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2024種もみ&若葉合同夏祭り開催!

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2024種もみ&若葉合同夏祭り開催!

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◆昼の部


カラフル市場をそぞろ歩き

 パラ実分校種もみ学院と若葉分校が主催する合同夏祭りは、晴天の下、開催された。
「昨日は嫌な雲があったから心配してたけど、晴れて良かった」
 種もみ学院のチョウコが眩しそうに青空を見上げた。
 同じく種もみ学院のカンゾーと、若葉分校のブラヌ・ラスダーも晴れ渡った空を見る。
「いい祭りになりそうだな。ナンパ日和だ。へっへっへ……」
「カンゾー、いい女の子捕まえたら俺にも紹介してくれよな」
「ブラヌ……おまえ、全然懲りてねぇな」
 ブラヌはハッとして辺りをキョロキョロと見回した。
 妻はいないようだ。
「じゃ、じゃあ俺はもう行くな! また後でな!」
 ブラヌはドキドキする胸を押さえつつ、おそらく妻がいるだろうほうへ走っていった。
 彼のうっかり発言を録音した小型録音機だが、それでよからぬことをしようという気はカンゾーにもチョウコにもまったくない。
 そして、カンゾーはフリーマーケットのほうへ、チョウコは特にあてもなくそれぞれに分かれていった。

☆ ☆ ☆


「さあ、そこの可愛いお嬢ちゃんたち! 今ならなななななんと! たったの1G! 1Gでこの屈強の四天王候補が手に入ります。はい、買った買ったー!」
 メガホンを手に、パラ実生が自分達を売り出している。
「ロイヤルガードの仕事に役立ちそうかな?」
 円・シャウラ(まどか・しゃうら)が共に訪れた伴侶のパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)に尋ねた。
「……どうかな? 宮殿には、つれて、行けないかも……」
 パッフェルが特攻服姿のモヒカンパラ実生を見て首を横に振る。
「だよね。それに多分、購入と同時にオプションに沢山加入しなきゃならなそう……」
「違う契約書に、サイン、させられたり……」
「そうそう、キマクや大荒野は怖いところ、気を付けないとね!
 ちゃんと掘り出し物見つけないと」
 その怪しげな1Gショップを避けて、2人は歩いて行く。
「そういえばさ、ボク種もみ学院にも友達ができたんだ。今度一緒に牧場でもゆったりと見に行く?」
「のどかな場所? 円と、ゆっくりできる」
「うん。ゆっくりもできると思うし、そっち方面に友達が出来たから、お勧めスポット紹介できると思うよ!」
 円がそう言うと、パッフェルは行きたいというように、首を縦に振った。
「それじゃ、楽しみにしててね」
 明るく会話をしながら、2人は色々な店を見ていく。
 川原や海岸……道端やどこかの家の庭から持ってきたと思われる石を売っている店や、無料引き取りサービスで集めてきたと思われる、良く分からないパーツの店、古改造バイク屋や、古エロ本屋など、普通に近い店もある。
「ボク達、お店始めたしさ、こういうところでいい物を掘りだせるようになるとほら、カッコイイ店主とか、出来る店主とかになるじゃない!」
 円は張り切って、なんだかよく分からないパーツを、手に取ってじっと見つめる。
「……円、それ、サバゲーショップで、使えるもの?」
「いや、うちの店では使えないかもだけど。ほら、鑑定眼ってヤツを鍛えても面白いよ。
 使えるものもあるかもしれないしね!」
 と言って、円はパッフェルの腕に自らの腕を絡めて、次の店へスキップするような足取りで歩いていく。
 そうしてトレジャーハントで宝探しをしている気分で、2人は楽しく店を見て回っていた。

「暑い夏こそ、パワードスーツ! 新作のパワードスーツはいかがですか!!」
「ん……この声は」
 円達は聞きなれた声に足を止めた。
「付属パーツに、手作りスーイツもあります! 是非お立ち寄りくださーい!!」
「ロザリン……」
「……」
 そう、声の主はパワードスーツ販売員、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)である。
 掘り出し物はなさそうだと思いながらも、友人の店なので、円とパッフェルは立ち寄ることにした。
「円さん、パッフェルさん、買いにいらしたのですね!」
 2人を見つけるなり、ロザリンドは2人が挨拶をする間も与えず、目を輝かせて弾丸セールストークを始めた。
「見てください、このパワードスーツを! 夏らしさを演出するため、胴体に海の絵をプリントいたしました。
 付属パーツその1として、背中のバックパックにクーラーボックスを背負えるよに籠パーツをご用意しました。
 その2は何と! パワードスーツのままビーチにいても違和感のないよう、スーツの上から着られる水着!
 セクシーさに注目の的になること間違いなしですよ!」
「うん……注目の的にはなると思う。別の意味で」
 苦笑しながらの円の言葉にパッフェルもうんうんと頷く。
「さあ、円さんたちも、種もみ学院の皆さんも、若葉分校の皆さんも、この夏はパワードスーツの優雅なひと時を!」
 ロザリンドは精力的に呼び込みを行っていた。
 ただ何故か、遠くから見ている人や、目を留める人は多いのに立ち寄る客はほとんどいなかった。
「スイーツもありますよー! 夏の暑さも吹き飛ぶホットさ『ホットオーシャンケーキ』」
 クーラーボックスうの中に入っていたのは、赤くて白くて黒い物体だった。
「ロザリン、これ……材料は?」
 恐る恐る円は聞いてみた。
「スポンジは、ハバネロや辛子を沢山練り込んで焼きあげました。生クリームには塩を沢山混ぜて、うねりを入れ、高波を表現しています。
 そして、トッピングのこちらは、黒こしょうを固めて作ったサーフボートです。
 クールにホットなケーキなのです!」
「は、はあ……」
「………………………………」
 円は足を後ろに引き、パッフェルは無言でロザリンドがケーキと言っている物体を眺めていた。
「パワードスーツとスイーツのコラボ。これぞこの夏のブーム、パワードスイーツですよ!
 皆さん、遠慮なく試着と試食を!」
「ろ、ロザリンここ、と、トイレすくないし……えっと」
 強引に試食を進めようとするロザリンドを、泉の水を汚すわけにはいかないと、円は一応止めようとした。
「円さん、大丈夫です。
 円さんはお友達ですし、ちゃんと1ホールとっておきますから、お土産にお持ち帰りになって、ゆっくり味わってくださいね」
「……い、いやボクたちはいいよ。やっぱり皆に振る舞ってあげて!」
 しかし円はあっさり考えをかえた。自分とパッフェルのお腹を守るために、他の客に犠牲になってもらうことにした。
「お菓子作り、桜井校長に、習ったら、どう?」
 決してまずそうだとか、食えないとかは言わず、パッフェルはやんわりとケーキの試食を拒否りながら言った。
「……校長、ラズィーヤさんの件で倒れたりで、忙しいのです……。
 そうですね、一緒にケーキを作ったり、お2人のように楽しみたかったのですが、仕方がない、です」
 ロザリンドは少し寂しげに言った。
「んー、それじゃさ、お店閉めて、一緒に遊びに行かない?
 ……パッフェルもいいよね?」
 円がパッフェルに尋ねると、パッフェルは直ぐに首を縦に振った。
「その方が、きっと皆、嬉しい」
「お邪魔じゃなければ……私も少し見物したいなと思っていましたので。
 あ、やはりお礼にこのケーキを……」
「ケーキは置いていこう! ロザリンは大歓迎だけど、ケーキは邪魔なんだ。あ、荷物は少ない方がいいという意味でね」
 円はケーキを押し返した。
「それでは……すみません、店番頼みます! こちらお礼として差し上げますので」
「え?」
 ロザリンドは通りかかった見知らぬモヒカンにケーキをプレゼントした。
「参りましょう。校長へのお土産になるようなものが、あるといいのですが」
 そして円に笑顔を見せて、一緒に歩き出した。
「……ロザリン、校長にはパワードスーツ着せたり、ケーキの差し入れしたり、しないんだね」
「……こ、校長には……可愛い水着や、辛くないスイーツが良いと思うのですよ。他意はありません。
 さっ、行きましょう。あちらのお店には可愛い家具がありますよ」
「え? あ、あのテーブル、店で使えるかも」
 円は折り畳み式で棚のついたテーブルに目を留めて近づいた。
「……店の雰囲気と、合い、そう」
「洋服もありますね。円さんたちに似合いそうな、可愛らしい服も」
「校長にもね!」
「……はい」
 リサイクルショップのような、家具や家電、色々な雑貨が置かれている店に、3人は歩いて行き、楽しくお買いものをするのだった。
 ちなみにロザリンドが作ったケーキを受け取った善良な一般モヒカンが、その後どうなったかは誰も知らない。

○     ○     ○


 フリマで買ったラムネを飲みながら、リン・リーファ(りん・りーふぁ)ゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)と共に、店を見て回っていた。
「なんかこうして一緒に遊ぶのちょっと久しぶりだよね?」
「だなー」
「この間の遠足には、ぜすぴょん……じゃなかったぜすたんいなかったしねー。来るって言ってたのにー」
 リンはにっこりと良い笑顔を浮かべた。
「……」
「あたしはねー兎にエサあげたりしてたよ。
 兎かわいいよねー」
 さらにとっても良い笑顔を浮かべるリン。
「……小動物、可愛いよな……」
 ゼスタはどこか遠くを見つめていた。
「ふふふ、今度は一緒にいこーね」
「……」
「……」
「……おい」
 ぽん、とゼスタがリンの頭に手を乗せた。
「こら、わかってるくせに。……誰にも言うなよ」
 恥ずかしいから、と小さな声で続けたゼスタに、リンは満面の笑顔で頷いてみせた。
「あっ、でもそういえば」
 リンはゼスタをじろじろと眺める。特に頭。
「ぶたれたり投げられたり、引っ張られたところ大丈夫? はげてない?」
 ぜすぴょんは子供達に弄ばれ、リンのパートナーには凄まじく悪戯されたのだ。
「見ての通り、なんともない」
「そっか、それならよかった」
「痕でも残ってりゃ、証拠写真を手に迫れば、代償として未憂チャンの血、もらえたかな〜」
「吸血すると、にょきっと髪生えるの?」
「いや、生えねぇけど……! あーやっぱハゲは勘弁。なんともなくてよかった、うん」
「うん、そうだね」
 言って、2人は笑い合った。
「あの時……ああ、今日もだけど」
 リンはゼスタが若葉分校生が設けたテントの方に目を向けた。
 そこには、魔女のリーアの姿がある。
 ドリンクの販売をしながら、カメラを手に写真を撮っているようだ。
「リーア、最近よく写真撮ってるだろ?」
「うん」
「どうやら、魔法効果のある現像液を開発したらしい。ネガをその現像液を使って現像すると、元の姿の写真が出来上がるそうだ。しかもそうして現像した写真を、部屋に飾ってるとか……」
「……ん? とゆうことは」
 リンは遠足の日のことを思いうかべる。
 自分はともかく、パートナーの未憂が駄々をこねている写真があったりするんだろうか。
「近いうちに、盗りにいくぞ」
 ゼスタが暗い笑みで微笑んだ。
「ぜすたん、笑みが怖い」
 言いながら、未憂に髪をちぎられそうになっているゼスタの姿を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。
「でもま、可愛いリンチャンの写真、欲しい気がするなー。
 というか、外見10歳成長したリンチャンの姿とかも見てみたいぜ……」
「もー、いつまでも子供の姿でゴメンね!」
 笑いながらリンはぱしっとゼスタの背を叩き、ゼスタも笑顔を浮かべた。
「おっ、わたあめ自分で作れるみたいだ、やってみよーぜ」
「ポップコーンも売ってるね。両方買おうか」
 空になったラムネの瓶をゴミ箱に捨てて。
 リンがポップコーンを注文している最中に、ゼスタがわたあめを作る。
 そして、分け合って一緒に食べながら歩いて行く。
「そういえば、総長さん見かけないねー」
「あ……神楽崎は、まだ本調子じゃなくてな」
「よく知らないけど、なんかいろいろ大変だったんだってね」
「まあ……」
 ゼスタの表情がやや暗くなった。
 遠足の話の時とは違い、若干深刻そうな顔だ。
「……以前とは逆だねー。水仙のあの子やぜすたんは体調崩してないの?」
「へーき。かなり危ない状態だったみたいだが、生死をさまようほどじゃなかったようだ」
「そっか、でも何ともなくても気になるよね。パートナーなんだから」
 ゼスタは返事をしなかったが、表情から優子のことをとても気にかけていることが読み取れた。
「パートナーじゃなくても。
 総長さんはそんな風に思われてるって知らなくても、総長さんの力になりたいって思ってる人はきっと多いと思うから、なるべく早く元気になるといいねー」
「……ああ。あいつは無謀なところがあるからな。
 立場上、無茶を承知でやらなきゃなんねーこともあるだろうけど、あいつは無茶な事を好んでやる傾向もあるからなー。
 今はまだ、死なれちゃ困るんで、しばらくベッドで寝込んでてもらいたい、とも思う」
「そっか」
「ん……」
 大きく息をついたあと、ゼスタは笑みをリンに向けた。
「気持ちの面についてはさ、俺やアレナが元気ならあいつの中にもパワーが湧いてくると思うから、俺らはめいっぱい楽しむべきなんだ。
 というわけで、今日の残りの時間も、最高に楽しもうぜ!」
 ゼスタの言葉に、リンも笑顔で頷く。
「夜には打ち上げ華美やるんだってね。ぜすたんも打ち上げてもらったら?
 がんばってキャッチしに行くよ」
「その細腕で? ははは、地面に突き刺さんのはいやだー。飛ぶのはリンチャンに譲る! ちゃんとキャッチしてやるから、楽しんでこいよ」
「それもいいけど……それは他の子でも出来ることだろうから。
 やっぱりぜすたんをキャッチしたいかな!」
「それじゃ、一緒に飛ぼうぜ。俺には翼あるし、リンチャンは空飛ぶ箒持ってるだろ?
 打ち上げられた後は、空中散歩だ」
「それもいいかもね! あたしを先に打ち上げてもらって、後から打ち上げられたぜすたんのところに急行して、後ろに乗せるとかどう?」
「よし、それでいこう」
 笑い合い、夜まで遊びつくすプランを考えながら、リンとゼスタはめいっぱい楽しんでいくのだった。