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ホスピタル・ナイトメア2

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ホスピタル・ナイトメア2

リアクション


【夢想攻撃空間】

 デスマスクは、源次郎と三人のコントラクター達に対して、最後まで指一本触れることも出来なかった。
 幾ら攻撃を仕掛けてみても、攻撃した瞬間の時間が『無かったこと』にされてしまい、逆に源次郎が何気なく振るったブレードロッドによる反撃は、デスマスクを容赦なく切り刻んだ。
 デスマスクは、己がブレードロッドをかわした筈の時間をも圧縮されてしまい、源次郎からの攻撃をかわした事実も消されてしまっていた。
 いうなれば、デスマスクは己の攻撃は必ず外され、逆に防御は必ず失敗するという負のスパイラルに陥れられてしまい、完全に一方的な展開へと持ち込まれてしまっていたのだ。
 これまでデスマスクのあまりの無敵ぶりに散々頭を悩まされてきたコントラクター達は、立場がものの見事に逆転したことで、却って複雑な思いを抱く有様であった。
 ともあれ、一同はまるで無人の野を行くが如く、あっさりと中庭に到達した。
 中庭は中庭で、驚く程の数の患者共や白衣の男がたむろしており、それらが一斉に襲いかかってきた。
 ところが――。
「あ、あれ? 敵が、同士討ちを始めた……?」
 ジェライザ・ローズが呆然と、その状況を端的に表現した。
 見ると、一部の患者や白衣姿が、源次郎とコントラクターを守るような陣形を構築し、襲い来る側と激突し始めたのである。
 今や中庭は、腐乱死体同士が互いに食い合い、殺し合うという壮絶な大乱戦へと発展していた。
「源次郎さん……これは一体……?」
「自分、わしの本職が何か忘れてしもたんか」
 逆に問い返されて、ジェライザ・ローズは思わず、あっと声をあげた。
 源次郎の本職とは即ち、細菌兵器を売り物とするテロリストである。
「そうか……レイビーズS2……」
「御名答。さっきブレードロッド振り回してる時に、ついでに打ち込んどいたんや。もうな、自分でやんのも面倒臭いから、ここの連中に食い合いさせた方が早いやろ」
 まるで茶飲み話でもするかのような呑気さで、源次郎はしれっといってのけた。
 そうこうするうちに、四人は中庭を通り過ぎて正門前へと到達した。
 ここでルカルカが眉間に皺を寄せて、小首を捻る。
「ここから、どうやって出るんだったっけ。前は気絶したから、あんまり覚えてないんだけど」
「自分らには分からんやろうけどな、この門の狭い一角……丁度、人間ひとりが通れるか、ちゅうぐらいの隙間に、外界に抜ける空間の繋がりがあるんや。他は全然空間自体が途切れとるから、わしの時空圧縮でも抜けられんのやけどな」
 曰く、その狭い一角を縫うようにして時空圧縮による空間削除を行えば、この恐るべき闇の世界から脱出可能なのだという。
「面倒臭いから、一発で行くで。自分ら、門に対して真っ直ぐ並びぃや……えぇか、ほな、いくで」


     * * *


 気が付くと、一同は夕暮れの廃墟前に佇んでいた。
 振り向いてまず目に飛び込んでくるのは、あの脱出不可能な病院の、荒れ果てた姿であった。
 門の外から内部を眺める限りでは、デスマスクも、そして患者や白衣の男達といった敵も、一切存在していないように見える。
「まぁ、そらそうやろ。居てる空間がちゃうねんから」
 同じように脱出を果たした源次郎が、さも当然といわんばかりに小さく肩を竦めた。
「コントラクターに対しては、絶対的な威力を発揮する夢の空間、みたいなもんやなぁ。いうたら、夢想攻撃空間っちゅうとことちゃうか」
 だが、源次郎は我知らずその空間内に吸い込まれてしまったものの、本来の戦闘能力は一切失われていなかった。
 その点が、コントラクター達との決定的な違いであった。
「ということは、あの空間内で能力を制限されるのはコントラクターだけに限られる、ということか」
 ジェライザ・ローズは腕を組み、真剣な面持ちで唸った。
「空間全体がひとつの巨大なPキャンセラーといえなくもない、ということですか。それにしても、一体誰が、そんな空間を創ったんでしょう?」
「知らんがな、そんなもん」
 ザカコの問いかけには素っ気無い態度を示したものの、しかし源次郎はこの謎の空間に、幾らかの興味を抱いている様子でもあった。

「もっかい、入ってくるわ」
「……えっ?」

 いうが早いか、源次郎はその場から忽然と姿を消した。
 恐らく本人がいうように、再び時空圧縮を駆使して空間を跳躍し、あの悪夢のような惨劇の舞台へと乗り込んでいったのだろう。
 残された三人は心配するというよりも、ただただ、呆れるしかなかった。





『ホスピタル・ナイトメア2 了』

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

ご参加いただきました皆さん、お疲れさまでした。
3人のマスターによる、脱出系ホラーシナリオはいかがだったでしょうか。

本リアクションは複数のマスターにより執筆されていまして、それぞれの担当は以下のようになっております。
  01ページ〜05ページ 地下1階担当 寺岡志乃GM
  06ページ〜08ページ 地上2階担当 保坂紫子GM
  09ページ〜14ページ 地上3階担当 革酎GM
  15ページ         エンディング担当 革酎GM


ここからは、各担当マスターからのコメントとなります。

■寺岡志乃GM
 初めに言っておきます。(あれ? 終わり、か?)
 寺岡の英語能力はひどいものです。
 「ん? 何これ? 読めない?」と思われてもいたしかたなし。雰囲気を楽しんでいただけたらと思いましてチャレンジしました。
 そういう場合も笑って許して、フィーリングで理解していただけましたら幸いです。
 タケシは……ヒントが分かりやすかったのか、すぐ見つけられちゃってましたね。
 今度こういった「どちらか」を出す場合は、もうちょっとひねりたいと思います。
 最後に。
 わたしの「合同がやりたい」との提案に快く乗っていただけました保坂GM、革酎GM、ありがとうございました。


■保坂紫子GM
 ご参加ありがとうございました。保坂はホラー初めてでして、ドキドキしながら執筆していたのですが、気づけば「あれ、ホラー?」な状態でして、どこまでお返しできていたのか、もう祈る他ありません。
 また、革酎GM、寺岡 志乃GM両名には本当にお世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。有難うございました。


■革酎GM
 三階を担当しました革酎です。
 このたびはご参加頂きまして、ありがとうございました。

 もっとちゃんとホラー色を出そうと思ってたんですが、源次郎が出てきた瞬間、ただのB級スプラッタになってしまいました。
 もうちょっと弱いNPCにすれば良かったですね。

 蒼フロではもう一回ぐらい、シナリオを担当することがあるかも知れません。
 その際はまたどうぞ、宜しくお願い致します。

 それでは皆様、ごきげんよう。



 ここまでご読了いただきましてありがとうございました。
 脱出系ホラーシナリオ『ホスピタル・ナイトメア2』はこれにて終幕とあいなります。
 各マスターの次回作をお待ちいただけましたなら、幸いです。