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リアクション
chapter.2 感染症
同じ頃、蒼空学園。
数日前、学園では新生徒会選挙への立候補を表明した生徒らによる演説が行われた。そして本来ならば今の時間、その投票が行われている最中であるはずだった。
しかし、ふたつの大きな事件が、それを妨げていた。言うまでもなくそれは、学内情報の漏洩に繋がるネットウイルスの感染と、学校そのものの壊滅に繋がるアンデッドの襲来である。
そのひとつ、ネットウイルスによる被害を防ぐため、校長である涼司は一秒でも早く元の状態に戻そうと奮闘していた。
「くそっ……俺がもうちょっとしっかり用心してればこんななことには……!」
校長室のパソコンから不用意にセンピースタウンへ接続したことを、涼司は後悔していた。しかしそうしている間にも、タウン内にある蒼空学園アイコンにはアクセスが増え続けている。優先されるべきは、後悔ではなく前進だった。涼司は、激しい曲を演奏するピアニストのようにキーボードの上で指を踊らせた。
「ウイルスを駆除しても、大本に手をつけないとどうしようもないだろうな……。とりあえず、このセンピースタウンの管理権限のパスワードを探し当てて、直してやる」
息巻く涼司。しかし、そのパスワードを探し当てるということがどれだけ難しいことか、プログラミング能力の高い彼は充分に知っていた。いや、パソコンの素人だとしてもその可能性の低さはすぐに理解できるだろう。26文字のアルファベットを組み合わせて出来る数文字の羅列のパターンなど、気が遠くなるほど存在するのだ。
「分かんない以上、思いつく限り関係ありそうな単語を入れてくしかねぇな」
一旦上を向き、ふう、と一息吐いた後、涼司は再びパソコンに向かおうとする。そんな彼のところへ、話を聞いた生徒がやってきた。校長室の扉を開いて中へと入ってきたのは、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)とパートナーのセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)だった。
「涼司さん、猫の手も借りたそうな様子ですね」
凶司はそう言うと、そのまま涼司のそばまで近づき、腰を下ろした。そして、持ち込んできた自分のノートパソコンを素早く起動させる。
「なんだ? わざわざパソコンまで持ってきて……まさか」
「そのまさかです。貸しに来たんですよ、猫の手を」
涼司の声に言葉を返すため首を動かした凶司だったが、またすぐにその向きを正面にあるパソコンの方に戻した。そのまま、彼は涼司に言う。
「サイバー攻撃の対処は経験したことがあります。パスワード探しはお任せしますけど、被害抑止は任せてください」
「……分かった、頼むぜ」
おそらく少し前までなら、涼司は彼の手助けを拒んでいただろう。人を頼り、任せることに抵抗があった頃の涼司なら。しかしこの何日かの間で、涼司は生徒たちに教えられていた。人は、頼っても良いのだと。困った時に手を伸ばしても良いのだと。だから今も、凶司の言葉を素直に受け入れたに違いない。
「さて、じゃあさしあたってトラップを仕掛けつつ、時間稼ぎでもしましょう」
涼司の返事を聞き、凶司は自分のパソコンにUSBメモリを差した。どうやら中のデータの一部をコピーしているようだ。それを終えると凶司は、彼に質問をした。
「涼司さん、蒼空学園の購買のデータなどがあるということは、タウン内にある学園にデータをアップできる、ということですよね?」
「ん? あぁ、いや、アレは俺がデータを送ってるわけじゃないんだ。ここの購買に商品が仕入れられた時、購買で勤務してる人が定期的に伝票を大学側にいるらしい管理団体に送ってるんだぜ」
もちろん、涼司はウイルスに感染してすぐ、購買経由で管理団体にメールを送っていた。しかし返信メールは、彼の期待に到底応え得るものではなかった。それどころか、さらなる不安と心配を駆り立てる内容だったのだ。涼司が見た返信には、こう書かれていた。
「サイトへのアクセス不能にしようとしているが、管理権限パスワードが改ざんされており現在急ぎ復旧作業に当たっている」
そもそもの権限や問題はどこにあったのか、それを疑問にも思ったが、悠長にそれを考えている時間すら許されない涼司は、止むなく独自でパスワード解析という手段を選んだのだ。
「そうですか……だったら、ちょっと強引な手を使っていくしかないですね」
それでも凶司には何か策があるらしく、うろたえた様子が感じられない。彼はその言葉を口にした後、自身のパソコンからセンピースタウンへとログインした。
「何する気だ?」
「データを上げるのは、何も蒼空学園からじゃなくても良いってことですよ」
言うと、凶司は自身のアバターを動かし、蒼空学園へと入っていった。そこは、既に多くのアバターでごった返しており、この混乱が本物だと証明している。その人だかりの中で彼が打ち込んだ発言で、涼司も彼のやろうとしていたことを理解する。
「なんか蒼空学園がすごいことになってる。ほらこれ」
凶司のアバターから出たその吹き出しには、ファイルが添付されていた。言うまでもなく、さきほどコピーしたファイルだ。
「まさか、それ」
「さすが涼司さんです。見境なくデータを吸い出されそうなら、逆用してしまえば良いんです」
凶司が公開したファイル、それはテープワームという種類のウイルスが仕込まれたものだった。言うなればこれは、凶司が仕組んだ罠である。
「機密データのように見せかけたこのファイルがダウンロードされれば、仕組まれたウイルスがデータを破壊します」
つまり、と凶司は続ける。
「こいつに流出データを破壊させれば、当座の時間は稼げるはずです」
「おぉ……よくこんな手の込んだもの出来たな」
感心する涼司に、「これでも、テクノクラートですから」と画面を見たままぼそっと凶司は呟く。そんな彼の肩をポンと叩き、涼司が礼を言った。
「こないだ会談に同行した時の会話じゃ、ちょっと喧嘩売られてるのかもなって正直思ってたとこもあったけど、良いヤツだな、サンキュー」
「い、いやまあ、疑いをかけられてるならこれ以上の晴らす機会はないなって思っただけです」
あまりに清々しく感謝され、凶司はついどもりがちに答えた。そこに「協力して恩を売ろう」といった打算や他の思惑が見え隠れしていないと言えば嘘になるが、目の前の真っすぐすぎる言葉を正面から受けた少年の、年相応の反応であるともいえるだろう。
「ま、傭兵としては強い者にミカタするのは当然だしねぇ。涼司が強そうに見えたってことよん?」
ふたりの様子を黙って見ていたセラフが、涼司の隣に座って顔を近づけ囁いた。
「ところで、このセンピースタウン? 思ったんだけど、もちろんサーバーがあるのよねぇ? そこを潰しちゃえば早いんじゃない? ほら、物理的に、どっかーんと」
あっけらかんとした口調でセラフが言う。が、涼司は首を横に振った。
「管理団体は大学側にあるんだ。パスワードが改ざんされてるってことは、あっちでもトラブルが起こってるのかもしれないだろ。こっちも緊急事態とはいえ、無事会談を終えたばっかでまたトラブルを起こすのはやばい」
「ふぅん、意外と色々考えてるのねぇ」
「意外って何だよ」
「別にぃ。ま、それならあたしに出来るのは応援くらいだし、ふたりとも頑張ってねぇ」
提案を却下されたセラフだったが、その態度は口にした言葉ほどふて腐れた様子もなく、ひらひらと手を振って腰を上げ、涼司の隣から離れただけだった。
「さて、今のうちにパスワードの候補を絞らねぇとな」
凶司の助力を得て、涼司は再び大きく息を吐いてパソコンへと向かった。
◇
セラフが提案した「サーバーにダメージを与える」というアイディアを思いついた生徒は、実は他にもいた。それは、空京大学の生徒、志方 綾乃(しかた・あやの)であった。
「蒼空学園のアレやこれが100%オフ! あら素敵……なんて言ってる場合じゃないですね」
綾乃は、大学内を走っていた。その目的地は、パソコンルームである。程なくしてそこに着いた彼女は、片っ端からパソコンの電源を入れ、タウンへとアクセスし始める。
「蒼空学園がサイト内で、こんな大変なことになってるなんて。きっと学園側でも対策はしてると思いますけど、私もやれることはやれるだけやってみないと!」
綾乃がここで同時に多くのパソコンからタウンへアクセスした目的、それは、タウンのサーバーに大量の負荷をかけ、落とすことであった。綾乃は思い出す。何日か前に、アクリトとの会話の中で生まれたやり取りを。それは、綾乃が「ゴルディオンの結び目」になぞらえて会談の着地点を提案した時のことだった。
「ゴルディオンの紐だって、解いたのは知恵ではなく力です」
そう言って、彼女は涼司とアクリトのふたりを決闘で勝負づけさせようとした。それに対して返したアクリトの言葉が、まだ綾乃の頭には残っていた。
――ゴルディオンの紐に関する挿話を私は、知恵と腕力の優越を決める話ではないと解釈している。アレは、物事の解決に必要であるのは機転だという話だ。
「つまりは、こういうことですよ……ねっ!」
綾乃は部屋にあるパソコン、その最後の一台をタウンに接続した。自分なりの解釈を進め、その結果辿り着いたこの方法が解決に繋がると信じて。
「……あ、れ?」
が、しかし。彼女の期待していた光景は、目の前に現れなかった。タウンはサーバーダウンすることなく、平然と画面に映し出されたままだったのだ。
「失敗……ですか」
確かに彼女は、スーパーコンピューターの特技を持っており、常人よりその扱いには長けていた。だが、いくらそれを有していようとそもそもその機器が自分の手の届く範囲になければ活かすことは出来ない。いや、仮にあったとしても、センピースタウンという大きなサーバーを彼女ひとりでダウンさせることが可能だっただろうか。もちろん、それを確かめる術は彼女にない。
「こんな時、アクリト校長ならどうするんでしょう」
パソコンルームの窓から、綾乃が外を見る。その視線は、学長室の方角を見据えていた。
「蒼空学園が……山葉君がピンチ?」
その学長室では、アクリトが突如部屋に入ってきた茜の言葉を繰り返していた。
「そう、山葉は今、おかされています!」
「……もっと分かりやすく、順序立てて説明したまえ」
茜のやや危険な発言をスルーし、アクリトが再度詳細を尋ねる。さすがはアクリトをもって「要勉強」と言わせたことだけはある。
「あっ、つい……いや、ついじゃなかった、間違えました! 失礼しました! センピースタウンのウイルスに、山葉のパソコンが侵されてデータ流出の危機らしいんです!」
「最初からそう言うべきだったな。しかし、その話は本当かね」
確認の意味を込めて問いかけた彼の言葉に、茜は首を縦に降った。どうやら蒼空学園が危機に陥っているという話題は、予想以上に早く、広く伝わっていたようである。おそらく茜もそれを耳にしたひとりなのであろう。
「学長、山葉涼司があなたの助けを必要としているのは、今この時じゃないんですかっ!?」
茜は、先日行われた会談の場には居合わせなかったものの、知人からその一部始終を聞いていた。当然、そこで交わされた会話や約束も。
涼司が言った「一度蒼空学園に来てもらって、俺らを見てもらう」という言葉。それに対する「ぜひ足を運ばせてもらう」というアクリトの返答。茜はその時の様子を想像しただけで、興奮に近い感情と身の震えを覚えるほどだった。そして茜は思う。今が、その時なのだと。
「とは言え、ここから学園までは距離がある。私が着く頃には、結果がどちらに転ぼうと騒ぎは終わってしまっているだろう」
涼司がトラブルを無事解決するのか、はたまた汚染されつくした学園が破滅するのか。いずれにせよ、アクリトが涼司の元に着くよりもその結末が訪れる方が早いと彼は踏んでいた。そしておそらくその予想は、当たっている。
「じゃあ、ネットワーク経由で手伝ったりとか!」
「……ふむ、やはりそれが現時点ではベストな選択肢だろうな」
どうにかしてアクリトに蒼空学園を助けさせたいと願い、茜が食い下がると、アクリトはそれに同意した。というよりも、茜から知らせを聞いた時からその選択肢を頭に浮かべてはいたのだろう。アクリトはパソコンを取り出すと、ネットワークを介しオンライン通話のソフトを起動させた。その相手はもちろん、涼司である。
「アクリトか?」
パソコンから聞こえる涼司の声に、アクリトは冷静な声で告げる。
「どうも大変な事態のようだな。手を貸そう」
「……済まねぇ」
学園の危機を前にした涼司は、素直にそれを受け入れた。
「あぁ、そうだ。ついでだから言っとくぜ。さっきこっちの生徒から電話があってな……」
涼司が、アクリトに何かを告げる。そんなふたりの会話を、茜はどこか満足そうに眺めていた。
短い通話を終え、そのままタウン内へと接続しようとするアクリトだったが、それを司の言葉が引き止めた。
「タウン内で抗争の噂に続き、この騒ぎ……やはり、愉快犯の線が濃い気がする。それに、ここまで来ると対岸の火事では済まされないかもしれぬ。万が一を考慮し、アクセスする前に学長のパソコンもウイルス対策をしてはいかがだろうか?」
「……急いては事を、か。一理ある。最新のウイルスチェッカーで常に予防はしているが、今一度チェックをしておこう」
進言を聞き入れたアクリトに、司はもうひとつ質問を付け足した。
「チェックにも少し時間がかかるだろうから、何か飲み物でもお持ちしようか?」
「そうだな、ではコーヒーを頼む」
「承知した。すぐに用意しよう」
言うと、司は携帯を取り出し誰かと話を始めた。通話はすぐに終わり、数分も経たないうちにその話し相手は学長室に現れた。それは、司のパートナーグレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)とヒューバート・マーセラス(ひゅーばーと・まーせらす)だった。グレッグの手に乗ったトレイには、カップに入ったコーヒーと個包装で包まれたクッキーがある。どうやら今しがたの司の電話は、彼にこれを持ってこさせるためのものだったようだ。
「アクリト学長、お待たせ致しました」
会談の時にお茶をこぼしてしまった経験からか、落ち着いた所作でゆっくりとテーブルに容器を置くグレッグ。
「皆さんも、よろしければどうぞ」
グレッグが、周りの生徒たちにもクッキーを差し出した。それでもトレイの上のクッキーは、いくつか余っている。もしタガザが客人として今この場にいれば、彼女にも渡そうと思っていたのだろう。そしてグレッグが部屋の中でトレイ片手に動いていた時、司はヒューバートにこっそりと耳打ちしていた。
「バート、少し頼みがある」
アクリトがパソコンのウイルスチェックをし、グレッグが部屋を歩き回っていたお陰か、誰もその様子には気付いていないようだった。それを確認した上で、司は小声で続けた。
「ネットワークを管理している者のところへ行き、例の書き込みがされた時間に、この大学のパソコンからタウンに書き込みを行った形跡がないか、調査できるか?」
「それは、学長のパソコンも含めて、ってこと?」
「……あぁ、そうだな」
一瞬の間を置いて、司が答える。責任の所在を求めていた彼女だったが、その一方でアクリトへの信頼も決して失ってはいなかった。たとえアクリトが彼女の知らない何かを隠していたとしても、である。
「了解、じゃ、ちょっとお話してきますかねぇ」
ヒューバートはそう言うと、アクリトや他の生徒たちを尻目に学長室から出て行った。
◇
その頃、セルマ・アリス(せるま・ありす)とパートナーのミリィ・アメアラ(みりぃ・あめあら)もまた、抗争をほのめかす書き込みについて大学の中で調べていた。ただし、大学の中、と言っても現実世界のそれではない。彼らが今いるのは、仮想現実――センピースタウンの中の大学である。
「ここが正念場だね、ルーマ」
セルマの隣で、ミリィのアバターが会話ウインドウを開いた。それにセルマが答える。
「会談が上手くいったお陰で、噂のことを引っ張って説得とかは必要なくなったけど……どうも、蒼空学園を脅かすことにこのタウンが度々使われてる感じがするんだよな。嫌な予感がするよ」
件の書き込みが大学から行われたことを聞いたセルマたちは、その存在を突き止めるべくタウン上の大学で情報を集めていた。一通り施設内を見学し終えたセルマに、ミリィが尋ねる。
「もし、噂を流した人に会ったらどうするの?」
「そうだな……なぜそんなことをしたのか、目的は何だったのかを聞きたいな。もちろんそれで追いつめたりする気はないけど、知りたいんだ」
「それが、理解できないような答えでも、だよね」
頷くセルマ。ミリィは思う。きっとそれは、自分の理解の外のことでも、知ることでまた同じような事件が起きた時に、解決する足がかりにしたいのだと。
「うん、じゃあワタシはそのお手伝いをするよ。そしてこの事件を終わらせて、静かな生活に戻ろう」
決意を新たに、ふたりはアバターで大学内の講堂へと入った。そこでは、多くのアバターがあちこちで会話を繰り広げていた。どうやらここが、タウン内の大学での主な発言場所らしい。
「あの書き込みも、この人の多さから考えてきっとここから広がっていったものだと思う。ミリィ、ログとかからアカウント情報を調べられないか?」
「うん、分かった、やってみるね」
セルマの指示通り、ミリィは自身の特技である情報通信を駆使し、数多くのログから目的のものを探し出そうとする。書き込みが行われた日付がそう遠くないことから、ログもまだ生きていると判断したのだろう。
が、しかし、いくら調べても該当する情報は見つからなかった。
「ダメ、か……」
「もしかしたら、もうログ自体流れちゃったのかも」
がっくりと肩を落とすふたり。と、セルマがそこで、何気ない疑問を口にした。
「たとえば、だけど……ログが流れたんじゃなくて、犯人が書き込みを消したんだとしたら?」
「え? でもここって、一度書き込んだことは消せない、よね……?」
「ああ、普通なら消せない。普通なら」
これだけ調べても書き込みの形跡がまったく残っていないことで、逆にセルマはもうひとつの可能性を頭に浮かべた。
普通ではない利用者――つまり、相応の力を持った者の仕業ではないか、と。
そしてその推論を後押ししたのは、管理団体のところで調査依頼をしていたヒューバートだった。
「その時間に書き込まれた発言はない……?」
一瞬、耳を疑うヒューバート。しかし、職員はそっけない態度で同じ言葉を繰り返す。
「はい、該当の時間には、この大学から一切書き込みは行われておりません」
改ざんされたパスワードの解析とバグの対応で急がしいのか、職員はそれだけを言うと奥へと戻っていってしまった。残されたヒューバートが呟く。
「確かにあの書き込みのアクセスポイントは大学って話だったはず……これは、どういうことだろうね」
それに対する答え、までは着かなくても、疑念は沸き上がる。ヒューバートはそれをより確実なものにするため、携帯電話を取り出す。
耳に響く単調で機械的なリズムは、何かの警告音にも思えた。
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