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リアクション
第1章 強化合宿ですよぉ〜
前回は生徒たちに、教室で祓魔術を学んでもらったり、それぞれ自由時間に予習復習などを行ってもらったが…。
校内で覚えてもらったことを実戦の場で活かし、経験を積んでもらおうと考えた2人の教師は、生徒たちを魔法学校の校門の前へ集合させた。
「本日から、祓魔術師の力をもっと身に着けてもらうために〜…強化合宿を行いますぅう!!」
正門の前でエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が、高らかに声を上げた。
「ちゃんと間に合いましたね、エリザベートちゃん♪」
神代 明日香(かみしろ・あすか)は校長が遅刻しないよう、寝室から同伴で目覚めきれていない少女をおんぶし、集合場所へ走ってきた。
荷物は明日香が前日に、全て用意しているため、忘れ物もない。
「フフフ♪明日香が起こしてくれたおかげですぅ〜」
彼女に寄り添い、こっそりと小さな声音で言う。
「今回も実戦に参加する方は、この小型カメラを服につけてくださいねぇ〜」
「エリザートちゃん、私の服につけてもらえますか?」
「ちょーっとだけ屈んでくださいねぇ、明日香」
幼い校長は転ばないように、明日香の袖を支え代わりにつかみ、肩にカメラをつける。
「セレン、まさか森の中を探索するのに、普段の恰好じゃないわよね?」
青色のビキニにトレンチコートを羽織った、いつものスタイルで来たんじゃないのか…と思い、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は眉を顰めた。
「まさか、そんなわけないでしょ」
「それならいいけど…」
「この虫除けスプレーさえあれば、大抵の虫はガード出来るはずよ!」
セレアナにそれを見せつけると、自分のボディーにかける。
「おはようございますラスコットさん」
「おはよう!」
「時間通り来たね、おはよう」
「ベアトリーチェさん、美羽さん、おはようございますぅ〜」
「今回もよろしくお願いしますね。私たちもカメラを肩辺りにつけてください」
ラスコット・アリベルト(らすこっと・ありべると)とエリザートに軽く挨拶をかわしたベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)と小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、服にカメラをつけてもらう。
「免許はもってきたかな?」
「はい。もちろん、忘れずに持ってきましたよ」
荷物から出しておいた免許を彼に見せる。
「うん、今日も忘れずに持ってきたようだね」
「今回の合宿場は、ケルツェドルフという村でしたよね?」
「その村から依頼がきてから到着まで、1日もかかってないけど。失踪した人たちを早めに発見したほうがよさそうだね」
「到着後に情報収集などを行わないと、発見するのは難しい…ということ?」
美羽はラスコットとベアトリーチェの顔を見て、考えるように言う。
「えぇ。行方不明者を捜索するにしても、魔性の仕業なら相手の正体すらわかりませんから」
「そのためにも、まずは情報を集めないとね」
「皆と、お互いに見聞きした情報交換もしたほうがいいってことなのね…」
2人の話をふむふむと頷きながら聞く。
「先生は何年ぐらいこの仕事をしてらっしゃいますか」
なかなか年齢を教えてくれないラスコットに、日堂 真宵(にちどう・まよい)は変化球で年齢質問をする。
「10年以上は経ってると思うよ」
「正確には覚えていないってことですか?」
「う〜ん…。もの凄く忙しい時期とか、いろいろあったからね」
「―…くぅっ。(変化球すらかわすなんて…っ)」
何歳なのか聞こうとしたが結局、今回も教えてもらえなかった。
せっかく考えたのに即、投げ返されてしまい、悔しげに小さく呻く。
「エリザベート校長。祓魔の護符って、魔性が“なんだか怪しい”感じることはあるの?」
賈思キョウ著 『斉民要術』は農業専門書
「あからさまに見えやすい位置などに仕掛けると、トラップだと思われちゃいますよぉ〜」
「む〜…そういうものなのね」
自分なりに考えて仕掛けないと、すぐにバレしまうらしく、それを判別する知能は持っているようだ。
忘れないうちにメモしようと、斉民は荷物からノートを出して書き込んだ。
「わぁい、林間学校だにゅん」
「クマラ。遊びに来たんじゃなって、分かってるのか?」
大荷物を抱えてうきうき気分のパートナーに、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が釘を刺すように言う。
「だって、合宿だよ!?いっぱい楽しみたいじゃん!早く事件解決してカレー作ったりバーベキューしたり、キャンプファイヤーしたりしたいにゃー」
「ハハハッ、まるで遠足気分だな?」
横からカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がからかうように言い、へらっと笑う。
「そうなんだよなー…」
「お子ちゃまなんだし、どうにかなるもんじゃないからな。まぁ、さすがにルカルカは…」
「ぇ…、何?」
「おいおい、そっちもかーーっ!?」
歩きながらさっそくチョコバーに手をつけているルカルカを見たカルキノスが大声を上げる。
「んっ!?……ちょっとした栄養補給よ!チョコがちょこっと食べて♪ってルカに言ってきたんだし」
「言わないって。(…ていうか、クマラもルカも似た者同士の香りがするしな)」
おやつを食べている2人を比べるように見る。
「―…皆さ〜ん!忘れずに免許を持ってきましたね〜?」
全員持っているかどうか、エリザベートはラスコットと一緒に確認する。
「わりと密集してるわね…。はいは〜い!忘れてないわよ、エリー!」
パートナーの背で姿が隠れてしまっているルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、免許がよく見えるように元気よく飛び跳ねる。
「確認しましたよぉ〜♪……ぇ〜っと、忘れてきちゃったていう人はいないようなので、出発しますぅ〜!!」
全員免許を所持しているか確認を終えると、教師たちは彼らを連れて、ケルツェドルフの村を目指して進む。
「魔性絡みとなるとある程度まとまった人数で、失踪者の手がかりを探したほうがよさそうですね。どうしますか、ディンス」
「そう思って、今のうちに声をかけておこうって思ってるヨ」
ディンス・マーケット(でぃんす・まーけっと)はパートナーにそう言うと、捜索チームを組もうと参加者たちを見る。
「ぁっ!天城さん、グラキエスさん。私たちと組んで、森の中を捜索しなイ?」
「俺たちはいいけど。そっちはどうする?」
「まだ誰と行動するか決めてないから、別に構わないが…」
「じゃあ決まりだネ。お互いの連絡先を交換しておこうヨ。これ、私とトゥーラの連絡先ネ」
「名刺とかは持っていないんだが…。ノートの切れ端に書いてもいいか?」
「いいヨ、ありがとう!」
「俺たちもそれで大丈夫か?」
「うん、全然構わないヨ」
念のため、携帯番号やメールのアドレスなどを互いに交換し、歩きながら携帯に登録する。
早くも情報収集のチーム組を行っている一方。
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は夏の林間合宿ということで、るんるん気分で歩く。
「んー、こうして森の中歩いてるといかにも夏の避暑地って感じだわー」
一応、実戦のことも頭の片隅にあるスペースに保存している。
「それってまだ早朝だからじゃないの、セレン」
「涼しいのには変わらないだから、いいでしょ!」
「(目的を忘れてなければいいけど…)」
浮かれ気分の恋人に、セレアナは嘆息した。
「思っていたよりも、通りやすい道だネ?」
「観光客のためにある程度、草刈でもしているのでしょうね、ディンス」
「木とかはそのままカナ?」
「大きな木を移動したりするのは、さすがに大変そうですからね」
村の予算の都合もありそうだし、道を整えるのは難しいのでは、とトゥーラ・イチバ(とぅーら・いちば)が言う。
「―…それにしても、出発からだいぶ歩きましたが…。到着までに、まだ時間がかかるのでしょうか?」
「オイラ、お腹減ってきちゃった…」
空飛ぶ箒に乗っているものの、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)の腹ペコ指数がどんどん上昇する。
「もうちょっとで到着しますよぉ〜。…見えてきましたぁ〜っ、あの村ですぅ〜!」
「やっと着いたのね」
真宵がエリザベートの視線の先を見ると、木やレンガ造りの民家が立ち並んでいる。
「これから実戦の授業を開始するわけですがぁ〜。皆さんにはまず…ケルツェドルフの村とジャタの森、失踪事件の情報収集を行ってもらいますぅ〜。各自、どちらか片方ですからねぇ〜。ちなみにセイニィさんの消息も不明なんですぅ〜」
「もしも攫われたなら、そこら辺のレベルのやつじゃないってことね」
「えぇ、そうなんですぅ、セレアナさん。おそらくこれは、魔性の仕業に違いありません〜。…それで〜、お昼になったら、村のレストランで各自食事を取ってくださいねぇ。昼食後は、お風呂などの休憩も若干ありますが、その後は〜…互いに集めた情報交換を行いましょう〜。で〜、それが終わりましたら、少しだけ休憩しましょうねぇ〜。まだ実戦に参加しない者は、私たちについて来てくるように〜。それではぁ〜、行ってらっしゃい〜」
エリザベートがそう告げると、生徒たちは情報収集を開始する。
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