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第五幕 到達! 遺跡最深部!

 遺跡最深部。
 そこは礼拝堂のような広い空間だった。奥には一際目立つ巨大な石版が安置され、その上の壁には巨大な剣がかかっている。四方の壁と天井には壮大な絵が描かれていた。その絵にタイトルをつけるならば『ドラゴンと戦う戦士』と言う名が最も適しているように思われる。
 最深部にいち早く到達していたのは、先ほどゴーレムから逃げてきた弥達であった。
「どうやら、ここはドラゴンと戦っていた戦士の一族が遺したものらしいな」
 ロレッカは壁の大剣を視線を向け、調査をしている弥に質問した。
「では、あの剣はもしかして……?」
「ああ、竜殺しの武器だな。伝説の武器だぜ」
 大剣の前では、テープを貼ろうとするリリサイズと蒼人がまたもめているようだ。
 と、壁がガラガラと音を立てて崩れた。
 崩れた壁の向こうから出てきたのは水責めから逃げてきた一行だった。
「もしかして……、とうとう、お宝の部屋なの?」
 筐子はきょろきょろと辺りを見回し、弥と目が合った。
「よう。なんか良いもの見つかったか?」
 弥の調査報告を聞き、思う事はさまざまだが、それぞれ最深部の探索を始めた。
「これがこの遺跡の宝物ですのね」
「ポケットには入りませんが、とても素晴らしいです」
 亜矢子と那由多、浪漫を求める二人は壁画に見入っていた。
「……どうします、ラルクさん」
「どうするもこうするも……、あんな武器使えるか?」
 ウィングとラルクは竜殺しの大剣を前に途方に暮れていた。
「ちくしょう。どうせこんなオチだと思ってたよ!」
 その横で武尊は苦虫を潰していた。
 どうやら、お宝が巨大である事を予想していたようだ。
「お金は? お金になる物はないの?」
 ふらふらと筐子はその場に膝をついた。
「ないんだよ、筐子ちゃん……」
 筐子をよしよしと慰めるのはシャミアだった。 
「でも……」
 とヴェルチェは呟いた。
「あれならお金になるかもしれないわよ」
 そう言って、彼女は石版を指差した。
「博士ならば買い取ってくださるかもしれませんね」
 と同意したのは、ガートルード。
「では早速移送の準備をしましょう」
「……って、コラ、待て!」
 すかさず武尊が叫んだ。
「なんで俺のバイクにロープをくくり付けてんだよ!」
「まあまあ、武尊さん」
 那由多がなだめた。
「私の飛空挺と武尊さんで一緒に引っ張りましょうよ」
「勝手な事言うな!」
「あらあら、あなただって手ぶらで帰るのは嫌でしょう?」
 伊月が意地悪く微笑んだ。
「……わーかったよ!」
 そうして、武尊の協力を得られ、移送準備は整った。
 スパイクバイクと小型飛空挺の牽引車。空飛ぶ箒を持参した者はそのサポートに加わった。
 だが、ここで思わぬトラブルが最深部に突入してきた。
 地響きとともに壁が崩れ、ドラゴーレムが姿を現した。ゴーレムを追って、突入してくる人影もある。それは先ほどゴーレムと戦闘を繰り広げていたメンバー。そして、E捜索隊だった。
「お、おい。巻き込まれる前にずらかるぞ!」
 武尊はスパイクバイクを発車させた。





「……ユニ!」
「はい」
 ユニの胸に手を当て、クルードは光条兵器を取り出した。
 光条兵器の名は銀閃華。身の丈ほどもある野太刀である。
「……俺は負けない! ……どんな奴が相手でも!」
 クルードの振るう光の斬撃が、ドラゴーレムの胸を一文字に切り裂いた。
 胸の装甲板が吹き飛ぶほどの一撃だったが、それでもまだドラゴーレムに致命傷与えるには至らなかった。ドラゴニュート因子の賜物か、今やドラゴーレムの身体は、その装甲よりも強固な物となっている。
「馬鹿な……。直撃のはず……」
 クルードは銀閃華を握りしめ、再びドラゴーレムに斬り掛かった。
 その反対側では、修羅の気迫でリカがメイスを叩き込んでいる。
「ふかこーりょく! ふかこーりょく!」
 その様子を撮影しながら、ゲルデラー博士は難しい面持ちで考えていた。
「どうも決定力に欠けているようですな」
「どういう事じゃ?」
 亞狗理が眉をひそめた。 
 彼ははめ込み合成用の、自分の姿をトオルに撮らせているところだった。
「何か致命傷与えられる攻撃が必要と言う事です」
「確かにこのままじゃ、埒が空かないな……」
 肩で息をしながらそう言ったのは、顕である、
「あいつのパワーは底なしだ。先にこっちが倒れちまうよ」
「なにか方法はないんですか?」
 陽太郎に問われ、ゲルデラー博士は沈黙した。
 遺跡探索にあたって彼らは必要最低限の装備しか用意していない。ドラゴーレムに致命傷を与えられるような兵器など、持参しているはずがないのである。
「いい物があるじゃないか……!」
 微笑を浮かべながら、そう呟いたのは天音だった。
 彼の視線の先には、竜殺しの大剣が威風堂々と輝いていた。
「しかし、どうやってあれを使うんです?」
「あんな物、全員でかかってもまともに振れるかわからないぞ?」
 陽太郎と顕が口にしたのは当然の疑問だった。
「これを使えばなんとかなるんじゃないかな」
 そう言って、天音が取り出したのは、博士から貰った爆薬だった。 
「なるほど……」
 それを見た幸は笑みを浮かべてうなづいた。
 どうやら、天音の考えを理解したようである。
「もしかして、これを使って……?」
 目を白黒させているルイスに、天音はうなづいた。
「では、幸さん、ガートナさん、ルイスさん、恭司さん。手を貸してください」
「勿論です」
 恭司は了解した。
「ボクも手を貸してやろう」
 そう言ったのは、円。オリヴィアも作戦に協力する。
「俺たちにも手伝わせてください、天音さん」
 そこへ陽太郎とイブも加わり、作戦を実行するため、竜殺しの大剣に向かい駆け出した。
「じゃあ、準備が整うまで時間を稼ぐのが俺たちの仕事だな」
 剣を構える顕に、エリオットが目で了解を示した。
「私が援護するのだ、へまなどやらかすな」
「へいへい。わかってるよ」
 エリオットは繰り出した火術で、ドラゴーレムの顔面を焼き払う。
 おそらくダメージは軽微。だが、炎がその視界を奪った。
「おとなしくするネ!」
 その動きが鈍った隙をレベッカは見逃さなかった。 
 レベッカの光条兵器、ライフルが狙いを定め、そして放たれた。先ほどクルードが破壊した胸に、光の弾丸が撃ち込まれた。その衝撃はアサルトカービンの比ではない。強烈な一発を浴びたドラゴーレムは、わずかにその巨体をよろめかせた。
「行くぞ、クルード!」
「ああ……、任せろ……!」
 そして、顕とクルードの協力攻撃が、ドラゴーレムを左右から挟み打つ。
 狙うはのはただ一つ、一点突破による脚部間接。リカのメイス乱打で、完全に露出した脚間接部に、二人は同時に剣を突き刺した。その巨体を支える礎を失って、ドラゴーレムはとうとう床に膝をつけた。動力部からは悲痛な叫びが聞こえてくる。
「待たせたね」
 その時、天音の声が彼らの耳に届いた。
 壁から外した竜殺しの大剣が、瓦礫で作った発射台の上に固定されていた。大剣の柄には爆薬がくくり付けられ、幸による軌道計算も完璧、発射準備は完了である。
「円さん」
 天音の合図で、円が爆薬に点火した。
 激しい爆発をともなって、大剣は発射された。凄まじい速度で放たれた大剣は、深々とドラゴーレムの胸を貫き、そのまま壁に張り付けにする。大剣を抜こうともがくドラゴーレムであったが、動力部を破壊されてしまってはどうする事も出来なかった。
 やがて、ドラゴーレムは活動を完全に停止した。