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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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第四章 願うはお姫様の無事


 通り。

「この方が行方不明なんですが、何か知りませんか」
 舞花はグィネヴィアの写真を使いながら聞き込みをしてた。
「あぁ、覚えてるよ。とても目立っていたからね。ただ……」
 男性はすぐに即答するが表情を曇らせた。
「ただ?」
 舞花は何かあると思い、聞き返した。
「おかしいんだ。その子を連れていた奴。数週間前に死んだ職人なんだよ」
 男性は眉を寄せながら見た事を事実そのままに舞花に話した。
「……それはおかしな話ですね」
 舞花も男性と同じようにうなずく。
「だろう? 見間違えと思ったが、やっぱりどう考えてもあいつなんだよ」
 肩をすくめ、気味悪そうに話した。
「行った先は分かりますか?」
 舞花は行き先を聞いた。
「向こうの方に行っていた。もしかしたら自分の店に行ったかもな」
 幽霊だと思っている男性は行った先を示してから行った。
「そうですか。ありがとうございます」
 舞花は丁寧に礼を言ってから男性の言葉通り、亡き職人の店へ向かった。調べる必要があると思ったからだ。職人と同じ姿なら何か手掛かりがあるかもしれない。

 向かう前にきちんとルカルカに連絡を入れた。
「はい。見つかりましたか。良かったです。あのですね……」
 その際、キーアの無事や店内の石処理が終了した事を知り、胸を撫で下ろした。
「居場所もすぐに分かるといいのだけど、しかし……」
 舞花はふと石をばらまいた犯人について考えを向けた。伝えられたのは安心ばかりではない。
「石をばらまいた犯人は何を考えているのでしょう。何かの目的のためにしたように感じますね。大惨事になるような目的か些細な目的は分かりませんが」
 舞花は魔術師について考えていた。その間もしっかりと行くべき場所には向かっている。
「分からないというのも薄気味悪いですし」
 舞花が気になるのは正体が分からない事。正体が分かれば何らかの対策を講じる事は出来るが、分からなければ漠然とした警戒しか出来ない。
「今はグィネヴィア様の救出だけを考えなければ」
 舞花は気を引き締め、現実に戻った。
 『捜索』を持つ舞花は入手した情報を元に『行動予測』を使い、グィネヴィアの行方を追った。

 通り。

「……グィネヴィアを誘拐した奴は大方変態に違いないが、それよりも姿が見えない奴の方が厄介だな」
 グィネヴィア捜索中の宵一は誘拐犯も気になるが、石をばらまいた魔術師の事も気になっていた。
「……森を実験場にし、多くの犠牲者を出した奴、話は聞いていたがまさか遭遇するとは」
 バウンティハンターとして活躍しているため魔術師が起こした事件ぐらいは聞いてはいるが、どのような姿をしているかまでは知らない。だからこそ薄気味悪い。
「今は、グィネヴィア・フェリシカの事だ」
 宵一は、再び見える敵である誘拐犯に意識を戻した。
 ちょうど、ルカルカの連絡が入り、舞花が得た聞き込み情報を手に入れた。
「相手はお姫様みたいな女の子だ。たまには白馬に乗った王子様役も面白いかもしれないな」
 連絡を終えた宵一は白馬ことスレイプニルにまたがり、空からグィネヴィアがいる可能性が高い亡き職人の店に向けて急いだ。

「……そうですか」
 麗はルカルカと情報のやり取りをしていた。
「グィネヴィア様の情報でしょうか」
 アグラヴェインは話を終えた麗に内容を訊ねた。
「いいえ、違いますわ。石をばらまいた犯人についてでしたわ」
 麗は首を振ってから内容を伝えた。十分に重要で気味の悪い話。
「そうですか。それでその犯人とは?」
「……正体不明の魔術師で消えた石も選んでたみたいですわ」
 促すアグラヴェインに麗は詳細を話した。
「それはまた厄介ですね」
 全てを聞き終えたアグラヴェインはため息をついた。石処理に誘拐、姿見えぬ魔術師。何とも賑やか。賑やかになるのならもっと平和で楽しいものを願いたいものだ。
「こそこそと何を企んでいるのやら、今目の前にいるのならお仕置きをしますのに」
 麗は姿が見えない事に拳を握り締め、今にも戦闘を始めそうな勢い。
「……お嬢様、今はグィネヴィア様の捜索に集中しましょう」
 大手企業のご息女としては相応しくない振る舞いにアグラヴェインは急いで麗を止める。
「そうですわね」
 アグラヴェインの言葉で現在の目的を思い出した麗は拳をおろし、捜索に戻った。

「……グィネヴィアちゃん……どこに行っちゃったのかなぁ」
 日奈々は行き交う多くの足音を聞きながら困ったように言葉を洩らした。グィネヴィアの足音が聞こえないので周辺にいない事だけは確か。盲目だが、気配を読んだり視覚以外の感覚が鋭いので人捜しをするのに問題は無い。
「……早く見つけないと、騙されやすいみたいだから」
 日奈々は心配を抱きつつ、どうするかを考え始めた。

 そして、
「……誰か、どこかに行くのを見た人とか、いないかなぁ……聞き込み、するのが一番だけど……知らない人に話しかけるのは」
 日奈々は捜索で最も一般的な方法を思いつくもどうにも足が動かない。人見知りが激しく知らない人に話しかけるのはどうにも苦手。
「……」
 気持ちを落ち着け、グィネヴィアを助ける事だけを考える。
「……グィネヴィアちゃんのためだし……勇気を出して頑張らないと、ですねぇ〜」
 日奈々は持っている白杖を力強く握り締め、ゆっくりとグィネヴィアを救うための一歩を踏み出した。

「……あの、その……この辺で15歳くらいの……お姫様みたいな、女の子……見ませんでしたかぁ?」
 日奈々は近くにいた女性に訊ねた。
「んー、ごめんなさいね。見なかったわ」
 女性は申し訳なさそうに答えてからさっさと行ってしまった。

「……グィネヴィアちゃんのため」
 情報を得られなかった日奈々は折れそうになる心を何とか奮い立たせようとやるべき事を声に出した。

 その時、
「シリウス、あれは日奈々さんではありませんか」
 リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)は隣にいるシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)に言った。二人は偶然、この街に来ていたのだ。
「だな。何か探してるのか?」
 シリウスは、女性に聞き込みをしている日奈々に気になっていた。同じ学院なので日奈々の人見知りは知っている。
「……気になりますし、声をかけてみましょう」
 リーブラも日奈々が気になるらしく放っておけない様子。

「そうするか。日奈々、何かあったのか?」
「探し物ですか?」
 シリウスとリーブラは日奈々に近付きながら声をかけた。