First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
「やはり萌えの象徴たる白いパン…が王道だけど、セクシーさと、使用者によっては甚大な意外性を持つ黒いパン…も裏ボス的存在として見逃せないと思うの!」
「う、うん」
パン…屋にて、瀬蓮は店主のレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)の迫力に押されていた。
「本当に白いパン…の方でいいのね!?」
「うん、美羽ちゃんが引いたのは白いパン…の方だから」
「それじゃこれ、持って行っていいよ!」
「ありがとぉ! あとでまた来るね」
瀬蓮はそう約束すると、白いパン…を持って、走り出す。
「瀬蓮ちゃん!」
パン屋で白パンを貰ってきた美羽が瀬蓮を迎えに来た。
「美羽ちゃん、これも持って行って。どちらかが正解だと思うからー」
「ありがとう!」
美羽は、瀬蓮がレオーナからもらってきた白いパン…も持って、ゴールへと急ぐ。
「待たせたな」
「美味しかった〜」
ダリルが『桜茶屋』で食紅を借りて優子のパン屋に訪れた時には、ルカルカはもう満腹状態だった。
「何やってるんだ」
ため息をつきつつ近づいて。
ダリルはホワイトチョコに食紅で色をつけて、優子が焼いたパンに見事なイチゴ柄を描いて行った。
「うわ」
「お……」
感心しながら、見守っていたルカルカと優子だが。
「あっ、こんなに丁寧に描かなくても大丈夫よ」
「ああ、そうだったな。あともう少しだ」
しかし、作るからには良い作品に仕上げたい。
そんな風にも思ってしまうダリルだった。
「競技始まって賑やかになったねー。あ、これもどうぞ翔くん」
「ん。随分あるな。あまった分は貰って行っていいか? 今日の夕飯にする」
「もちろん! どうぞどうぞ〜」
桐生 理知(きりゅう・りち)は、恋人の辻永 翔(つじなが・しょう)と、花見を楽しんでいた。
張り切って作ったお弁当は、種類も量も豊富だ。
作りすぎてしまって、2人で食べるには多いくらいになってしまったけれど、翔が持ち帰りたいと言ってくれたので、いくつかは痛まないように保冷バックの中に入れておくことにした。
「このサンドイッチの白いパン、普通のパンとは何か違うよな」
「う、うん。パンも自分で焼いたんだよ」
ふわふわで、ほんのり甘味のあるパンに仕上がっている。
「そうか、美味いよ」
「ほんと!? よかったー」
理知は、軽く笑みを見せた翔の数倍の笑みを浮かべる。
「色々な具のサンドイッチあるから、食べてみてね。あと、から揚げもあるよ」
箸でから揚げを摘まんで、翔の口に持っていく。
「はは……」
翔は少し周りの目を気にしながらも、口をあけて、理知が運んでくれたから揚げを食べて、満足そうに頷いた。
そんな中。
「パン…、俺のパン…はどこだー!」
「イチゴ柄〜!」
「白パンー!」
借りパン競争の競技者や支援者達の声が響いてきた。
「パン…? 借りパン競争って、パンを借りてくる競争?」
理知が不思議そうに翔に尋ねる。
「ああ、借り物競争とパン食い競争を合せた競技みたいだ。吊るされてるパンに、借りてくるパンが書かれたカードが入っているみたいで」
翔の説明をふむふむと理知が聞いているところに。
「見つけたぞ! 世界の為に、キミの生パンをくれーーーえ!」
黒縁眼鏡の少年が、カードを手に飛び込んできた。
手にているカードには『美少女の生パン』と書かれている。
「生パン? このサンドイッチ生パンの部類に入るかな……多めに作ったから、どうぞ」
理知はサンドイッチを少年に差し出した。
「これじゃなーーーい!」
と言いながらも、理知のサンドイッチをむしゃむしゃ食べ始める少年。
「ひみの、ほのなかにある、ほやほやの生パンッだ!」
サンドイッチを食べながら、少年は理知のスカートを指差す。
「え? こんなところに、パンなんてないよ?」
「ある! 多めにあるのなら、1枚くらいもらってもいいよな〜。げへへへへっ」
変な笑みを見せると、少年は理知に飛び掛かってきた。
ゲシッ
少年の手が理知に触れるより早く、翔の足が少年の顔にめり込んでいた。
「理知のパンは俺の物だ。カード指定の生パンは、パン…屋でもらってこい」
「ふ、ふわーい。うううっ。俺の生パぁン……!」
顔を真っ赤に染め、少年は退散していく……。
「あ……ええっと、パンって理知が作ってくれた、サンドイッチのことだからな?」
翔が少し慌てたように、きょとんとしている理知に言う。
「うん。あ、翔くん、夕食用に持って帰ってくれるんだっけね。あげちゃだめだよね」
「はは……そうそう」
くすっと翔は笑って、理知が作ってくれたハムとサラダのサンドイッチを、また一つ美味しそうに食べ始めた。
「どなたも頑張ってください〜。食べられるパンは、ロイヤルガード隊長のパン屋さんに一通りそろっているそうですよ〜」
持ってきた餡パンを食べながら、ユーリカは借りパン競争参加者達を応援する。
「ユーリカの作ってきたこのパンは、競争の指定にはないと思うけれど……」
近遠は、ぱくっと、パンを食べながら少し疑問気な表情を浮かべる。
「お花見とパンって、微妙に合わない気がしますね……」
「そうでしょうか? サンドイッチとか合いそうな気がしますけれど」
「ああ、確かに。それはそうですねー」
「花を見ながら楽しく食べられるものなら、何でも良いのでございましょう。こちらの団子もどうぞ。桜茶屋というお店で買って参りました」
戻ってきたアルティアが、シートの上に団子を置いて、飲み物を仲間達に配る。
「ありがとうございます。甘いパンには、お茶が合いますね」
「我も戴こう」
近遠と、イグナは緑茶を受け取ると、一口飲んでほっと息をつく。
「あたしも、団子いただきます。桜餡の団子ですわねっ。飲み物は、紅茶を戴きますわ」
ユーリカも団子と飲み物を受け取って。
「こちらは、アルティアちゃんの分ですわ」
作ってきた桜餅風の、米粉とさくらんぼの餡パンをアルティアに差し出す。
そこに桜の花びらが一枚、振ってきて、餡パンの上にちょこんと乗った。
「ふふっ、心が和みますね」
微笑み合って、団子とパンを、それぞれ口に入れる。
「パン競争……誰か出てみます?」
近遠がそう言うと、皆の目はイグナに注がれた。
「ぐっ、ごほっ、ごほっ」
咽てしまいながらも。
「え、遠慮する。ああいったイベントは、見物していた方が楽しめる」
イグナは平常心を装いそう答える。
「そうですか。それはちょっと残念ですね」
近遠は軽く笑みを浮かべた。
「見ているだけでも楽しめるイベントでございますね。見物客も一緒になって探していますから、競技に出ていなっくても、参加者なのでございます」
アルティアが続いている競技を見ながら、そう言って。近くを走っていく競技者に仲間達と一緒に励ましの声をかけていく。
「いっちゃーく!」
「ゴーーール!」
最初にゴールにたどり着いたのは、なななと走ってきたシャウラだった。
ほんの数秒の差で、美羽がたどり着き。
最後に、ルカルカが大作のイチゴ柄のパンを持って、たどり着いた。
あ、ブラヌと黒縁眼鏡の少年は失格になりました。
「ありがとー、なななー!」
「やったー! ゼーさん!!」
喜びのあまり、抱き合うシャウラとななな。
「負けたー。でもなんでだろう、すっごく満たされたわ!」
ルカルカが笑顔で言う。
「失敗作を沢山食べたらしいからな」
「お腹がってわけじゃないもん」
ぷーっと膨れながらルカルカはダリルを見る。
「純粋に楽しかったの」
イチゴ柄のパンを手に微笑むルカルカの頭を……。
「それはよかった」
ダリルは自然に撫でていた。
「ふふ、ダリル、ありがとね! それじゃ、行こー。いい場所とってあるの。食べ物も持ってきたよ」
嬉しそうに歩き出すルカルカ。
彼女の手には参加賞として受け取ったパンとシャンパンがあった。
「ああ、そうだったな。元々は花見に来たんだったな」
「早く早く」
ルカルカは振り向いてダリルを急かす。
「急ぐことはない、歩きながらでも花見は楽しめる」
穏やかな表情で桜を見ながら、ダリルも歩き出した。
「2位だったよ。おしかった!」
美羽は未成年用の参加賞を貰って、瀬蓮のところに戻ってきた。
「2位だって凄いよ、変わったパン…多かったみたいだし」
「ありがと。瀬蓮ちゃんのおかげだよ! 瀬蓮ちゃんがいなかったら、正しいパン…見つけられなかったかも」
「ふふ、美羽ちゃんの役に立ててうれしいなー」
「だから、はい。半分は瀬蓮ちゃんの分!」
美羽は貰ってきた参加賞のうち、既に自分は食べた桜パンと、紅白桜饅頭の白色の方を、瀬蓮に渡した。
「ありがとー。お花見しながら食べよ〜っ」
「うんうん! シャンバラ宮殿が見える方向にしようか」
パン…を手に、飲み物を買って。2人も花見を楽しむことにした。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last