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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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第二章 願うは小さな危険回収


「……石だな」
 陽一は、『トレジャーセンス』と石の匂いを記憶したケルベロスジュニアを使って石を見つけた。

「見つけたのはいいが、直接触れないように回収しないと」
 陽一は、標的である黄色に輝く石から少し離れ、深紅のマフラーを使って難無く回収した。
「……願いを叶える石に相当の執念をかけていたんだな」
 陽一は、深紅のマフラーに包まれた石を見ながら感慨深げに言葉を洩らした。
 職人への思いが落ち着くと石に対してのおかしさに気付いた。
「……しかし、どうしてこの石が街中に転がっているのかが気になるな。現実的に考えて石に足が生えてどこかに行く事は滅多に無いはず。調べて貰えば何か分かるだろう」
 回収した石は確かに特別な力はあるが、歩き回るような物では無い事だけは確か。消えた訳には何かが関与しているはず。

 その時、
「……石の方はどうですか?」
 加夜が声をかけて来た。加夜は聞き込みと『行動予測』でグィネヴィアの捜索をしていた。
「……滞りなく進んでいるよ。そちらは?」
 気付いた陽一はグィネヴィア捜索の案配を聞いた。
「まだです」
 加夜が心配そうに答えた。
 そこに近くにいたローザマリアも話に参加した。
「……消えた石が全部じゃ無いっていうのがおかしな話よね。誰かの仕業かな」
 ローザマリアも加夜と同じように聞き込みと『行動予測』で通りかかったのだ。
「それは俺も思っていた事だ。選んでいるように感じる」
 陽一は即答した。先ほどもその事で考えていたのだ。何かあるのではないかと。
「……確かにそうですよね。良ければ、読み取ってみましょうか? 私も知りたいですから」
 と加夜が言った。死に際まで作り続けていた職人の想いというものがどのようなものなのか気になっていたのだ。それにどうして石が消えたのかも判明するかもしれない。
「しかし、触れるのは危険だ」
 陽一は加夜を止めた。読み取るという事は直接石に触れなければならない。何が起こるのか分からない石に対してあまりにも危ない。
「……心を無にすれば問題ありません」
 加夜は表情を引き締めながら答えた。
「確かにそうだけど」
 ローザマリアも心配そうにしている。
「大丈夫ですよ。読み取ってみます」
 加夜はそう言って目を閉じ、深呼吸をして心を無にしてから目を開けてゆっくりと石に触れ、『サイコメトリ』を使った。
「…………」
 石が失敗だと知っても諦めずに結果をまとめ新たな石を作ろうとする職人の姿。そして、一番新しい場面を見た。
「どうだ?」
 陽一は、読み終わったのを確認してから加夜に訊ねた。
「自分のしている事にとても誇りを持っている方ですね。ただ……」
 加夜は、失敗しても挫折しない職人の姿を伝えた後、言葉を濁した。
「何かあった?」
 ローザマリアが話すように促した。
「真夜中に誰かに盗まれているのを見ました。箱に入れられる場面なので犯人までは……」
 加夜は言葉の最後を濁らせた。
「……誰かが選んで盗んだということか。ん?」
 陽一は自分の予想が的中した事を確認した時、連絡が入った。
「……そうか」
 ルカルカから今話題になっている石をばらまいた犯人について知らされた。ついでに加夜が読み取った内容も報告した。
「どうだった?」
 ローザマリアが連絡内容を訊ねた。
「あぁ、石を盗んだ犯人は正体不明の魔術師らしい」
 そう言って陽一は詳しい話を二人にした。
「選んで盗んでばらまいたんですね。ひどいです」
 加夜は怒っていた。魔術師のせいで無関係な人に被害が及んでいるのだから怒って当然である。
「しかも効果も強化して」
 ローザマリアはもう一度、石を見た。
「消えた石には全て同じ素材が使われていたみたいだから何かの実験なのか実験に失敗して放置しているのか。迷惑な話だ」
 陽一はそう言いつつ動物変身薬事件で遭遇した病んだ森と似た状況だと考えていた。
「……この石は彼の人生の結晶だというのに」
 陽一は細工をされた石を見て言葉を洩らした。何が職人を必死にさせたのかは分からないが、石の一つ一つが彼の人生の輝きだと思っていたのにそれが魔術師によって台無しにされたのだ。
「細工をされて汚されましたけど、石に込められた想いまでは汚されていません」
 陽一の言葉に加夜が慰めとなる言葉をかけた。加夜はこの手で石に込められた想いを読み取ったのだ。だから分かる。
「そうだな」
 陽一はうなずいた。
「それだけが救いだね」
 ローザマリアはため息を吐いた。
「では、私達はグィネヴィアちゃんを捜しに行きます」
「石の事はお願い」
 話が一段落したところで加夜とローザマリアはグィネヴィア捜索に戻った。
「気を付けてな」
 二人を見送ってから陽一は深紅のマフラーや漆黒の翼で石をいくつか回収してから涼介に渡すために店に戻った。回収の途中、石に触れる事もあったが、心配な気持ちを押し込めて何とか回収をしたり、口内の肉をかみ切り、その痛みで脳に?入れ立て乗り切ったり概ね順調に進んだ。
 ローザマリアと加夜はそのまま二人で捜索をした。