リアクション
売り場に戻るなり
「本当にありがとうございました」
助けてくれたみんなにもう一度礼を言った。
「あぁ、ところでこの店に防火とか火除けとかの石は置いていないか?」
甚五郎はホシカの言葉を受け取った後、少しばかり欲しい種類の石について訊ねた。ちらりと羽純の方を見ながら。
「……火除け……確か」
石を求められたホシカは、棚の方に確認に行った。
ホシカが石を探している間、
「……甚五郎よ、なぜわらわの顔を見たのじゃ」
先ほどの甚五郎の視線に気付いていた羽純は問いただし始めた。
「いや……それであるか?」
当然甚五郎は言葉を濁し、探しているホシカに聞いた。素直に答えて幸せになるわけではないので。
「……あ、はい。これです」
ホシカは見つけたらしく小さな青色の石を持って来た。
「……これか」
甚五郎は手に取り、物を確認。石は小さいがしっかりと防火の魔法がかけられていた。
効果が有り有りのは見て分かったので即買った。
「うわぉ、このぴんくカワイイよ!」
真菜華はレジに飾っている可愛らしいピンク色の石を発見。
「可愛い色ですね」
近くにいた稲穂が横から石を覗き見た。
「それアタシが冒険で見つけたんだよ」
キーアが嬉しさと自慢の入った口調で説明した。
「へぇ、冒険かぁ。真菜華も冒険、好きだよ!」
真菜華は石を手に取りながら言った。
「……旅を思い出すなぁ」
木枯はキーアの言葉であちこち旅した事を思い出していた。
「お姉ちゃん達も!?」
自分と同じ趣味を持つ人達を発見してキーアは嬉しくなった。
「そうそう。それにこのぴんくも大好きだよ!」
真菜華は綺麗なピンクを撫でながら言った。
「あげるよ!」
嬉しくなったキーアはピンクの石を真菜華にプレゼントした。
「ありがとー!」
真菜華は礼を言って大切にしまった。
「ねぇ、どんな冒険とか旅をしたの?」
キーアは二人の冒険や旅に興味を持ち、聞きたがった。
「……そうだねぇ」
「真菜華の冒険はね」
木枯と真菜華は話し始めた。
「しかし、無事で良かったぜ」
ナディムは楽しそうに買い物をするみんなを眺めているグィネヴィアに声をかけた。
「はい、皆様のおかげですわ」
グィネヴィアはにっこりとナディムに笑いかけた。
「でも驚いたねぇ、ナディムちゃん」
セリーナがフォルトーナが現れた時の事を思い出していた。
「あぁ、マーガレットの言葉は半分当たってたって事だな」
ナディムはそう言い、リースと一緒に石を物色するマーガレットを見た。
「……ナディム様、ですか」
どこかで聞いた事のあるような名前に思わず聞き返すグィネヴィア。
「ん? もしかして俺の事知ってたりする?」
グィネヴィアの反応にナディムは聞いた。
ナディムは、ティル・ナ・ノーグの自国で馬鹿息子やら親の七光りやら不名誉なあだなで知られているのだ。
「……あの、少しだけですわ。でもわたくしは善い人だと思います」
ナディムの『名声』のためグィネヴィアは知ってはいるも言葉にはせず、今日助けられて感じたままを言葉にした。育ちのせいか褒め言葉が何となく大げさ。
「……善い人って」
大げさな褒め言葉にナディムは戸惑ってしまう。
「褒められたわねぇ〜」
セリーナは手を叩きながら自分の事のように喜んでいた。
「……わたくし達を助けるのに力を貸して下さったと聞きました」
「……まぁ、ありがとさん」
ナディムはグィネヴィアの言葉にくすぐったそうに礼を言った。
「リース、この石素敵だと思うよ!」
「……そ、そうですね。えと、他に何か……」
マーガレットとリースは石を物色していた。
「これはどうですか?」
他の石を探しているリースにホリイが綺麗な石を手に現れた。
「それも素敵だね!」
マーガレットはホリイが手にしている石を見ながら楽しそうに声を上げていた。
三人仲良く石を物色していた。
「これはなかなかだな」
重安は様々な石を手に取り眺めている。
「種類が豊富でありますな!」
吹雪は楽しそうに棚に並ぶ石を手に取っている。
「何か買うの?」
コルセアはすっかり元気な二人に聞いた。
「……少し物色してみるか」
「見るでありますよ!」
重安と吹雪は同時に答え、物色を始めた。
「……長くなりそうね」
コルセアは二人の様子にため息をついていた。
「……目撃された現場にも魔術師の痕跡が無かったのは残念だったね」
さゆみは賑やかな店内を眺めながらルカルカに言った。
「……そうだね。でもフォルトーナが悪い人じゃなくて良かったよ」
ルカルカはうなずきながらも今回悪い事ばかりでは無かった事に喜んでいた。
「……そうですわね」
アデリーヌもルカルカと同じ気持ちでうなずいた。
「……職人の願いは叶えられたかもしれないね」
「どんな願いもすぐに叶えるという石を作りたい、ですか」
石と多く関わった涼介はふとミリィに思った事を話していた。
「そうだよ。失敗作と比べものにならないほどの出来だと言う事は資料に書いていたしフォルトーナの様子を見れば一目瞭然。しかし、職人が生きていたらどうなっていたのかな」
涼介は資料とフォルトーナの必死な姿を思い出していた。そして、もしもの未来を考えていた。
「……あの職人が生きていたら?」
涼介達の話を耳にしたホシカが会話に入って来た。
「……ホシカさん」
ミリィは思わず、ホシカの方に振り向いた。
「俺もそれは気になるな」
付近にいた陽一も会話に加わった。
「ホシカさんはどう思いますか?」
ミリィが訊ねた。
「どうって言われても。願いを叶える石に執念を抱いている職人だから喜びよりも困っている人の願いでも叶えてくれとでも言うんじゃないかな」
ホシカは少し考えてから答えた。彼の私生活については知らないが職人としての執念はよく知っているので答えはそこから導き出した。
「願いを叶える石が出来た事で満足という事か」
陽一はホシカの言葉を簡潔にまとめた。
「そうじゃないかな。そんな石を作る事が願いなら、出来た時点で叶った事になるから。それを知る事が出来ずに亡くなってしまった」
ホシカの言葉がしだいに悲しさを帯びてきた。完成を知らずに死んでどれだけ悔しかっただろうと思わずにはいられなかった。
「……それは残念な事だが、フォルトーナの中で職人は生きているはずだ」
陽一は生まれた店の名前を自分の名前とした青年の事を思い出しながら言った。
「……そうだね」
ホシカはしんみりとうなずいた。
買い物をしに来た者達は用事を済ませる事が出来た。値段は助けてくれた礼だと言って格安だった。
キーアは予定通り迎えに来た母親に怒られていた。ついでに監督不行届でホシカも怒られた。もちろん心配もさせていた。
グィネヴィアは、百合園女学院の仲間達と一緒に仲良く帰って行った。道々、グィネヴィアは自分にたくさんの仲間がいる事を知って胸がいっぱいだった。
帰宅後、
「これを調べてもっとご主人様の役に……」
ポチの助はシャンバラ電気のノートパソコンを用意し、石を科学の面から調べようとしていた。
「……まず」
そう言いつつポチの助は袋を逆さにして石を取り出して何とか心を無にしてオレンジ色の石を手に取った。その石はフレンディスの交渉で手に入れた物だ。
その時、
「ポチの助、どうですか? 調べ物は進んでいますか?」
様子を見に来たフレンディスがやって来た。
「ご主人様!」
返事をした途端、無は消えフレンディスの役に立ちたいという思いがポチの助を眠らせてしまった。
「……ポチの助。これは石ですね」
フレンディスはポチの助の愛らしい寝顔に微笑んだ。
そして、ポチの助の持つ石に興味を持ち、よく見てみようと触れた瞬間、
「……眠くなって」
まぶたが重くなり、フレンディスもその場で眠ってしまった。溢れる好奇心によって撃沈してしまったのだ。
「……フレイ、何かあったか」
ベルクはポチの助の様子を見に行ったフレンディスが戻って来ない事に気になってやって来た。
そして、安らぎ溢れる惨状にため息。
「……石か」
ベルクは予想通りの展開に疲れていた。
「……まぁ、いいか」
幸せそうに眠るフレンディスの寝顔を見てつぶやた。フレンディスの可愛い寝顔にやられて怒る気も失せてしまった。
参加者の皆様、本当にお疲れ様でした。
そして、素敵なアクションをありがとうございました。
キーアとホシカはしっかりと怒られましたが、皆様のおかげでキーアにとって楽しい冒険になり、グィネヴィアも願いがずっと前に叶っていた事に気付く事が出来ました。灯台もと暗しです。
石の青年フォルトーナは答えを求めて放浪を始めました。いつか皆様の言葉が届く日が来るはずです。どこかで見かけたら優しくしてあげて下さい。
石が街中に転がっていた理由も判明しつつも解決しない問題を残して行きました。
ただ、街に平和が戻った事だけは喜ぶべき事でしょう。
最後にほんのわずかでも楽しんで頂ければ幸いです。