First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
8.果物ゲット!
ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は温室の中を走り回っていた。
季節は冬──暖かい温室でフルーツを食べる贅沢。
タネ子さんやケロベロス君はそっちのけで、フルーツを食べてやります!
ガートルードは、とりあえず目に付く果実を一つずつ、片っ端から口にしていた。
時折聞える悲鳴は無視する。
「何か……ぱっとしないです…」
珍種のはずが、何故か何処かで食べたような味ばかり。
もっと他にこれは──!? という果実は無いのだろうか?
「あれ?」
ガサリと。
大きな葉を掻き分ける音がしたと思ったら、目の前に神名 祐太(かみな・ゆうた)が現れた。
「どうしてこんな所に……って、考えることは一緒か」
口の周りがお互いに果汁だらけになっている。
「珍しい果実を見つけたって思ったんだけど、食べてみると、それほどでもなくてさ……」
「そうそう! 私もそう思っていました」
「一緒に……探すか?」
「いいですね」
笑みを交わすと、一緒に歩き出した。
「──フラフラと歩き回って勝手な行動を取ったら駄目であります!」
「?」
少し離れた場所から声がする。ガートルードと祐太は声のした方へ向かった。
「……管理人さん探しどころじゃないです。こんな所ではぐれたら遭難であります! タネ子やらゲルベロスやらに襲われたり、適当な果物を食べてアタっても知りませんよ??」
口調は強くても、言葉の端々に優しさが感じられる。
大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は、パートナーのコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)に向かって諭していた。
「でも、果物が欲しいです……」
「あなたの護衛をしながら管理人を探すはずだったのに……こんな奥まで来てしまって」
(……えっとぉ、珍種果物で何のお菓子を作ろうかなぁ…)
「フラフラするなんて、まるで夢遊病──…って聞いてるでありますか?」
「え? あ、あぁ、はい」
「嘘ですね……」
「あの」
途端に鋭い視線を向ける剛太郎に苦笑しながら、話しかける。
「おまえ達も珍種果物探しか?」
「いえ、あぁ、まぁそういうことになるでありますかね……」
「人数は多いにこしたことはない。一緒に──」
祐太の言葉を掻き消して、笹原 乃羽(ささはら・のわ)が藪の中から飛び出してきた。
「みんな、みんな! こっち来てこっち! すごいよっ!!」
そう言うと緑の中へと再度戻っていく。何事かと、慌てて後を追いかけた。
◇
「──ここ! なんだと思う!?」
白いテーブル、白い椅子が、いくつも設置されていた。こんな温室の奥深くに。
五人は周りをうろうろして──…そして、見つけた。
「これ……」
コーディリアの言葉に皆が集まる。
見たこともないような葉が茂る小さな木に、まるでクール蛍光灯のような、目にも鮮やかな真っ白い色をした実がなっていた。
「何だろう……食べられるんでしょうか? 食べて……みますか?」
顔を上げると、みんな同意見だったらしく、各々が手に取ってもぎ取る。
これこそ、究極の果実!?
てゅいん…
もぎ取る際の奇妙な音。
剛太郎はふいに思い出した。
「コーディリア、せっかく用意した耳栓をちゃんとしなきゃ駄目であります」
「えぇ、そんなものしなくても大丈夫だと思いますが……」
「いいからやるであります!」
剛太郎に無理矢理セットさせられる。
「みんなのお陰でこの果物にありつけた! 皆のがんばりは忘れないよ!」
乃羽は、ごしごしと服の裾で表面を拭き口へと持ってい──
ぐげええええええええええぇえ
この世のものとは思えない、汚い声が辺りに響いた。
そして。
耳栓をしていなかった剛太郎とコーディリア以外の意識が、なくなっていった……
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last