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リアクション
真紅の石処理が終了して時間が少し経過。
「……二人共、どう?」
コルセアはベンチに座る二人の状態を訊ねた。
「……それがしはもう大丈夫だ」
重安はゆっくりとベンチから立ち上がった。
「吹雪は?」
コルセアは吹雪にも聞いた。様子を見ただけで分かるが、念のため。
「……もう少し休むであります!」
吹雪はまだ動けなかった。重安よりも石に触れた回数が多かったので。
「……そう。さすが細工された石ね。誰からかしら」
コルセアは石の威力にため息をつきながら急に入った連絡を確認した。
「……見つかったのね。こちらは問題無いわ」
連絡の内容は、キーアが見つかった事だった。
話はすぐに終わった。
「どうしたでありますか?」
吹雪は話が終わったのを見てすぐに聞いた。
「キーアが見つかったみたいよ」
コルセアは簡潔に内容を二人に伝えた。
「それは安心であります。あとは、グィネヴィアだけでありますな」
吹雪はほっと安心した。
「それもすぐに見つかるだろ。それがしが休んでいる間に一人見つけられるんだから」
重安は捜索を担当している人達を信じていた。
「そうね。吹雪が動けるようになったら予定はどうする?」
コロセアは、重安の言葉にうなずいてからこれからの予定を聞いた。
「……一度、様子を見に来たいのだが」
「……自分も行きたいであります!」
重安と吹雪の意見は同じだった。
「それじゃ、吹雪が元に戻ったら行きましょうか」
コルセアも賛成した。
この後、吹雪が動けるようになってからホシカの店に向かった。
石処理を頑張っていた木枯と稲穂。
「木枯さん、連絡みたいですよ」
「出てみるねぇ……安心だねぇ」
木枯はすぐに確認したかと思ったら安心したような言葉を洩らしていた。
「どうでしたか?」
稲穂は話を終えた木枯に聞いた。
「行方不明になってた女の子、見つかったみたいだよ〜」
木枯は安心と喜びの混じった声で報告した。
「そうですか。それは良かったです。まだ一人行方不明ですよね」
報告を聞いた稲穂も喜びの顔になるが、まだグィネヴィアが行方不明である事を思い出した。
「すぐに見つかるよ〜」
木枯には何の不安もなかった。捜索者達を信頼しているのだ。
「そうですね。皆さん、頼りになりますからすぐですよね」
稲穂も同じように信じていた。絶対にグィネヴィアは救い出されると。
「すぐだよ〜」
そう言って木枯は石処理に戻った。
二人は石処理を続け、グィネヴィアの無事を知ると店の方に様子を見に行った。
石専門店『ストッツ』、作業室。
街での石処理が始まって少し後の事。
「……」
石処理の手を少し休めて涼介は石の写真入りのリストや素材などの詳細が書かれた資料を見ながら消えた石について考えていた。
「お父様、何か考え事ですか?」
石を『氷術』で粉々にした後、ミリィが涼介に聞いた。
「……消えた石が気になってね。もし盗みなら全て奪って売り払ったりするだろから選んだかのようなこの状態がおかしいと思ってね。もし道に転がっているようなら何か原因があるかと」
涼介が石の処理を始めてから気になっていた事だ。
「それで何か分かりましたか?」
ミリィは真剣な表情で訊ねた。
「消えた石はどれも同じ素材が含まれていたんだ」
涼介はそう言ってとある素材を指さした。
「野生で群生している場所はほとんど無いし、人工で作るのも難しい植物だよ。当然、値も張るし」
『薬学』を持つ涼介にはすぐにその素材の正体も分かっていた。
「確か、その分とても凄い物ですよね。調剤は難しいですけど、調剤次第で最高の薬になったり最悪の毒薬にもなる物」
当然、涼介と同じように『薬学』を持つミリィも分かっている。
「……石に命をかけてたんだね」
石を袋に入れてから粉砕して処理をしている真菜華が言葉を挟んだ。
同じ素材が使われている事はすぐにルカルカに伝え、外で石の処理に励んでいる仲間に伝えられた。その情報は同じ部屋にいたホシカもしっかり聞いていた。
その後すぐ、甚五郎のとある人物の目撃情報をみんなに伝え終わったルカルカが作業室にやって来た。一人でいたくないホシカも一緒に来ていた。
「やっぱり石は盗まれてばらまかれていたよ。正体不明の魔術師で……」
と石処理をしている人達から得た情報全てみんなに伝えた。
「……それってキーアちゃんが幼稚園の遠足で行った森の」
ホシカはキーアも巻き込まれた森での出来事を思い出していた。
「それは私も知っているよ。森を実験場にして放置したままにして多くの犠牲者を出したとか」
涼介も話に加わった。学校で耳にしたのでよく知っている。
「多分、その魔術師で間違いないよ。状況も似てるし」
ルカルカは息を吐きながら、動物変身薬事件の事を思い出していた。
「大変な事になりましたわね。石も細工をされているなんて」
ミリィは困ったように言った。自分達が処理している石よりもずっと厄介な物になっているとはますます行方不明者や街の住民が心配だ。
「そうだね。石を壊さず、回収するように頼んでるし。調べてみようか」
涼介が回収を頼んでいる陽一の事を思い出した。
「そうですわね」
ミリィは何か魔術師に繋がる何かが見つかる事を願った。
「誘拐犯も許せないけど魔術師も許せないよ」
ルカルカの声は怒りに満ちていた。また無関係の人を巻き込み、自分は遠くにいる。卑怯としか言う他無い。
「真菜華もそう思う」
真菜華も少し怒った様な顔でこくりとうなずいた。
「キーアちゃんは大丈夫かな。あの子、興味を持った物はすぐに拾っちゃうから」
ホシカは先ほどよりも心配の顔をしていた。
「きっと大丈夫だよ。そんな暗い顔はダメだよ」
ルカルカは何とかホシカを励まそう言葉をかけた。
その時、
「……頼まれた石だ」
陽一がいくつかの石を持って現れ、石を机に並べた。
「ありがとう。すぐに調べてみるよ。ミリィ、少しの間石の処理を任せても大丈夫かな」
涼介は並べられた色鮮やかな石を見た。見た目はただの石にしか見えない。
「大丈夫ですわ」
ミリィはそう言って頼み事を引き受けた。
「ありがとう」
涼介は、石の分析を始めた。涼介は『博識』と『薬学』、『医学』を使い手早く済ませた。
「……それで何か分かったか?」
「何か手掛かりあった?」
陽一と売り場から様子を見に来たルカルカが同時に分析を終えた涼介に聞いた。二人共、例の魔術師を知っているだけに結果が早く知りたい。
「……無かったよ」
涼介は頭を左右に振った。
「無かった? でも効果は強化されてるんだよね」
ルカルカは思わず聞き返した。木枯や吹雪達が石の被害に遭った情報は入っている。それを考えると何も無いとは信じられない。
「……そうなんだけど、本当に残っていなかったんだ」
涼介はもう一度残念な結果を口にした。
「……つまり魔術師は石に何かしたが、その痕跡を残さないようにしたんだろう、と」
陽一は何とか話をまとめた。
「そういう事かな」
涼介は陽一がまとめた内容にうなずいた。
「厄介ですわね。かなりの腕の持ち主ですもの」
話を聞いていたミリィが表情を曇らせた。
「腕はいいと思うけど性格は悪いよ。人に迷惑をかけてるんだから」
ルカルカの言葉には怒りがあった。
「……捜索中に姿を見たという知らせはないし」
涼介も厄介そうに言った。
「……とりあえず、俺は石の処理に戻る。渡した石の処理は頼む。これ以上彼が作った石が誰かの迷惑にならないようにしてくれ」
陽一は石の処理を頼んだ。これ以上誰かの迷惑にならないようにする事が製作者の弔いになるだろうと思いつつ。
「ルカはこの事みんなに伝えるよ」
ルカルカは急いで分析結果を捜索者達に知らせに行った。
「仕事に戻ろうか」
「はい」
陽一とルカルカを見送ってから涼介とミリィも石処理に戻った。分析をした石は陽一の言葉通り迷惑を引き起こさないようにきっちり処理をした。
ルカルカによって涼介の調査結果はみんなの知るところとなった。
ホシカは売り場に戻り、キーアとグィネヴィアを待ち続けていた。
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