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―アリスインゲート1―後編

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―アリスインゲート1―後編

リアクション

「奪還のための拉致、操作のための失踪……迷子属性誕生してから連綿と続く愚かな営み。だが、そう分かっていても営みは続く……そしてまた他誰かが呟く、『たまには火薬の匂いを嗅ぐのも悪くない』!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がショッピングモールのおもちゃコーナーで買ったロケット花火銃を乱射する。お支払いはもちろん六番レジ。
「ムセル! ムセル!」
 煙る空気を払う警備員に容赦なく何かが追撃する。
 煙の中からニンジャ(フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう))が現れてアンブッシュ。そしてゴアイ殺。
「ドーモ、ブルージャスティスです」
「なんで! ぶるーじゃすてぃすなんで!」
 なんでを理解する前に警備員(武装)は口に芋ケンピをつめ込まれて窒息した。何人もの警備員が芋を詰まらせて倒れている光景はこのシナリオのアトモスフィアを圧倒的に破壊してくれている。
「今日は特別でね……もう一人来ているんだ」
 とフィーアが紹介すると物陰から森 長可(もり・ながよし)が現れて挨拶する。
「ドーモ、オニムサシデース。なあ、首おいてけよな、首……」
「ひい! シマーズ!」
「ああん?! ザッケンナコラー! 誰がだ!? スッゾコラー!」
 逃げる警備員の首が飛ぶ。ああ。SATUGAIされたのはアンドロイドの方ね。規制が厳しくてごめんね。
「ワザマエ! シャッターチャンス!!」
 合いの手を入れてすぐさまカメラを構えるエヴァルト。飛んでいる首が風流である。
 しかし彼を邪魔する警備アンドロイドたち。テレポートゲートから何体も増援が来る。言っておくが花火の音に誘われてきたわけじゃない。何やらSATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ! とデスボイスが音声機能から発せられている。が、残念ながらここはDMCのライブ会場ではない。戦国DQNならいるけど。
「奥ゆかしい人のシャッターチャンスを妨げるな! 成敗してやる」
 それはスゴイ・シツレイなことだ。体温の上がったエヴァルト・グリーン(発光)はガラス越しの外においてあった芝刈り機に飛びついた。ダイナミックオジャマシマシタの後キャッチアンドダイナミック再入店。
「ゥウリィィイーッ! 死刃刈り機だッ!!」
 ソォイ! と跳びつくエヴァルトは警備アンドロイドの頭にそいつを被せた。
「キャヴァーーーーーン!」
 機械的断末魔とモーター音が唸る。
 モノポールモーターで超高速回転するレーザーカッターで草の芽を同じ高さに切り揃えるそれが、警備アンドロイドを頭から等間隔の厚みにスライスしていく。廃棄口から人工肉片と白濁のプラスチック血液が噴出する。
「ミンチよりヒデェ……! ネギトロだ……さすがモーター! 科学の勝利だ!」
 マッポーめいた光景に思わずフィーアもスゴイ・モーターの奥ゆかしさに「今僕の体温何度あるのかなーツ!?」状態。多分平熱。
 阿鼻叫喚の地獄絵図。偉大なる【第三世界】の科学の産物もジャーナリストとニンジャとDQNによって破壊され、ロビーは■健全だ■白いベタつく何か■猥褻が一切無い■で一杯だ。
 受付の机の下「ヤメテー! ヤメテー! シニタクナーイ!」とホワイトブラッド塗れのバスト豊満なオネー=サン(三十路前)が嘆いている。今にもハイクを詠みそうだ。シャッターに収めたら評価Dramaticで良い点数になるだろう。
――ここでスゴイ・イヤラシイ想像したあなた。あとでケジメな。
「まさに『ショッギョ・ムッジョの響きあり、ジョウシャ・ヒッスイの理を表す』日本書紀に書いてある通りだね! 僕詳しいんだ!」
 などとフィーアが惨状をウタで表すが、そんなの古事記(著:ミヤモト・マサシ)にも書いてありません。
「ここは大分片付いたな……」
 汗と白血を拭うエヴァルト。どう見ても散らかしてます本当に――。
「だが、もう持ち込んだ装備がない!」
 そんな時に、
「あれはダンボール……イイモノを見つけた!」
 ダンボールを手に取り、質感と頑丈さを確かめる。「さすが【第三世界】だ! モノが違うぜぇ!」と絶賛するほど。が、元世界とそんなに変わりない。
 早速受付のデスクを工作机代わりに加工を始める。使うのはダンボール二箱とガムテープ。
「――イエッス!」
 するとあら不思議、モビルなスーツの完成だ。胸には「いヴォルヴァ」とガムテープで文字が書かれているのがチープでイトオカシ。
「装備はこれで完璧だ! 次のフロアに向かうぞ!」
 こうしてロビーを制圧したジャーナリスト(狂人)と忍者(やっぱり狂人)とDQN(狂人しかいねぇ!)は次の獲物を求めて風雲ESC城の階段をガッガッガ――と上っていった。