リアクション
悠久ノカナタ 『さて、エントリーナンバー11番、前回のクイーン、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)さんの登場です』 シャレード・ムーンに呼ばれて、悠久ノカナタがステージに現れた。 ふわふわと床の少し上を浮かんで進む魔女の大釜のへりに腰かけている。着ている衣装は魔法少女の衣装だ。前回優勝したときとはまた違って、かなり凝った派手な物となっていた。 薄紫のノンショルダーブラウスは、二の腕にかけられたリボンストラップと一続きになって大きく開いた胸元で重ね合わされている。同じ色のスカートは、白いレースのパニエで大きくふくらみ、縁をぐるりと赤紫のレースに飾られていた。その上からは、真紅のジレがシルバーチェーンで前を閉じ、同じ色のオーバースカート部分を美しくドレープができるようにベルトに挟み込んでいる。 頭の右側を被うにようにつけられた帽子は、大輪の赤い花を模したデザインで白いレース飾りが悠久ノカナタの美しい銀髪との中渡しをしている。その豊かな銀髪は、薄紫の飾り紐で大きく二つに分けられていた。大釜から零れ落ちる光のようにのばされた銀髪は、微かな頭の左右の動きに合わせて、床につくかつかないかの位置でその毛先をゆらゆらとゆらしている。 その間には、ほっそりとした脚が二つ、ときおり戯れるようにのばされたり下ろされたりしていた。銀色のブーツから上は銀の縦縞のオーバーニーソックスになっていて、絶対領域から上の白い生足がパニエの波の中へと続いている。ブーツとソックスの境は、真紅のレッグカバーがレース飾りをひらひらさせながら被っていた。 軽く目を閉じてときおり何かを口ずさむかのように口許を振るわせつつ、のばした脚で絶対領域をチラチラさせながら、悠久ノカナタは花道を進んで行った。 「これは……」 なぜ奥義がと、大洞剛太郎が悠久ノカナタの足捌きに見とれた。 意匠的な真紅のカフスがついた白い手袋で大釜のバランスを操ると、魔女の大釜が花道の突端でゆっくりと回転して元来た道を戻っていく。 ステージに辿り着くと、悠久ノカナタがふわりと床に飛び降りた。片膝を着いて身をかがめると、銀髪が床に髪溜まりを作り、乗り手のいなくなった魔女の大釜がスーッと上へ飛んでいって姿を消した。 「全てすっきり浄化。魔法少女スカーレットカナタ、かんりょー!」 立ちあがりつつ、パッチリと目を見開いた悠久ノカナタが名乗りをあげると、上空で何かが弾けた。 「吹雪け、氷雪の神楽よ」 飛び散ったブリザードから、雪片がステージへと舞い落ちる。 「雪でございます。綺麗でございますね」 「ええ」 手をさしのべて雪をすくい取ったアルティア・シールアムに、イグナ・スプリントが同意した。 「カナタさんって、結構小柄だったんですね」 ステージの上の悠久ノカナタを見て、コハク・ソーロッドが言った。 「東に蒼木、西に白金、南に赫焔、北に玄水、央に光輝……」 次の呪文を唱えつつ悠久ノカナタが一つずつ手を差しのばすと、彼女の周囲にいくつかの炎の塊が浮かびあがった。 「我が敵をいだけ炎の腕!」 腕を突きあげて悠久ノカナタが叫ぶ。その瞬間、炎の塊が周囲で渦を巻き、舞い散る雪と一つになってもうもうたる霧を形作った。それも、一瞬後に炎に吹き払われる。 「びっくりですわ」 急激な変化に、ユーリカ・アスゲージが驚いて非不未予異無亡病近遠にしがみつく。 全てが消え去ったとき、悠久ノカナタの姿はもうステージの上にはなかった。 「おお、ブラボー」 思わず、コア・ハーティオンがスタンディングオベーションをする。はっきり言って、後ろの観客には迷惑であった。 「パワフルだったなあ」 「ふっ、わしには到底及ばぬがのう」 「ほんとか?」 よけいな一言を言って、ルシェイメア・フローズンにこづかれるアキラ・セイルーンであった。 『いかがでしたでしょうか』 シャレード・ムーンが審査員たちに訊ねた。 『なかなかに派手なステージでしたわ。魔法を使うとは、派手でいいですわね』 『やはり、歳は聞いてはいけないんですよねえ』 |
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