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■ 1日目(1) ■
某所。
「七夕まつりねぇ……本当に懐かしいですねぇ」
連絡を受けてから一ヶ月程。
半分ほど開けた玄関を眺め、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は思い出に浸る。
生まれ育った本国には七夕自体が無くて知らなかった風習だが、日本に来た時に参加する機会があって、その時は大変楽しく家々を回った記憶があった。
訪問しやすいように半分ほど開けられた玄関。
軒先に飾られている笹。
太陽が傾ぎだした夕暮れ特有のあのわくわくする空気。
浴衣や甚平に着替えて、あちらこちらへの移動。
空だった袋が、だんだんと膨らんでいく達成感。
時間が経つごとに共に歩く仲間は増えて、歌う声は合唱に大きくなる。
あちらこちらで聞こえる歓声。
家路につくよりも次の家に向かうのが目的で、
帰りたくなくなる。
「竹に短冊七夕祭り 多いは嫌よ ローソク一本頂戴なー くれなきゃ顔をかっちゃくぞー」
歌うごとに、お菓子は増えていく。
「よく来ましたねぇ、お菓子はちゃんと用意してますよぉ」
歓迎に笑顔で迎え入れて、レティシアは今朝手作りしたばかりのクッキーやおせんべい等が入った袋を一人ずつ手渡していく。
レティシアの隣りではミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)がこちらも手作りのキャンディやチョコレートを渡していく。
「ありがとうございます」
はにかみながら、お菓子に興奮し満面の笑顔を浮かべる子供達にミスティは自然と顔を綻ばす。
「あちきも集めて回ったものですよぉ」
「ほんとう!」
体験したことがあると聞いて子供達は食いついた。
「このくらいの、ですねぇ」
とレティシアは両手で大きさを示す。
「袋が二つくらい、集まったものですぅ」
そんなに沢山と驚く子等に、
「あっという間に集まるんですよぉ」
嘘じゃないとレティシアは頷く。
子供達が期待に沸き立ったのは言うまでもない。
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