古代兵器全体が崩壊するだろうからな」

 メシエは壁に背を預けながら、ルカを眺める。

「まったく、私の予測の遥か上を行くお嬢さんだ」
「当たり前だな……なんていっても、ルカだからな」

 表情の変化のないダリルがほんの少し笑うが、メシエには見えていなかった。

 一方、イリュジオンとの戦いにはエースが参戦していた。
 ちょうど、エースの位置はイリュジオンの背中の辺り。
 ルカとの戦いに集中しているイリュジオンはエースの存在に気づいていない。

「俺は援護に回ろうかな、前線に出ると邪魔になってしまいそうだからね」

 エースは腕を頭上に掲げると、魔法陣を構成し始める。

「俺に敵の注意が向かない分、じっくりと準備ができるよ」

 エースは魔法発動の為の言葉を一つ、また一つと紡いでいく。
 その度に魔方陣には文字が描かれていき、複雑な配置が完成していく。

「よし、いくよ! 我は射す光の閃刃ッッ!!」

 魔方陣に光が収束し、無数の光が放射される。
 放射された光は徐々にその姿を光で構成された刃へと変化させた。

 無数の光の刃はイリュジオンの背中の方を向くと、一斉に降り注いだ。
 次々と刺さり、イリュジオンの背中に深い傷を刻み込んでいく。

「ぐうおあああああーーッ!」
「今ならッ!」

 ルカは一際高く跳躍し、イリュジオンの額に深々とブライトオブブレイドを突き刺した。

「があああああああーーーーーーッ!! 我が……滅びる……そんな、そんな……有り得ない!!
 ぐっ!! ぐぅおおおおおおおーーーーッッ!!!」

 ダリルは皆に設置が終わったことを告げ、一行は脱出しようと、中枢を後にした。

 ほどなくして轟音と共に、中枢は爆破され、その爆発は瞬く間に古代兵器全体へと広がっていく。


 〜古代兵器・通路〜


「爆発が始まっている、急げ七瀬!」
「そんな……こと、言われても……これ以上早くは走れないよ……」

 玖純、ラトスと七瀬は脱出地点の甚五郎たちの待つブリッジを目指して通路を走っていた。

 二人の目の前に人影が二つ。

 先に潜入した鏖殺寺院のメンバー、ソルシエ・ノマッドとセイバー辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)であった。
 二人とも手傷を負っているようで、戦う意思はないようだ。

「お前達、ぐ、ごふっ……」
「無理に起き上がるでない、その傷では少しの無理が命取りになるぞ」
「俺の仲間も、もういない……残ったのは金で雇ったお前だけ……世の中どうなるか……わからんな」
「だから喋るでないと言っておろう、それとも死にたいというのか?」

 ソルシエは笑うと、

「そうだな……この傷ではどうせ助からん……ただの契約者共にやられるのも性に合わないからな。
 刹那……俺を殺せ。これが雇主として最後の命令だ」
「…………わかった。では、ゆくぞ」

 刹那はヤタガンでソルシエの首を掻き切った。声も上がらずにひゅっという音のみが聞こえた気がした。
 鮮血が刹那の顔に掛かる。衣服に掛かる。表情一つ変えずに刹那は立ち上がると、
 玖純と七瀬を一瞥し、その場を去っていった。

「あれが、暗殺者……傭兵って奴か……雇主の命令には……絶対……か」
「でも、あんな命令、少しの時間でも一緒に戦った間柄なら、受けられるわけ……ないです」

 玖純は七瀬を振り返り、指で口にしーっとポーズを取る。

「そこまでにしておけ。オレ達にはオレ達の、暗殺者には暗殺者の誇りがある。
 理解する必要はないが、批判はしてはいけない。それができるのは同じ同業者のみだ」

 俯きながら、少し元気なそうな声で七瀬は答える。

「そう……ですね、あの人にはあの人なりの誇り……あるんですよね……」
「そうだ、暗くなってる暇はない、オレ達はここから脱出しないといけないからな」
「そうですね! きっと夜刀神さん達、待ちくたびれてますね」

 玖純と七瀬は夜刀神との合流地点である環境を目指し、その場を後にした。


 〜古代兵器・上空〜


 古代兵器からすべての突入した者が脱出したのを確認し、離脱しようとする機体が一機。
 PHOENIX_F【フィーニクス飛行形態】スクリーチャー・オウル、駆るのは
 テクノクラート天貴 彩羽(あまむち・あやは)、テクノクラートの機晶姫スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)であった。

「無事全員脱出できたみたい。逃げ遅れた人がいたらどうしようかと思ったけど、もう離脱して平気そうね」
「なんだかんだで、面倒見がいいでござるな」
「そ、そんなことないわよ……ん? 古代兵器の頭部、何か動いてない?」
「!!……高エネルギー反応でござる! このまま発射されれば、ツァンダの町に着弾するでござる!!」
「ああーもう、なんでこう言う時って、悪足掻きってパターンが多いのかしら!! 潰しに行くわよ!
 もちろん、最大戦速で」
「了解、推力最大で行くでござるよッ!!」

 スクリーチャー・オウルはエネルギーの収束が始まった頭部目掛けて急降下。
 一気に急接近し、ファイナルイコンソードを展開、その頭部を貫いた。

 高エネルギーの収束は止まり、今度こそ彩羽達の活躍により完全に古代兵器は沈黙した。

「これで、今度こそ大丈夫よね……」
「そうでござるな……あーでも、惜しいでござるな」
「何が? 特に惜しい所なんて……」
「いや、それがし達の活躍を誰も見ていないって考えると……惜しいなあと思ったのでござるよ」

 彩羽は優しく笑うと、

「いいのよ、私達の活躍なんて知らなくて。ツァンダの町に被害が無かった……それだけでいいじゃない」

 時を思い出したかのように、風化し、風で消えていく古代兵器を背にしながら、
 スクリーチャー・オウルは空の彼方に飛び去って行った。

担当マスターより

▼担当マスター

ウケッキ

▼マスターコメント

お初な人もそうでない人もこんにちわ。ウケッキと申します。
ひよっこマスターである、私のシナリオに参加して頂きまして
本当にありがとうございます!

未熟な部分も多く、読むのに大変苦労したと思いますが、
頑張ってここまで読んでくださった皆様、本当に感謝感激でございます!!

それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!
また次の参加を、お待ちしております!!

▼マスター個別コメント