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 第2章 アーデルハイトとアルバ・フレスカ

■□■1■□■ アーデルハイト様ごめんね?

「ふふふ、リア充どもめ、制裁を受けるがよいのじゃ」
そんなことを言いながらパーティー会場を見渡すアーデルハイトの元に、
神代 明日香(かみしろ・あすか)がやってきた。
「アーデルハイト様ごめんね?」
本当に申し訳なさそうに明日香は言う。
「な、なんじゃ、自首か!?」
「合コンの時にエリザベートちゃんと一緒に居たのは私なんです。
完璧な変装で判らなかったのも仕方ありませんね」
「いや、誰が見てもお前だと……」
「いいんです! 私が悪いんですから!
ちょっと悔しがらせようと魔がさしただけなんです」
「おい、こら……」
「まさかこんなに大人気なく嫉妬に狂うとは思わなかったのです」
「だ、誰もお前に嫉妬など……」
明日香は、アーデルハイトににこにこ笑いながら言う。
今回もまた演技であった。
「お詫びと言ってはなんですが、丁度ホワイトデーですしクッキーを差し上げます。
これで仲直りできますね?」
明日香は、アーデルハイトに無理やりクッキーを渡した。
「って、これは購買で売っているクッキーじゃろうが!
値札もついておるぞ! もともと値段など知っておるが!」
「はい、これはエリザベートちゃんの分ですよー」
「わー、きれいにラッピングされてますぅ」
「おい、私への謝罪がメインじゃなかったのか!?」
「さて、アーデルハイト様にも許していただいたことですし」
「別にまだ許すとはいっとらんぞ!?」
「え? 『自首』した人は全員、アーデルハイト様とアルバ・フレスカさんに許してもらえるルールですよね?」
「こ、こいつ……」
わなわなとふるえるアーデルハイトを尻目に、
明日香はエリザベートに目線をあわせる。
「じゃあ、エリザベートちゃん、また、ヴァイシャリーの街へ繰り出しましょう。
美味しいお料理やスイーツをまたご一緒しましょうね。
アーデルハイト様の許可もいただきましたし」
「こら、私は許可を出し取らんぞ!
子どもがこんな深夜に出歩いたらいかん!」
「許してくれるって言ったんですから、
怒っちゃダメですよー。
それに、エリザベートちゃんに八つ当たりですか?
大人気ないですよ?」
「大ババ様、大人気ないですぅ」
「お前ら……」
歯ぎしりするアーデルハイトを置いて、明日香とエリザベートは手をつないで行ってしまった。

★☆★

そうしていると、
アーデルハイトの身辺警護にやってくる者達がいた。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)であった。
「アーデ、ロイヤルガードとして護衛をさせていただくわ」
にっこり笑うルカルカだったが、
ザカコはアーデルハイトの頭をゲンコツで殴る。
「いたっ!? 何のつもりじゃ!」
杖を振り回すアーデルハイトだが、ザカコは言う。
「他校まで巻き込んで、何をしてるんですか!」
「これは、私達が企画した合法的なイベントじゃぞ!」
「何言ってるんです、大ババ様にも魅力がたっぷりあるのに、こんなこと……」
「私に魅力?」
ザカコの発言に、アーデルハイトの杖が止まる。
「大ババ様のことをつるぺたという人がいますが!
胸なんて飾りです! 外見しか見ない人にはそれがわからないんです」
「な、何を……」
「性格が子どもっぽいという人もいますが!
そこがかわいくていいじゃないですか!
性格がババっぽい時もあるという説もありますが、そこがギャップというものです!」
「おい……」
「あと、自分は別にロリコンではありません!
校長にはそんな感情はないですし、大ババ様だけです!」
「お前、それは褒め言葉と受け取っていいのか……?」
合法的にけなしとるんじゃなかろうな、とつぶやくアーデルハイトだが。
「もちろんです!」
ザカコはひざまずいてアーデルハイトの手を取る。
「ちょっと事情がよくわからないけど、
ひとまず、ザカコさんとアーデも仲直りってことよね?
ということで、一緒にお茶しながらいろいろお話させてください」
ルカルカは言い、お茶のセッティングを始める。

そんな中、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)も、
アーデルハイトの護衛として近づいていた。
「俺も大ババ様を守らせていただきますよ!
いえ、嫌だと言ってもお傍を離れませんから!」
「クロセル……また、何か企んでいるのじゃろう?」
「いえいえ! めっそうもない!
俺が、そんなに裏のある人物に見えますか?」
「お前に表の面があるかどうかの方が疑わしいわ!」
「はっはっは、これは一本取られました!
ですが、本当に本心から大ババ様を守りたいのですよ!」
そんなやりとりをするクロセルとアーデルハイトだが。