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ぶーとれぐ 真実の館

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琳 鳳明(りん・ほうめい) 影月 銀(かげつき・しろがね) ミシェル・ジェレシード(みしぇる・じぇれしーど) 



アンベール男爵に正式に相談役を依頼された神父さんだという話なので、会いにきてみたんだけど。
なんじゃ、これは。

ルディは、部屋に入ってきた鳳明が、女性なのを本人にたしかめると、仏頂面で席をすすめ、その後はなにも言わずに、鳳明とむかいあって座っている。

ひどくよそよそしい空気なんですけど。
神父さんとは初対面で、こんなふうにつめたくされるおぼえはないんだけど。
私から話しかけるしかないよね。

「お忙しいところ、すいませんね。
お邪魔かもしれないですね、あの、私、話してもいいですか」

「どうぞ。ご自由に」

「まぁ、お時間がないようでしたら、別にいいんですが」

「私はなにも言っておりませんが、あなたに余裕がないのなら、どうぞ、お帰りください」

え。え。え。私、この部屋になにしにきたんだっけ。

「ごめんなさーい。私も一緒にお話しさせてください」

「失礼。神父では話にならないようだ。
かわりに俺たちに聞かせてくれないか」

同じ部屋の隣の間から、ミシェル・ジェレシードと影月銀がでてきてルディの背後に立った。

「私たち、ルディ神父のお手伝いをしてるの。
今日は神父が体調が悪くて」

「なにを言うのです。私は」

「神父は、ここでいろいろな人の悩みをきいて、心がふさいでいるのだ。
自分でも気づかぬうちに、病んでしまっている」

銀の言葉にルディは表情をやわらげた。

「たしかに私自身、この館で悩みを抱えてしまっているのは事実ですが、病んでるほどではありません。
お心遣い、ありがとう」

「そうなんですね。へぇ。私、館の中をまわって、みなさんから話をきいていたんですが、どうもまとまりがなくて。
ところで神父さんの悩みというのは、幽霊の件ですか。
神父さんが館を徘徊する女の幽霊に惑わされているって、何人からか聞きましたけど」

素直で人情家の鳳明は、ミシェル、銀とルディのやりとりをみて、ルディの容態? が気になってしまった。

人の悩みをきくのは疲れるだろうし、そのストレスで幻覚をみている可能性もあるよね。
でも。

「余計なことかもしれませんが、私、神父さんの幽霊は正体がある、っていうか、人間だと思うの」

「あなたは、私がみたアレのなにを知っているのです」

「ですから、使用人のかたたちからきいた話を総合すると、どうやら、その人は現実の存在みたいですよ。
だいたい居所もわかっていて、館の屋根裏に専用の衣裳部屋もあるらしいとか、どうとか」

「それは、ほんとう、なのですか」

ルディは席を立って、中腰のまま、鳳明に顔を近づけてきた。

やば。私、ヘンなスイッチ押しちゃったかも。

いつの間にか、ルディだけでなくミシェルと銀も鳳明をじっとみつめている。

この人たちは、みんな真剣なんだ。なら、神父さんの悩みをとりのぞいてあげられるように、私も協力してあげないと。

「あんまり、くわしくはないんですけどね。
数週間前に、アンベール男爵がまるで服屋でもはじめるように、たくさんの婦人用の服を買い込んだんですって。
これまでも、女の人をこの館に住まわせることはあっても、家具を用意するならともかく、あんなにもたくさんの服を買ったことはなかったそうです。
まるで、1ダースの娼館がそのままきても大丈夫なくらい、下着から、コート、帽子まで、なんでも用意したらしいですよ。
誰かが男爵に理由をきくと、

彼はあの女の子供だから。

とかこたえたって言ってました。
意味わからなくないですか」

「彼はあの女の子供、そう言ったのですね」

「そう言ったと聞いています」

「わかりました。感謝します」

めずらしくルディが女性に本気でお礼を言ったのをきき、ミシェルが目をまるくしている。
「彼女は私の母ではありません。私の母の敵の味方かもしれませんが」

「それは幽霊ではありませんよね」

「邪悪な人間です」

自分が部屋にきた目的も忘れて、一生懸命、説明した鳳明の話をきいて、鳳明が去ったこの後、ルディは駆け足で屋根裏部屋を探しに行った。