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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

リアクション

 

ティー・ティー&イコナ・ユア・クックブック

 
 
『エントリーナンバー8番、ティー・ティー(てぃー・てぃー)さん、アンド、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)さんのユニットで、月見うどんさんです』
「聞いて驚け、見て和め。我ら、泣く子ももぐもぐけもみみコンビ! ていてい!」
 ゲートから飛び出したティー・ティーが名乗りをあげる。
「いこにゃ!」
 一拍おいて、イコナ・ユア・クックブックが飛び出してきた。
「二人合わせて、月見うどん!!」
 高らかにユニット名を叫ぶと、両手を広げて二人で決めポーズを作る。
 ティー・ティーの方は、白ウサギのコスプレで、頭に白い兎の垂れ耳をつけていた。ちょっと子供っぽい白のワンピースは袖がなく、襟元を結ぶリボンは端が長くのばされている。ワンピースの裾の方の前側には大きな金ボタンが二つあしらわれていて、スカート部分は左右と後ろに大きく広がってシュミーズをチラリと覗かせていた。お尻の所には、真白い毛玉のような尻尾がついている。足許は白と水色のショートブーツで、水色のラインの入ったグレイのストッキングが絶対領域を作りだしていた。
 イコナ・ユア・クックブックの方は仔猫のコスプレで、当然のようにネコミミを頭につけている。ストラップのあるピンクのワンピースで、サイドを赤いリボンで飾り、ふんわりとスカートが広がっている。お尻の所からは、ぴょこんと猫尻尾が飛び出していた。こちらは、ハイソックスに生足である。
「いこっ」
 仲良く手を繋ぐと、二人は仲良くスキップしながら花道を進んで行った。
「可愛いですねー」
 なんだかほのぼのと癒やされて、コハク・ソーロッドが言った。
「ええ。可愛いあんよですね」
 イコナ・ユア・クックブックの生足を見て、ベアトリーチェ・アイブリンガーもうなずく。
 花道をスキップで往復すると、ステージに戻ってきたティー・ティーが大谷文美からハープを受け取って手に持った。イコナ・ユア・クックブックのほうは、フルートを受け取る。
「『すいか』を歌います」
 イコナ・ユア・クックブックが言うと、ティー・ティーが、かかえたハープを弾き始めた。それに合わせて、二人で歌い出す。
 
「たべよう たべよう おいしいスイカ
 甘くてジューシー でも果物じゃない
 大玉 小玉 種無しスイカ
 ひやしたスイカを シャリシャリもぐもぐ
 種ごと食べては いけないよ♪」
 
 間奏では、イコナ・ユア・クックブックがフルートを吹く。
 それを聞いて、客席にいたイコナちゃん親衛隊が、野太い声で声援を送った。
「スイカは野菜なのかな?」
 歌を聴いた御神楽陽太が、ちょっと考え込む。
「可愛ければ、正義であります」
 二人の歌を堪能した大洞剛太郎が、満足気に言った。
「食物連鎖の頂点めざして……まずはスイカを制覇してやったうさ!」
 ティー・ティーが意味不明の宣言をすると、二人はたたたたっとステージ奥へと消えていった。
「可愛かったですわ」
「ええ」
 満足気なユーリカ・アスゲージに、非不未予異無亡病近遠がうなずいた。
「楽しい出し物であった」
 コア・ハーティオンも十分に楽しんだようだ。
『それでは、審査員のお二人、今の月見うどんはいかがでしたでしょうか』
『なぜスイカぁ?』
『なんで月見うどんなのです?』
 未だ考え続けている審査員たちであった。
 
    ★    ★    ★
 
「ふう、やり遂げました」
「まあ、こんなものですわ」
 出番の終わったティー・ティーとイコナ・ユア・クックブックが、源鉄心に報告するためにそのままの衣装でいったん観客席にやってきた。
「いや、いいステージだったぞ。衣装だって完璧だ。でも、二人共獣人じゃないのに、これってどうなっているんだ?」
 褒めつつも、源鉄心がちょっと不思議そうにイコナ・ユア・クックブックの猫尻尾を掴んだ。
「きゃっ!」
「鉄心、セクハラです!」
 神経が通っているわけではないはずなのに、なぜか小さな悲鳴をあげるイコナ・ユア・クックブックを見て、ティー・ティーが源鉄心を叱った。だが、それとほぼ同時に、イコナちゃん親衛隊の男たちが、手に持ったナイフをピタリと源鉄心の首筋に当てて凄んでいる。
「御命令あらば……」
 イコナちゃん親衛隊のアサシン軍団が、抑えた声でイコナ・ユア・クックブックに訊ねる。
「今回だけは許してさしあげなさいですわ」
「はっ」
 スッと、イコナちゃん親衛隊の面々がどこへかと姿を消す。
「わ、悪かった……」
 ほっと力が抜けて、椅子から半分ずり落ちた源鉄心であった
 
 
テティス・レジャ

 
 
『エントリーナンバー9番、テティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)さんです』
「だ、だまされた……」
 蒼空学園女子公式水着姿でステージ上に現れたテティス・レジャは、観客席に紛れているだろう皇 彼方(はなぶさ・かなた)の姿を必死に捜した。だが、薄暗い観客席のどこに皇彼方がいるのかまったく分からない。
「参加する女子は全員水着姿だって言ったのに、嘘じゃない!」
 とはいえ、さすがにここで逃げだすわけにはいかないので、にこやかに引きつった作り笑いを浮かべながら花道を歩いて行く。
「よおし、普段から影が薄いと言われている俺たちの汚名挽回だぜ」
 挽回する物を端から間違えつつも、こっそりとコア・ハーティオンの陰に隠れた皇彼方がテティス・レジャを応援する。
「えっとぉ……」
 なんとか花道を往復はしたものの、テンションはだだ下がりである。仕方ないので、テティス・レジャは一芸を出すことにした。
「コーラルリーフ!」
 左手を高く挙げて星槍の名を呼ぶ。指先のあたりの空間がゆらめき、薄紅色の細波がたった。ゆらぐ波面がゆっくりと下に降りてくる。テティス・レジャの身体を細波が通りすぎると、その右手には三つ叉の珊瑚色の槍が握られていた。
「癒やしの光を!」
 テティス・レジャが叫ぶと、コーラルリーフの光条から同じ色の光が周囲に放たれた。その光につつまれて、ちょっとテティス・レジャの気分も回復する。
 その光に紛れて、テティス・レジャはさっさとステージを去って行った。
『審査員の方々、今のテティス・レジャさんはどうでしたでしようか』
『まぶしかったのですわ』
『水着はよかったですねえ。いろいろと、いっぱいいっぱいで残念だったのが、見ていて面白かったですねえ』
 
 
トレーネ・ディオニウス

 
 
『続いては、エントリーナンバー10番、トレーネ・ディオニウス(とれーね・でぃおにうす)さんです』
 シャレード・ムーンに呼ばれて、ディオニウス三姉妹の長女、トレーネ・ディオニウスが現れた。光沢のある真紅のチャイナドレスという出で立ちだ。長いキセルを手に持って、つかつかといった足取りで花道を進んで行く。その一歩ごとに、深く腰まで入ったスリットから生足が大胆に飛び出す。
「見てはいけません、コハクさん」
 あわてて、ベアトリーチェ・アイブリンガーがコハク・ソーロッドをガードする。
 大洞剛太郎やアキラ・セイルーンは大興奮であるが、隣にパートナーたちが座った源鉄心や御神楽陽太たちは涼しい顔を決め込んでいる。
「それでは、みなさん、カフェ・ディオニウスをよろしくですわ♪」
 投げキッスをして、トレーネ・ディオニウスがステージを去って行く。
『それでは、審査員のみなさん、今のトレーネ・ディオニウスさんはいかがでしたでしょうか?』
『宣伝は、ほどほどになのですわ』
『たっゆんがけしからんですねえ』