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嘆きの邂逅~闇組織編~(第5回/全6回)

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嘆きの邂逅~闇組織編~(第5回/全6回)

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 鳥丘 ヨル(とりおか・よる)は、百合園女学院と連絡を取るため、研究所の近く、携帯電話が通じる辺りまで来ていた。
「出来るだけ止めたいとは思ってるんだけど、数も多いし結構そっちに向っちゃうと思うだ。避難の必要のない生徒や街の人達には絶対に外に出ないように言っておいて」
 ヨルは百合園の事務員にそう頼んでいく。
 できれば貴族など発言力のある人達に呼びかけに動いてほしいとも伝えておく。
 それから、パートナーのカティ・レイ(かてぃ・れい)と一緒に、高台へと走る。
 分校のパラ実生達と協力したかったのだけれど、ヨルはどう言葉をかけたらいいのかわからなかった。
「職業を紹介するところとか、酒場とか、皆が集まりやすいところ別に作ってあげられればいいんだけどな。といっても、ボクにそんな権限ないから、提案してぬか喜びもさせられないしな」
 ふうとため息をつく。
「ニリューアルした酒場は、確かに胡散臭かったけど襲撃したのはやりすぎだったかも……。とはいえ、和解の方向で進んでいるみたいだから上手くいってくれることを祈るだけだね」
 カティがそう言い、ヨルは頷いた。
 翼を生やしたキメラが研究所の方から現れる。
「さて、キメラか」
 カティはディフェンスシフトでヨルを守る。
「無事終わったら、皆と美味いもんでも食いに行きたいね」
 言いながら、カティは武器を抜く。
「うん。ともかく、キメラを迎撃して少しでも食い止めないと!」
 もっと研究所に近い場所でも狙撃が行われているようで、傷を負っているキメラも存在するようだ。
 ヨルは機関銃で、キメラに攻撃を加えていく。
「……無理矢理違う生き物と掛け合わされるってのは、どんな気持ちなんだろうね」
 そんなことをいいながら、ヨルが撃ち落したキメラの元に、カティは駆ける。
「きっと、苦しいんだろうな」
 小さく呟きながら、薙刀を振り下ろす。

「何があったんですか!?」
 橘 綾音(たちばな・あやね)は落ちてくるキメラに驚きつつ、キメラと戦いながら南の方に向っている少女に声をかけた。
「いや、別に……あ、いやその馬に乗せてもらえないか? 移動しながら説明する」
 言って毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は、綾音の承諾を得るより早く、綾音が連れていた白馬に乗ろうとする。
「は、はい」
 大佐が乗った後、綾音も白馬に乗り南の方へと走らせる。
「キメラを作ってる研究所にヴァイシャリーが目をつけられたようでな。まあ、我の責任でもあるんだが」
 大佐はジィグラ研究所で作られていたキメラがヴァイシャリーに向っていることや、討伐を行っている者がいることを簡単に綾音に説明する。
 大佐の責任というわけではないのだが、一番早くから引っ掻き回したことから、キメラが飛び立つことになった大元の原因は自分なのではないかとも感じていた。
「このままヴァイシャリーの方に向えばいいですか?」
「ああ、途中で合流できるはずだ」
 綾音は白馬をヴァイシャリーの方へと走らせる。キメラより速度が遅く、何匹ものキメラが2人の上空を通過していった。
「お、来た来た。ここまでで結構」
「はい!」
 白馬が足を止め、大佐が飛び降りる。
「乗せろ」
「え? え? どうしました?」
 大佐に呼ばれて、空飛ぶ箒で訪れたプリムローズ・アレックス(ぷりむろーず・あれっくす)は、説明もなく命令する大佐と、空を飛んでいるキメラや負傷して地上で暴れているキメラの様子に、目を瞬かせる。
「説明は後だ。討伐する」
「わかりました。後できちんと聞かせてください。行きますよ」
 大佐を乗せて、プリムローズは空へと飛び立つ。
 そして、キメラより更に上へと飛んだ。
「翼を折らせてもらおうか」
 大佐が箒から飛び降りて、キメラの背に飛び移り、刀で翼を傷つける。
 即座に近くのキメラへと飛び、背や翼を裂いていく。
「とりあえず、落とせばいいんですね!」
 プリムローズは上空から氷術を放って、キメラの翼を氷つかせる。これはかなり有効だった。
 また、群れのキメラにはサンダーブラストを容赦なく打ち込んでいく。
 大佐は痺れ薬を振りまく。動きの鈍ったキメラの背へと飛び、頚椎に刀を刺す。
 頭部が一つではないキメラも多く、心臓の位置がわからないキメラも少なくない。
 狙える時には、急所と思われる箇所に刀を突き刺し仕留めていくのだった。
「落ちてきたキメラは任せてください」
 綾音はキメラの側で白馬から下りると、グレートソードを手に斬り込んでいく。
 手負いではあるが、かなり手ごわい。
 爪の一撃で肩を裂かれつつも、剣を胸に突き刺して仕留める。
「お願いします」
 上空からプリムローズの声が響く。
 続いて、翼が凍りついたキメラがどさりと落ちてくる。
「動き始める前にっ!」
 地面に体が叩きつけられ、動けないうちに、綾音は駆け寄って倒すのだった。

「わっ、なんか凄いことになってるね」
 ヴァイシャリーから駆けつけたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、落ちてくるキメラの数と姿に、驚きの表情を浮かべる。
 病院で襲撃された後から姿の見えない桜井校長のことが気になって仕方がないミルディアだけれど、学校からは出張としか聞かされてなく、手掛かりも何もないので、自分で探しに出ることも出来ずにいた。
「やること、他にもいっぱいあるからね」
 元気を出して、キメラ討伐へ駆けつけたのだった。
「合成生物ですか……でしたら主の意に沿わぬもの。天に還しても問題ありません!」
 和泉 真奈(いずみ・まな)は、キメラを見て、厳しい口調でそして、悲しげな目で言った。
「今出来る最善の道を進みましょう」
 そして、真奈はミルディアにそう言い、ミルディアは素直に頷いた。
「皆、よろしくね!」
 ミルディアが討伐に当たっている神楽崎分校所属のパラ実生に声をかけると。
「無理すんなよー!」
「俺らに任せて分校で休んでていいんだぜ」
「怪我しても泣くなよー」
 次々と反応があった。
「そんなことじゃ泣かないもん!」
 元気に言い返して、ミルディアは傷を負って暴れているキメラに向かい駆けていく。
 ディフェンスシフト、エンデュアで真奈を庇い、防御力を上げてタワーシールドで守っていく。
「こっちには行かせないよ」
 自分の役目は守ることだと思っていた。攻めは苦手だし、白百合団の戦いは主に守る為の戦いだから。
「あたしたちの居場所を、壊させたりはしない!」
 南の方に立ち、ミルディアは盾でキメラを押さえていく。
「主よ、かくあれたく願う我々に道を示し給え……!」
 そう唱えると、真奈はバニッシュを放つ。驚き飛び退いたキメラに、神楽崎分校生が集団でバッドを叩き込み、打ち倒すのだった。
「ありがとうございます」
 ヴァイシャリーを守るためという理由ではないだろうけれど、共に戦ってくれる彼らに感謝をし、真奈はヒールで分校生達を癒していくのだった。

「何なのニャー!」
 クラウツ・ベルシュタイン(くらうつ・べるしゅたいん)は、突如襲い掛かってきたキメラに着ぐるみの腕を破られてしまった。
「1匹ではないようよ」
 アサルトカービンで、喉を撃ちぬいた後、シュネー・ベルシュタイン(しゅねー・べるしゅたいん)は前方を見る。
 うごめくキメラの集団が見える。
 今倒したキメラもだが、全て手負いのようだった。
「空にいるニャー! 誰かが戦って落としているニャー! あっちの方向はヴァイシャリーニャー!」
 怒りながら、クラウツはアサルトカービンを空へと向けて撃つ。
「かなりの速度で飛んでいるわ。闇雲に撃ってもダメよ」
 クラウツを嗜めつつ、シュネーはスプレーショットで、空のキメラの群れに弾を撃ち込んでいく。
 体勢を崩したキメラが、地上に落ちてくる。
「ミーも落とすニャー! ミーのファンになるかもしれない女の子がいる街に向わせるわけには行かないニャー!」
 クラウツもスプレーショットでキメラを攻撃していく。
「こら、闇雲に撃ったら精神力の無駄」
「解ってるニャー! ミーはホットでクールだから、シュネーとも連携するニャー」
 言った後、特に合図をするでもなく、2人は呼吸を合わせて連続攻撃をする。
 クラウツがまずスプレーショットでキメラの群れを撃ち、体勢を崩したキメラをシュネーがシャープシューターで確実に倒す。
「地上にもゴロゴロいるニャー!」
「他にも戦っている人達がいるようね」
 遠くからパラ実生らしい掛け声や戦闘音が響いてくる。
「神楽崎分校生かしら。あそこは親百合園派が多いっていうしね」
 取り逃がしたと思われるキメラが、こちらの方へと走ってくる。
「食い止められるだけ食い止めるわよ!」
 木の陰に隠れながら、シュネーはアサルトカービンで地上のキメラも撃ち倒していく。
「ミーの力を嘗めるニャー!」
 ニャーニャー言いながら、クラウツもシュネーに合わせて、キメラを撃つ。

「そっちに行ったわよ。ライダー男!」
 ブリジットが火術で焼いたキメラが、隆光の方へと走っていく。
「任せろ」
 隆光はシャープシューターで狙いを定めて、キメラの頭部を撃ち抜く。
「大した生命力ね」
 ブリジットは、ライトブレードを手に走りこみ、頭部を失っても動き回っているキメラの身体に叩き込んだ。
「撃ち落す!」
 隆光が頭上を飛ぶキメラに群れにスプレーショットを放つ。
 負傷したキメラがドサドサと地上に落ちてくる。
「うぉぉおおぉおお!」
 分校長代理の竜司がスパイクバイクでキメラをかく乱していく。
「集団で叩け!」
「おー!」
「行くぜ!」
 竜司の指示通り、分校生達は鈍器を手にキメラへ集団で襲い掛かり、頭や体を殴りつけていく。
 骨を砕かれ動けなくなったキメラに竜司が飛び掛り、血煙爪で首を落とす。いくつも首があるキメラは全ての首を落とす。
「今日はキメラ鍋かー! ヒャッハー!!」
 パラ実生らしい歓声や雄叫びを上げながら、分校生達は地上に落ちてきたキメラを確実に倒していくのだった。
「ケガした奴は無理せず後ろに下がれよー!」
 高台から大声で注意を促し、椿はシャープシューターで上空のキメラを狙い撃ちする。
 翼を撃ち抜かれたキメラが、体勢を崩してこちらの方に下りてくる。
「自分たちの巣に帰れ! 大人しく引き返すなら逃がしてやってもいいぜ」
 そう声をかけてみるが、人の言葉を理解するような知能はないようだった。
 暴れるキメラの翼と足を撃つと、椿は駆け寄って縄で縛り上げる。
 キメラといえど、無益な殺生はしたくなかった。
 ただ、そうしている間にも、キメラはヴァイシャリーの方へと向っていってしまう。
 こちらが落ち着いた後には、ヴァイシャリーの援護に行く必要もあるかもしれない。