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空京センター街の夏祭り

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空京センター街の夏祭り

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【1】ぶらり夏祭り……1


 空京センター街。
 空京センター街と言えば、第二の渋谷センター街を目指して作られた空京の繁華街のひとつである。渋谷文化を継承するこの街は、日本から来た契約者や、異文化を学ぼうとする大陸の人々でいつも賑わっている。
 そして今日は待ちに待った恒例の夏祭り。たくさんの人間で通りは押しも押されぬ大混雑だ。
 たくさん夜店が出ているが『吹替声冥土喫茶はにぃ☆とらっぷ』はなかでも気になる店である。
 店名だけ聞くとなんだかよくわからん店なのだが、つまりはメイドさんによるかき氷屋さんなのだ。
 しかし元締めは純然たる男子武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)。メイド服は着てない。
「いや、俺が着ても誰も得しねーし」
 ……とのことで、メイド担当は彼の従者たちである、そりゃそうだ。
 接客担当はフリルメイド服の幼女風味な埼玉県民とミニスカメイド服と執事服の事務員。セクシーなのキュートなのどっちが好きなのってなもんである。声を張り上げて呼び込みをするのはウグイス嬢のおねーさん、胸がばいーんと強調された服で実にけしからん。ドジっ子とS系の2人がいて幅広いニーズに対応。また、クーデレ&ツンデレのスケバンのおねーさんがかき氷の受け渡しを行い、そっとお客さんの手に触れスキンシップ、リピーターの獲得にも余念がない。
「よお、そこの毛深いにーちゃんもどうだい? ビールもあるし、今ならメイドさんが注いでくれるよ!」
「あ、ぼくですか?」
 見回りをする空京の賢者ジャングル・ジャンボヘッド(じゃんぐる・じゃんぼへっど)はニッコリ微笑む。
「それじゃレモン味をください」
「あいよ!」
 牙竜の神速回転でガリガリ削られた氷はきめ細かく口当たりも良さそう。
 手渡してくれるスケバンも丁寧に労うJJ。思わずスケバンもポッと頬を赤らめる……、見た目ゴリラだけど紳士。
「見てみてーカキ氷売ってるよー。おにーちゃん、食べてもいいー?」
「いいですよ。待ち合わせにはまだ時間がありますし、少し休んでいきましょうか」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)が頷くとノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は明るく笑った。
「牙竜ちゃん、こんばんはー! えっとねぇ、宇治金時あるかなー!?」
「若いのに渋い舌してんだな、ノーン。オッケー、はにぃ☆とらっぷ特製宇治金時を喰らわせてやるぜ」
 渾身の一食は、まろやかでコクのある宇治茶シロップと甘味を抑えた上質の小豆がふんだんに盛られ実に美味しそう。
「わーい、このカキ氷おいしー……ってあれ、JJちゃんもいるよ? ひさしぶりー元気してた?」
「こんばんは。シボラではお世話になりました。あ、そうだ、お借りした教科書を早くお返しいないと……」
「そんなに急がなくてもいいよー。どうせあんまり使わないし……」
「……こらこら、まったく何しに学校行ってるんですか」
 肩をすくめ、陽太もカキ氷をひとつ注文する。
「よう、珍しいな、今日はカンナのヤツは一緒じゃないのか?」
「ああ、いえ、このあと待ち合わせをしてまして……」
「なんだ、そう言うことかよ。やーアツイね、新婚さんは。うちの店の氷が溶けちまうぜ」
「おや、ご結婚されたんですか。おめでとうございます」とJJ。
「ありがとうございます」とはにかむ陽太。
「ほい、ブルーハワイ一丁。ところでよぉ、例の鉄道会社のほうは上手くいってんのか?」
「鉄道会社?」
「ええ、鉄道王を目指す妻を支えるために『カゲノ鉄道会社』を設立したんです」
「それはそれは……、働き者のご主人を持って、奥様もお幸せでしょう」
「うちはどちらかと言うと奥さんのほうが働き者なんですが……、まぁJJさんにも今度食事がてら紹介しますよ」
 その時、店の前からどっと歓声が上がった。
 牙流の相棒、リリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)による氷像パフォーマンスが行われているのだ。
「うふふふ、あははははっ!! 今宵の血煙爪は暑さで冷たいものに飢えているわっ!!」
 異様なオーラを纏い……もとい、一心不乱に巨大な氷柱をガリガリ削っていく。
 ブオオオオンと唸る血煙爪。火花を散らしながら、だんだんと現れていくものは……センター街のカリスマ!
「ふぃーっ、これで完成! 名付けて『空京のギャルの女神』よっ!」
 そびえる神守杉アゲハの像に、見物してたノーンもわぁっと拍手を送る。
「スゴイ、スゴーイ!」
「ありがと。またひとつ、アート界に革命をもたらしてしまったわ。うふふ……」
 吹替声冥土喫茶はにぃ☆とらっぷ。センター街入口、レンタルショップ『TATSUYA』の横で絶賛営業中。
「お店は女神像が目印よっ! 冷たいカキ氷で暑い夜をぶっ飛ばしてねーっ!!」