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リアクション
「……まずは何買うかな」
上田 重安(うえだ・しげやす)は給料が出たので何か買い物をしようと通りを歩いていた。隣には葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)とコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)がいた。
「どうしたんでありますか?」
吹雪は急に立ち止まった重安に訊ねた。
「……石だ。これはなかなかの輝きを持って面白そうだから部屋にでも飾ってみるか」
重安はそう言って地面に転がっている真紅の石を拾い上げた。
途端、石を握ったままぼうっとあらぬ方向を見たまま動かなくなった。
「重安?」
異常を感じたコルセアが呼びかけるが、返事は無い。
「……家……庭……」
しばらくして重安は嬉しそうに声を上げ、心なしか幸せそうな表情になった。
「重安〜!!!」
吹雪は、何かに取り憑かれた重安を見て思わず大声を上げた。
「…………この部屋に収集した芸術品を」
石を握っていた手が力なく開き、石が地面に転がった。
「あ、ここはどこだ!? それがしの庭と家は!?」
石が手から離れた事によって現実に戻って来た重安は周囲を見回した。
先ほどまで自分で買った素晴らしい庭付きの家にいたのだ。
「……おっ」
重安はふらりとよろけた。
「重安!」
コルセアが急いでよろける重安を支えた。
「……体力を吸い取られた気がするな」
重安は疲れたように言葉を洩らした。
「近くのベンチに移動するから」
コルセアはそのまま近くのベンチへ移動した。
「仇を討つでありますよ!」
コルセアに支えられながら近くのベンチに向かった重安を見送った後、吹雪は仇討ちを開始。
「……石が怪しいでありますな」
吹雪はまず石を調べるため拾おうと触れた瞬間、幻の波が襲いかかって来た。
「……商売繁盛……ありがとうであります!」
吹雪は、屋台を使っての商売が嬉しいほど繁盛し、首が痛くなるほど客に挨拶をしている幻を見ていた。それと引き替えにしっかりと体力を奪われる。
そして、奪われる事によって石に触れていた手は力を失い、石から離れた。
「……はっ、ここはどこでありますか!? 体が重いであります!」
吹雪は幻から現実に戻って来た。体にだるさを感じるが、負けずに次なる一手を考える。
その頃、コルセアは、
「……今、危険な石の処理をしているので近付かないで下さい!」
通行人に注意を呼びかけていた。
「……吹雪殿」
重安は戦う吹雪を見守っていた。
吹雪の考えた末の次の一手。
「粉々にするでありますよ!」
吹雪は『歴戦の武術』で石を粉々にしようと試みる。周囲に迷惑が掛からない場所に移動させようと石に触れた途端、幻が襲った。
「……これで何も心配する必要ないでありますよ」
吹雪はたっぷりと並べられた料理や目が飛び出るほどの金額が入った通帳の幻を見ていた。
幻は長くは続かず、再び力を失った手から石が落ちた。
「はっ、料理は!? お金は?」
石が手から離れた事によって現実に戻って来た吹雪。
幻と引き替えに再び大量の体力が体から奪われていく。
「……む」
吹雪は力なくその場に座り込む。手足を動かすのがとてつもない重労働に思えるほど。
それでも負けない。
「……今度は燃やすでありますよ」
吹雪はたっぷりと時間を掛けて立ち上がり、歩こうとするも最初の一歩が踏み出せない。
「……負けないでありますよ!」
声は元気だが、体力はかなり奪われてしまっていた。
「……重安、体調はどう?」
周囲への呼びかけが終わった後、コルセアはベンチで休んでいる重安に声をかけた。
「……少しだるいが、しばらくすれば治るはず」
重安は少しばかり疲れたように答えた。
「そう。吹雪は……」
無事な様子に安心したコルセアは未だ石と格闘する吹雪を見た。しかもかなり体力を奪われ動けない様子。
「かなり体力を奪われているみたいね。だけど、どうしてあんな石が転がっていたのかしら」
コルセアはベンチに座り温かく吹雪を見守りつつ、石について考えていた。
その時、
「……大丈夫ですか?」
ポチの助に導かれ、フレンディスが現れた。
「……何とか。それより、あなた達は」
コルセアは重安の様子を確認してから答え、事情を知っていると思われるフレンディス達と木枯達に聞いた。
「危険な石の処理をしている最中で……」
代表してベルクがコルセアと重安に詳細を話した。
「……その石があれなのね」
「……ただの石ではなかったのか」
コルセアと重安は納得した様子で吹雪の対戦相手を見ていた。
「…………(あの石、調べたいなーお家に帰ってPCで情報まとめたいなー)」
ポチの助はキラっとした目で真紅の石を見ていた。
最近、機晶技術などの科学の世界に目覚めたポチの助は石に少しばかりの興味を持っていた。フレンディスの次に石の虜になったのはポチの助だった。
「ポチの助、あの石が欲しいですか?」
ポチの助の物欲しそうな目の輝きに気付いたフレンディスが聞いた。
「はい。もっと優秀なハイテク忍犬になってご主人様の役に立つために!!」
ポチの助は胸を反らしてフレンディスに言った。
「それなら手伝いますよ」
「行こう」
稲穂と木枯は迷い無く協力を申し出る。
「……下等生物の手を借りる必要は無いのだ。ご主人様、少しだけ待っていて下さい」
ポチの助は、木枯と稲穂に強がりを言い、フレンディスには危険に巻き込まないように気配りしてから石の元へ向かった。ツンとはしていたが、ついて来る木枯達を追い払う様子は無かった。
「……フレイは終わるまでここだ」
ベルクも行きたそうにするフレンディスを止める。『行動予測』でフレンディスの行動は読み切っているのだ。
「……はい」
フレンディスは強く止められ、少し残念そうにしていた。
「……果たしたい目的や願いを感知して被害を与える、ね」
コルセアは納得したように吹雪の様子を見ていた。
「……それがしはあの石を飾りたいとか庭付きの家を買いたいというのでやられたのか」
重安は被害にあった時の事を思い出して納得していた。
「……それで二人はまだ見つかっていないのよね?」
コルセアは行方不明者について再度訊ねた。
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