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トウモロコシ農場を救え

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トウモロコシ農場を救え

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第3章


「みなさん、おじいちゃんをよろしくお願いします」
「大丈夫、隼人たちは必ず無事にお爺さんを助けて戻ってくるわよ!」
 不安そうにおじいさんの無事救出を皆に願うセアリアに、アイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)はパートナーたちに任せれば大丈夫と励ます。
「そーですよ、隼人さんたちに任せましょう。僕もパラ実の人たちは怖いのでここに残ってアイナさんたちとセアリアさんを守りますから、安心してくださ――」
 そこまで言ったところで、ソルラン・エースロード(そるらん・えーすろーど)はアイナに蹴られた。
「ひ、ひどいじゃないですか?!」
「なにネゴト言ってるの? ソルランは隼人たちと一緒に行くの! さっさと支度しなさいよね!!
 アイナの剣幕にソルランはしぶしぶ戦闘の準備をしはじめるのだった。

「【波羅蜜多実業高等学校生徒】をなめるんじゃねぇぞ! ッシャアッ!!」
 どこかで鬨の声があがる。
 それが合図だったように、トウモロコシ農場守備隊は、セアリアと彼女を守るシー・イーをはじめとする数名の守備を農家に残して出発していった。
 そんな彼らを宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)セリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)湖の騎士ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)たちがセアリアの護衛にと残る。
「教導団員の務めではあるが、地元の衆が事故解決に向けているのだ。我々は後顧の憂いをなくすのがよかろう」
 ランスロットは、農家の周りの守りを強化するために玄関先で風車小屋へと続く農道の先を睨みすえる。
「パラ実の皆さんって、纏まりがあるようでないんですね……自由主義というべきでしょうか? それでも一度何かをやると決めたときの結束力は素晴らしいとおもいます」」
「ま、パラ実の面々がやる気なんだから表にでるのは失礼よね。でも、調子にのって貴女を狙ってくるのがいるかもしれないから、気をつけましょう」
 セリエが感心したように言い、祥子はセアリアに微笑んで見せ、セアリアもそれに応える。
「パラ実四天王か……一体どんな相手なんでしょうね。私がシメて座を奪うとか……愉快すぎてやる気が起きないわ」
 軽口を言いながらも、祥子は警戒をおこたらない。
 セアリアは、そんな彼らを頼もしく思うのだ。

 ※ ※ ※

 一方の風車小屋である。
 こちらも朝から総攻撃といった勢いだったのだが、斥候の報告に王たちを迎え撃つことになったらしい。
「なんやしらんが、小ざかしい連中や! 野郎ども、かめへんでいてこましたれや!」
「おおう!!」
 パラ実四天王のひとり砂嵐のシャランの号令に手下のヤンキーたち、ゆる族が一斉に意気を上げた。


 てなわけで戦闘開始である。
 囚われているセアリアのおじいさん救出を最優先に目指すは風車小屋だ。

「ラルク。流石にいくら頑丈なお前でも多勢に無勢だろう」
「ぬかせ! 見てろよ、オウガ!」
 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)オウガ・クローディス(おうが・くろーでぃす)の気遣いに言い返し、向かってくるヤンキーたちの前に躍り出た。
「うっしゃ!! てめぇら覚悟しろよ!!」
 手に手に得物を持ち襲いくるヤンキー相手にアーミーショットガンで襲撃する。
「まったく……器の小さい事をしているな……これが同じ学び舎の仲間とは……」
 オウガはそんなラルクの射撃が行いやすいようにと、ランスで近くの敵を突き刺し援護しながらため息を吐く
 ま、それが波羅蜜多実業高等学校の伝統っちゃ伝統なんですけどね。
「うおりゃあぁ!!」
「甘い!」
 日本刀を振り上げて襲い掛かるヤンキーをラルクはドラゴンアーツとヒロイックアサルトのあわせ技で撃退する。
「へ……ソルジャーが接近苦手だと思ってたら大間違いだぜ?」
「ラルク、油断するな!」
「わかってる!」
 ラルクはオウガの注意に気を引き締めた。

 風車小屋よろ少し離れた場所にあるサイロには、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)明智ミツ子(あけち・みつこ)がいた。
 レベッカはサイロの屋根までよじ登り、そこから風車小屋を見下ろす。
 風車小屋方面から大勢の声があがり、バイクのエンジン音やら銃撃の音やら聞こえてくる。
「はじまったようですわ」
「そのようね。レベッカ、準備はいい?」
「OK、OK ワタシにまかせるネ」
 レベッカが陽気に答え、スナイパーライフルを構える。
 それにアリシアがパワーブレスをミツ子がヒロイックアサルトを付与した。
「いきまース!」
 レベッカは仲間たちを援護するためにスナイパーライフルのトリガーを絞った。

「みなさん、今ならまだ間に合います。大人しくお爺さんを解放して投降してください」
 風車小屋にいる連中に向かってシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)が呼びかけるが、中に残っている連中から聞くに堪えない罵詈雑言が返ってきた。
 なかでもシーリルの心を傷つけたのは、容姿に関する悪意ある発言であろうか……
(がまんですわ……)
 我慢する必要もないくらいの根も葉もない暴言なのだが……つか、シーリルの優しく温和そうな美しい姿を見てそういう言葉が出てくるほうがどうかしていると思う。
(武尊さんたちが、中に入るまでのことですもの……)

 その国頭 武尊(くにがみ・たける)だが猫井 又吉(ねこい・またきち)と共に風車小屋の窓際で姿を現していた。
 光学迷彩……
「どうする?」
「しっ……」
 武尊は窓ガラスを叩き割り、中に発炎筒を投げ入れた。
 割れた窓からもうもうと白い煙が噴出す。
 小屋の中では、わあわあと大騒ぎだ。
「これで、連中が外へ飛び出してきたら内部に強行するぞ」
「わかった」
 武尊と又吉が目で合図しあったところで、何やらセリフが聞こえてきた。
「俺のこの手が激しく燃える、壁を壊せと囁き唸る! ばあぁぁぁくえん、バーニングフィンガー!!」
 武尊たちが止めようか考える間もなく伊賀忠義(いが・ただよし) 風車小屋の壁をドラゴンアーツと火術を同時に使いぶち抜いた。
「ヒャッハー、どんなもんだ、俺にかかればこんな壁一撃よ!」
 意気揚々と穴の開いた風車小屋へと皆を誘う忠義だ。
 ついでに内から発炎筒の白い煙がむわぁ! っと噴出し、外からはヤンキーたち敵が集まってきた。
「なんでだ? 俺の作戦は完璧だったはずなのに……」
「だから、壁を壊すのはまずいって……」
「つっせーな! しょうがねぇ! 俺が相手をしてやる! てめぇら、爺さんを頼んだぜ!」
「忠義さん私も助太刀します! 白菊、あとは任せましたよ」
 忠義とそう言い残し敵陣へと向かっていく、それにクルト・ルーナ・リュング(くると・るーなりゅんぐ)も続いた。
「わかった!」
 この場を忠義とクルトに任せ、白菊珂慧(しらぎく・かけい)たちはおじいさんを探しに向かった。
「おじいちゃんは、どこにいるッスかねぇ?」
 その頃、サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)は風車小屋の壁をよじ登り、高い位置にある窓から中を覗き込もうとしていた。
「あ、みーつけたッス」
 運がいいのか悪いのか、覗き込んだ場所に人質になっているおじいさんがいた。そして見張りのヤンキーの姿が数名。
 サレンは、窓から煙玉を投げ込んだ。
「わぁ?!」
「なんだ?」
 混乱する室内。
 もうもうと白い煙が立ち込めて視界がさえぎられる。
 それに乗じて、サレンは窓から内部に滑り込んだ。

「爺さん無事か!?」
 部屋の外の見張りのゆる族を張り倒した風祭隼人(かざまつり・はやと)を先頭に部屋の中へとなだれ込む。
 中にいたヤンキーをぶちのめしたサレンと合流した。
 その様子は、長時間拘束されて憔悴しきっていたおじいさんを怯えさせた。
「な、なんじゃ……」
「セアリアに頼まれて助けにきたよ。僕たちについてきて」
 珂慧のパラ実らしからぬ清潔な身なりと眠そうな顔に気を許したのか、おじいさんは救出班と共に脱出することを承知した。
「なら、俺につかまれ!」
 拘束されていたせいかふらふらしているおじいさんを隼人は無造作に担ぎ上げると、脱出する経路をと仲間たちに相談する。
「俺にまかせろ!」
 姫宮和希(ひめみや・かずき)が、とめる間もなくドラゴンアーツで壁をぶち抜いた。
「けっこう頑丈なんだな!」
 2箇所壁を破壊された風車小屋だが、まだなんとか修理できる範疇なのだろうか……和希は、破壊ついでに風車小屋の中の敵を生き埋めにする気でいたらしいけど。
「そんなことはいいから、早く脱出しようよ!」
「行くぞ!」
 珂慧と隼人に促され、おじいさんを連れた一同は風車小屋を無事に脱出した。

「これで、じーさんをセアリアのところに送れば――――!!!!?」
「桜ちゃん、本気で和希様を愛しているのに……なぜ応えてくれないんですの?」
 風車小屋を出て次の行動に移ろうとした和希は、悲しそうな恨めしそうなたたずまいの小牧桜(こまき・さくら)を見つけて言葉を失った。
「さ、桜……もうお芝居は終わったんだぜ?」
「その男たちがいいんですの?!? ウラギリモノ! ウラギリモノ! シネー!!」
 桜が和希に襲いかかる。
 かなり本気。
 そもそも桜が和希を追いかけていたのは、和希が風車小屋へ潜入するための芝居だったはずだ。
「だから、もういいんだって!」
「シネ! シネ! シネ!!!」
 和希は桜のリターニングダガーを避けるがきりがない。
 つか、和希の言葉なんか聞いちゃいねぇ……
 とうとう和希は、マジヤバイと仲間たちにおじいさんを託すと全力で駆け出した。
「ほほほほほほほほ!
 姫宮さま、桜ちゃんを愛してるって言っていたじゃありませんの〜」
「ゲッゲッゲッゲッゲッゲッ
 ウラギリモノ! ウラギリモノ! ウラギリモノ! ウラギリモノ!」
 その後を桜とアルト・アクソニア(あると・あくそにあ)、ゆる族の小牧桜(こまき・さくら)が追いかけていった。

「…………」
 とりあえず、おじいさん救出の成功を氷翠狭霧(ひすい・さぎり)はパートナーの篠北礼香(しのきた・れいか)ジェニス・コンジュマジャ(じぇにす・こんじゅまじゃ)へと携帯にて報告していた。
『これから救出班の護衛に回ります』
「狭霧、頼みましたよ……では、あたしたちも農家へともどりましょうか」
 礼香は狭霧からの通話を切るとジェニスへ言い、セアリアたちのいる農家へと戻ろうときびすを返す。
 その途中、ヤンキーたちの中に一際目立つヘルメットで顔を隠した上半身裸の、筋骨隆々の巨漢を見かけた。
「姉貴……」
「あれがシャラン……かもしれないですね」
 礼香はつかつかと男に近づく。
「あなたが、シャロン?」
「だとしたら、なんや?」
「この辺り一帯に二度と立ち入らないでくださらないかしら?」
 はるか頭上から見下ろされ、カミナリのような声に怯むことなく、礼香は気丈に男を睨みすえ――――
「きゃぁ?! いきなりナニするんだい?!」
「なに……さいぜん、えげつないハズレをつかまされたんや」
 いきなり胸をつかまれた礼香の怒りの突きが、男の鼻先を掠めるが軽くいなされる。
「せやから、念のために確かめさせてもろた」
「その女の人どうしたの?」
「気にせんでおけ、男やったし」
「ちょっと!」
 礼香がそれ以上を聞き出す前に、どこかで法螺貝の音が鳴り響き、男は「オモロくなりよった」と戦闘が始まった場所へと駆けていってしまった。