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2023年の輝き

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第1章 家族と共に

 パラミタでクリスマスを過ごす為に、地球から様々な人が新幹線に乗って訪れていた。
 そして、2023年12月24日、18時半――。
 友人や恋人、家族に会いに訪れた人々と共に、紅いコートを纏い、サングラスをつけた青年も空京駅へ到着を果たした。
「お帰り」
「お帰りなさい」
 駅で待っていたのは彼、レン・オズワルド(れん・おずわるど)のパートナー……家族である女性達だった。
「レンさん、長い間お勤めご苦労様でしたー!」
 ノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)が、両腕を広げて、とても嬉しそうな顔で、ものすごく元気に言った。
 途端、歩いていた人々はぎょっとした顔でレンを見て、そそくさと離れていった。
「本当にお勤……」
「違う意味に聞こえるから止めなさい」
 繰り返しレンを労おうとしたノアを、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が苦笑しながら止める。
「ただいま」
 レンはパートナー達に淡い笑みを見せた。
 彼は元同僚の結婚式に出席するために、その準備や所用も含め3カ月ほどパラミタを離れていたのだ。
「さあ、飲むか!」
 ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)は近づいてきたレンの背をバンバンと叩く。
 レンがパラミタを離れていた3か月間も、ザミエルはギルドの仲間達と酒盛りを楽しんではいたが、ペースや強さが合わず、満足できるほど楽しめてはいなかった。
「その前に、買い物をしませんと。レンも、一緒に来てくれますよね?」
 メティスがレンに尋ねると、レンは「ああ」と首を縦に振った。

 クリスマスパーティの買い出しの為に、4人はショッピングモールへと向かう。
 買い出しといっても、メティス達の担当は予約してあるローストチキンとクリスマスケーキの受け取りだけだった。
「イルミネーション綺麗ですね」
 メティスとレンが並んで歩き、その後ろに、ザミエルとノアが並んで続いていた。
 駅前通りの木々にも、道路脇のビルにも、飾りや電飾が沢山つけられていて。
 街路は空の星々のような明かりに、包まれている。
「東京のイルミネーションも華やかだったが……」
 この街のイルミネーションも綺麗だった。
 街を彩るイルミネーションに目を奪われたレンは、自身のサングラスに手をかけて、外した。
 こんな日に、サングラスは無粋だと感じて。
 途端。くすっとメティスが笑い声を漏らした。
「……なんだ?」
 不思議そうに尋ねるレンを見上げ、メティスは微笑む。
「昔からそのスタイル……紅いコートにサングラスで、制服に腕すら通さなかったのに」
 そう笑いかけるメティスに、レンは困惑した表情を見せた。
「昔と比べて、大分変りましたね」
「そうか?」
「ええ、随分柔らかくなったと思います」
 困り顔のまま、レンは少しだけ微笑して。
「そうか……。そうかも、な」
 と、小さくつぶやいた。
 確かに、この大陸に渡った頃に比べたら、自分は変わったのだろう、とは思う。
 レンは過去を捨て、周りと距離を置くことで自分という存在を希薄なものにしてきた。
 いつ死んでも後悔がないよう。
 今を生きる子供たちの為に、自分という大人が代わりに命を掛けるべきだと何度思っただろうか――。
 しかし多くの人との出会いが、捨てたと思ってきた過去の人々が、自分をレン・オズワルドに戻してくれた。
(だから今になって東京に戻ったのだろう)
 過去との繋がりをもう一度確かめる為に――。
 地上の鮮やかな星々を、レンは見回して。
 穏やかな表情で、そっと息をついた。
 死ぬのはもったいない、と。ほんの少しだけ感じていた。
「レンさん、お帰りなさい! それで今日はクリスマスイブです。クリスマスイブですよ? クリスマスなんです!」
 後ろを歩いていたノアがレンの前に飛び出て、笑顔を見せる。
「わかってる。持ってきたさ」
 言って、レンは大切なパートナー達に、プレゼントを渡した。
 メティスには、新しい一眼レフカメラ。
 ザミエルには、高級な日本酒。
 そして、ノアには、大きなスケッチブックを。
「うわあ、描き応えがありあそうです」
 ノアはスケッチブックを手に、大はしゃぎ。
「あっ、すみません!」
 通行人のカップルにぶつかってしまい、深く頭を下げて謝罪する。
 カップルは笑顔で許してくれた。
「開くのは、家に帰ってからじゃないと駄目ですよね。まず何を描こうか……迷います。ありがとうございます、レンさん!」
「私も、何から撮ろうか迷います。ありがとう、レン」
 ノアとメティスがスケッチブック、カメラを手にレンに礼を言い、レンは穏やかな顔で頷く。
「さて、酒のつまみも買って帰ろう。この酒は後で呑もうな。私の秘蔵っ子のワインも出してもいいぞ」
 ザミエルがレンの手から、荷物をとって自分の肩にかけながら、先を歩く。
「あ、私も荷物持ちます〜」
 そう言うノアの頭を、ザミエルはペンッと叩く。
「おまえの身長じゃ、荷物引き摺るだろ」
「うー……っ」
 先を歩き始めた2人と。
「行きましょう」
 そう微笑みを向けてきたメティス――3人の輝いている女性と。
 きらきら煌めく美しい世界に。
「メリークリスマス……今日をありがとう」
 レンは心からの感謝の言葉を述べた。