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平行世界からの来客と過ごす今日
午後、空京。
「舞花ちゃん、今日はとても賑やかだね」
「そうですね。もしかしたら平行世界の知り合いに会う事が出来るかもしれませんよ」
御神楽 舞花(みかぐら・まいか)とノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は平行世界の住人達が入り乱れる賑やかな通りを眺めつつ洩らした。ノーンはとても好奇心で目を輝かせていた。
二人はのんびりと通りを歩き回り、すぐさま平行世界の住人に出会う事が出来て無事に再会を果たす事が出来た。
再会後。
「はじめまして。私は、お二人からすると平行世界の御神楽舞花です。陽太様、環菜様、平行世界からよくいらっしゃいました。本日は誠心誠意おもてなしさせて頂きます」
「こんにちは! 平行世界のおにーちゃんと環菜おねーちゃん、それと“わたし”!」
『貴賓への対応』を有する舞花は礼儀正しくノーンは元気いっぱいに平行世界のノーンと御神楽 陽太(みかぐら・ようた)と御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に挨拶をした。
「こんにちは。見かけた時はそっくりで驚きましたよ」
「本当に。気付いたらこちらの世界にいて……」
挨拶を返す平行世界の陽太と環菜は舞花達に遭遇した時の事を思い出していた。つい先程通りで出会ったところなのだ。
「せっかく来たからこっちの世界を観光したりいろいろお話したいなぁ」
平行世界ノーンは好奇心に輝く瞳を周囲に巡らしていた。
「それなら近くにとっておきの場所があるから。そこに案内するよ。ね。舞花ちゃん?」
ノーンは平行世界の自分の言葉を聞くなりニンマリし、舞花にちらりと目配せ。
「はい。料理も美味しくて遊べる場所です」
ノーンが考えるとっておきの場所を察した舞花はうなずき、平行世界ノーンの好奇心をくすぐるような事を口走る。
「面白そうな所だね。ねぇ、どこ?」
好奇心旺盛な平行世界ノーンは目を輝かせて舞花達にせっつく。
しかし、
「着くまで秘密!」
「すぐ近くですから」
ノーンと舞花はそう言って明かさない。
「ん〜、ますます気になる。早く案内して!」
知りたくて堪らない平行世界ノーンは早く案内するようにと舞花達を急かした。
「うん、案内するね♪」
ノーンが先頭に立ち道案内を始めた。
そして、案内したのはユルナ・キサラが経営するホラーハウス内にある喫茶店であった。経営者は顔見知りのノーンが二人いる事に驚くも舞花に事情を聞いて納得し快く皆を歓迎した。
ホラーハウス内、喫茶店。
「お会いした時から気になっていたのですが、もしかして……」
舞花は席に着き、落ち着いた所で環菜のお腹に目を向けた。
「えぇ、赤ちゃんがいるの。私達の」
平行世界環菜はお腹に手を当て隣に座る陽太に笑みを向けつつ答えた。ちなみに半年後に出産予定。
「赤ちゃんが? すごいね。こっちのおにーちゃんと環菜おねーちゃんもそうだよ。赤ちゃん生まれたんだよ」
ノーンは驚きつつこちらの御神楽夫妻の事を話した。
「それは本当ですか?」
まさかの出来事に平行世界陽太は驚き思わず聞き返した。
「はい、つい最近です。可愛い女の子で陽菜(ひな)と言います。熱心に育児を頑張っていますよ」
舞花は陽菜に向ける夫妻の幸せそうな顔を思い出しつつ答えた。
「陽菜ですか。素敵な名前ですね」
平行世界陽太は自分の事のように喜んでいた。
「こちらの世界の私達の方が少し先輩なのね」
平行世界環菜は少しおかしそうに笑んだ。
「そうですね。陽太様も環菜様も大変そうですが……」
舞花は空京の病院近くに一時的に構えた仮住居で賑やかに愛情いっぱいに子育てをする夫妻の様子を話した。
途中、
「これに子育てを頑張るおにーちゃん達を撮った画像があるよ!」
ノーンが持参していたシャンバラ電機のノートパソコンに保存していた御神楽夫妻と赤ちゃんの様子を撮影した画像を披露。
「大変そうね。それにしても何か不思議な感じ。自分が自分の育児の様子を聞くというのは」
平行世界環菜は画像を見たり話を聞いたりするなり軽く笑ってから味は最高の不気味な飲み物に口をつけた。
「でも幸せをお裾分けして貰った感じです。俺達も頑張らないといけませんね」
平行世界陽太は妻のお腹にいる我が子に視線を向け、お父さんの顔をしていた。
「ところで鉄道事業の方はどうですか?」
舞花はもう一つ気になる事を訊ねた。
「ザンスカールにも開通して順調よ。舞花も事業の中枢を担ってくれているおかげで……見た目は不気味だけどなかなか美味しいわね」
平行世界環菜は今も熱心に仕事中であろう舞花の事を思い出しながら話した。
「そうですか。こちらとは違い鉄道網整備の進捗状況はやや進んでいますね」
舞花は両世界の差違に言葉を洩らした。
「ねぇ、他にはどんな画像があるの?」
平行世界ノーンが好奇心に目を爛々とさせながら訊ねた。
「他には、ハロウィンと妖怪の宿に行った時と……」
ノーンはイルミンスールのハロウィンでユルナと撮影した記念写真や妖怪宿での写真、このハウスで食べたパフェの画像を次々と平行世界の三人に見せつつ写真に関する話もした。
「わぁ、このパフェ美味しそう!」
平行世界ノーンが釘付けになったのはこのハウス名物のデカ盛りパフェ。
「でしょ。とっても美味しいんだよ!!」
ノーンは勢いよく言う。
「わたしも食べたいなぁ」
写真だけじゃ物足りない平行世界ノーンは実際に体験する事を所望。お菓子を食べるのが好きなのはこちらと同じのようだ。
「うん、食べてみて。そのためにここに案内したんだよ!」
ノーンは笑顔でここに案内した理由を話した。自分の美味しい物を食べて同じように美味しいと思って欲しいから。
「きっと美味しいだろうけど、一人じゃ食べ切れないわね」
平行世界環菜はこちらの観光としては興味はあれどパフェの大きさに少々困り顔。
「それなら、一つ注文して半分ずつ食べませんか。半分なら食べ切れますよ。何よりせっかくこちらに来たのに食べないのはもったいないですし」
平行世界陽太は笑みながらある提案をする。
「……は、半分ずつって」
夫の思いがけない提案に妻は気恥ずかしさから言葉が少し乱れてしまう。
「すみません! 注文いいですか」
平行世界陽太は気にする事無くホラーな格好をしたスタッフを呼び止めデカ盛りパフェを注文した。
「ちょっと、陽太」
平行世界環菜は困ったように口を尖らせつつ注文する夫を見守っていた。
しばらくして注文したデカ盛りパフェはすぐに運ばれた。
「ん〜、美味しい」
平行世界ノーンは運ばれるなりすぐさまパフェを頬張った。
「でしょ。この後、一緒にハウスで遊ぼう!」
ノーンも美味しそうに頬張りながらハウスの宝探しに誘う。
「いいよ! 遊ぼう!!」
好奇心旺盛な平行世界ノーンは即答した。
「……美味しいわね」
「そうですね。見た目はさすがホラーですが」
さすがに衆目があるため食べさせあいはせず、一つのパフェを思い思いにつついていた。
「……(平行世界でも仲が良いのは同じですね)」
舞花は微笑ましげに平行世界の御神楽夫妻を眺めていた。ハロウィンの時のこちらの二人とそっくりだと思いながら。
デカ盛りパフェを真っ先に食べ終えたのは
「宝探しに行こう!」
「うん! 案内お願いするよ、こっちのわたし」
ノーン達だった。さすがお菓子が大好きなだけある。
「舞花ちゃんはどうする?」
ふとノーンは別のスイーツを注文し食べ終わっている舞花に訊ねた。
「私はここに残ります」
舞花はここに不案内である平行世界の御神楽夫妻のために残る事にした。
「分かった。それじゃ、行こう♪」
ノーンはそう言うなり平行世界ノーンを伴ってハウスの受付に向かった。
ノーン達を見送った後、
「パフェを食べ終えたらこちらの陽太様達のために記念動画をお願いしてもいいでしょうか。この出会いを報告したいので」
舞花はデジタルビデオカメラを取り出し、お願いをする。
「もちろんですよ」
「……少し時間は掛かりそうだけど」
平行世界の御神楽夫妻は快く引き受けた。ただ、厄介なのはパフェのデカ盛りさであった。
「ありがとうございます」
舞花は礼を言った。
それから舞花は平行世界の御神楽夫妻とあれこれお喋りをしたりデカ盛りパフェを完食した御神楽夫妻をデジタルビデオカメラで撮影し、こちらの世界の御神楽夫妻にメッセージを残して貰った。
一方、ノーン達。
「こっちにあったよ!」
平行世界ノーンはホラーハウスの重要アイテムである家族写真の切れ端を発見した。写真の場所は当然のことながらノーンが参加した時とは違っていた。
「お見事! あともう少しだね」
ノーンは手を叩いて発見を喜んだ。
「いろんなお化けがいて面白いね」
「でしょ、舞花ちゃんと来た時よりもずっと怖くなってるよ」
二人はホラーハウスをすっかり楽しんでいた。ホラーハウスは妖怪の宿でのリサーチのたまものか和風な妖怪も混ざっており恐怖の度合いが以前よりもアップしていた。
とにもかくにも舞花とノーンは平行世界からの来客達と楽しく過ごした。ちなみに家族写真は完成させ見事に宝物を手に入れたという。
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