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逸脱者達のキリングタイム

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第2章 ガチムチのザ=コにも5分くらいの尺稼ぎ(深い意味は無し)

「さて、俺と戦おうという奴は一体何処のどいつだ?」
 一歩前に踏み出してきたのはザ=コ。袋越しだというのに解るドヤ顔に皆少しばかりイラッとする。
「わたくしが行きますわ」
「さて、やりますか(正直面倒くさい……)」
「ふっふっふ……さぁどっからでもかかってらっしゃい!」
 それに対して出てきたのはアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)ティアン・メイ(てぃあん・めい)
 やる気は無くはないのだろうがあるかと言われれば微妙なアデリーヌ、外面良く笑みを見せている物のかったりぃという空気が僅かに漏れている玄秀、何やらクリスマスで色々あったらしく、鬱憤を晴らしたい為滅茶苦茶やる気(というか殺る気)満々のティアンだった。
「……え、何このグループ何か怖い」
 ザ=コもちょっと引く有様である。ホント何だこの組み合わせ。
「……ま、まぁいいやったろうやんけ! さぁかかってきやがれぃ!」
 ザ=コが「コッポーじゃい!」とよく解らない構えを取る。恐らく骨法なのだろうが勿論構えは出鱈目だ。
 それに対し、更にアデリーヌが一歩前に出る。そして何やら呟き、手をかざすと氷の粒が空中に生み出される。
 氷の粒は、更に生み出された風に乗ると氷の嵐【ブリザード】となりザ=コを襲う。
「ふん! そそそそそそそれしきの寒さ! この伊達の肉体にはそこそこしか効かんわ!」
 よく解らない構えで氷の粒を弾き飛ばしながらザ=コが叫ぶ。パンイチの格好の為、粟の様な鳥肌がびっしりと立ってはいるが、直接的なダメージは無いようである。
「成程、ではこちらはどうです!?」
 アデリーヌが再度手をかざすと、今度は光が放たれた。その光――【我は射す光の閃刃】は刃となり、ザ=コを襲う。が、
「ふはははは! 効かん! この俺の廻し受けの前にはあんま効かんわ!」
なんとザ=コは光の刃を払い除ける様にして躱している。流石廻し受け。矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持って来いという技である。
「……埒があきませんわ」
 術は効果がないと判断したアデリーヌは、地面を踏み出しザ=コに接近する。
 そのまま拳を放ち、接近戦に持ち込むが打撃はフェイク。狙いはそのまま押し倒してグラウンドへ持ち込むことだ。
 だが、そのフェイクが失敗だった。
「遅いわ!」
 放った腕を掴れ、投げられたアデリーヌの身体が空に舞う。
「きゃあッ!?」
 背中から落ちたアデリーヌの口から悲鳴が漏れる。
「ふっふっふ……ザコをただのやられ役と勘違いしないで頂きたいですな……最終的にやられようとも、序盤の残機削り等にも使われるのだよザコは!」
 よく解らないことを言いつつ、起き上がろうとするアデリーヌをザ=コが掴む。
「さぁてもういっちょうぐぉッ!?」
 再度、投げようと身を捻るザ=コの口から呻き声が漏れる。
「調子に乗らないで頂けます?」
 アデリーヌの腕が、ザ=コの首に巻きついていた。スリーパーである。
「ご……ごぉぉぉぉ……あ、あの、極まってます……チョーク極まってまんごふっ!」
 アデリーヌが更に絞める。頸動脈を絞めて気絶を狙う、なんて軟な物ではなく喉仏を潰して殺す気のチョークだ。
 額に青筋を立てて「極めてんのよ」と言わんばかりに絞め上げるアデリーヌ。完全におこである。激おこである。ザコが調子に乗った結果がこれだ。
「んごぉぉぉ……お?」
 ペチペチとザ=コが叩いていたアデリーヌの腕から絞める力が弱まる。その隙に抜け出し、咳き込みながら息を整える。
「くっ……女人だと思って手加減したら調子に乗りおってからに……!」
 調子に乗っていたのはコイツである。
「だがそれもこれで終わりにしたら……お?」
 構えようとしたザ=コの頭をアデリーヌが脇に抱える。
「え、あの、何? 一体何が起こるんです?」
 てきぱきとザ=コの片足を抱える様にクラッチを極めるアデリーヌ。
「あら、決まってますわ」
 アデリーヌが笑みを浮かべて言った。
「大参事ですわ」
 アデリーヌがザ=コの身体を持ち上げた。持ち上げたところで一旦手を離し、ザ=コの身体を持ち替える。
 そのままアデリーヌは開脚ジャンプして、前方にザ=コを頭から叩きつけた。ポールシフトと呼ばれる技であった。
 受け身の取れないザ=コは首から落下。ゴキ、と嫌な鈍い音が首から発せられる。
「あら、あっけない」
 ピクピクと痙攣するザ=コを見下ろし、埃を払いつつアデリーヌが呟いた。
「お、おおおお! いいですよぉ! いいですよぉ! よくやってくれましたアデリーヌさん! 視聴率上昇してますよぉ!」
 阿部Pが何やらモニターを見て小躍りせんばかりに喜んでいる。
「ほら見てくださいよ! 視聴者からこんなにコメントが!」
 そう言って見せてくるモニターには『俺も絞めてくれ』とか色々酷いコメントが流れていた。
「……嬉しくありませんわ」
 それを見てアデリーヌがげんなりとした表情になる。
「えーと、視聴率も5%上がってますね。勝利したことも含めてアデリーヌさんには150P追加されます。どうします、続けますか?」
 阿部Pに言われるが、止めておくとアデリーヌが下がった。
「成程。しかしまだザ=コさんは死んでいません! さぁ殺る気がある方から存分に殺りあってください!」
 その言葉で、まだ若干ダメージが残っているのかふらつきながらもザ=コが立ち上がる。
「ふぅ……ライフポイント制でなければ即死だった……さぁ次に俺を倒すのは何処のどいつだ!」
 そう言ってザ=コが再度構えを取った。

※現在視聴率55%

アデリーヌ・シャントルイユ 250P→400P


「さぁてお次に相手をするのは……」
 ザ=コが残った相手を見据える。そこに居たのはやる気のない玄秀と殺る気満々のティアン。
「折角だから俺はこっちを選ぶぜぇッ!」
 ザ=コが指さしたのは、
「……僕かよ」
玄秀であった。
「なんでよ!? 私じゃないの!?」
「流石に殺す気満々の方に向かう程勇敢じゃないんデスヨ!」
 抗議するティアンに自信満々に答えるザ=コ。
「そんなことより早速行くぜぇ! ヒャッハー! か弱い少年だー!」
 ザ=コが叫びながら飛び掛かろうとする。いかん既に死亡フラグだ。
「あ゛? か弱い少年?」
 そんなザ=コを、玄秀は笑みを浮かべる。が、その眼は笑っていない。笑うどころか【羅刹眼】の殺気が籠りまくっていた。
 その様な眼を向けられたザ=コの最初の勢いは何処へやら。動きを止めてしまった。
「……や、やべぇよ超こえぇよ何だよあの眼何人か殺ってる眼だよ」
 ザ=コの全身がガクガクと振えている。よく見ると足元に凄い量の水たまりができている。それ以上この件に関しては触れてあげないでください。
「し、しかしこのザ=コ! 睨み付けられた程度で臆する程雑魚じゃぬわあああああああ!
 ザ=コの身体を、【天のいかづち】が貫いていた。
「……全く、何で僕がこんな茶番に」
 放った玄秀は誰にも聞こえないほどの声で呟く。
「まあ、もう終わらせても構いませんよね?」
「えぇー!? 私の分残しておいてよ!」
 不服そうに言うティアンを無視して、玄秀がザ=コに接近する。手には【爆炎掌】を装着してある。これで掴んで黒焦げのザ=コを更に爆破してやろうというのだ。
 だが、伸ばした玄秀の腕をザ=コが掴む。
「ま、まだだ! たかがメインパンツが汚れて身体に電撃を受けて黒焦げになった程度だ!」
 いや十分重症じゃねーか、と言いたくなるようなことを言いつつ掴んだ玄秀を投げる。ただ力任せに放るだけの投げを、玄秀は咄嗟に受け身を取りダメージを軽くする。
「……ぐっ」
 対してザ=コはダメージが深いようで足元がふらついている。
「もうそこまででいいじゃないですか」
「ま、まだまだぁ……」
 尚戦う気のザ=コに呆れた様に玄秀は溜息を吐く。
「じゃ、終わらせてあげますよ」
 そう言って玄秀が手をかざすと、突如ザ=コは頭を抱えて膝を着いてしまった。
「ねえ、何したの?」
「別に。ちょっと【グリムイメージ】をかけただけ」
 ティアンが不思議そうに尋ねると、面倒臭そうに玄秀が答えた。

「なっ何をする!? 貴様ら俺の身体をどうしようというのだ!? な、なんだそのでっかいモノは!? まさか貴様らその卑猥な触手で俺に乱暴するつもりだろう!? パンツレスリングみたいに!」

「……一体コレは何見てるのよ」
「いや、ピンク空間に引きずり込んだ筈なんだけど……」
 見えない敵と戦うザ=コに、軽く引く2人であった。
「まぁきっちりトドメは刺しておこう」
 玄秀がイイ笑顔で言うと、何処から連れてきたのか【淫獣】をザ=コに嗾ける。
「おっと、絵面的に危ないな」
 そして【闇洞術『玄武』】で闇を生み出し、ザ=コを包み込んだ。

「お、おぅ!? 一体何をするだぁーッ!? あっ! 駄目っ! そんな激しいの……壊れちゃう! ザ=コこわれちゃうのぉぉぉぉぉぉ!」

 暫く闇の中からそんな悲鳴が聞こえていたが、やがて声すら聞こえなくなる。
 闇が晴れた時、現れたのは艶々になった【淫獣】と、ボロ雑巾より酷い事になっているザ=コであった。

「うおおおお! 視聴率がぐいぐい来てますよ! ぐいぐいと来てますよぉ!」
 阿部Pが叫びながら小躍りしている。
「見てくださいよ視聴者の声を! 歓喜の声で溢れてますよ!」
 そう言って見せられたモニターには『淫獣×ザ=コ……薄い本が厚くなるな』『闇が深くなってきたな……』『この闇はBD版で取れるんだよな!?』『マジで? BD予約してくるわ』という一部の濃い層を始め、ほぼ一方的な暴力に満足した視聴者のコメントで溢れていた。
「ほぼ一方的な展開に視聴率も更に10%も上がってますよ! 勝利したことも含め、玄秀さんは200P追加ぁッ!」
「当然ですよ」
 玄秀が笑みを見せる。完全に猫をかぶっている。
「うぅ……ちょっとくらい私の見せ場残しておいても良かったじゃないのよ……」
が、その横ではティアンが不満そうに玄秀を見ていた。 

※現在視聴率65%

高月玄秀 200P→400P