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トウモロコシ農場を救え

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トウモロコシ農場を救え

リアクション

 ※ ※ ※

 その男は、戦場(オオゲサ)において目立つ存在だった。
 フルへイスのヘルメットで顔を隠した筋骨隆々の巨漢は、その派手な改造バイクと共に、ひときわ討伐班の連中の目を引いた。
 パラ実四天王がひとり『砂嵐のシャラン』その人だ。
 その足元には、シャランを倒し四天王の座を得んと功名心にはやる学生たちの屍(オオゲサ)が累々と転がっていた。
「ふん……しょーもな」

「おぉのれ外道どもぉお! 四天王か何かは知らぬが、捨て置けんのぅ!」
 水洛邪堂(すいらく・じゃどう)は、シャランの周囲にいるヤンキーたち、ゆる族たちを蹴散らしてが攻め込んできた。
 己の拳をふるい、ヤンキーたちをドラゴンアーツでぶちのめし、シャランの前に躍りでる。
 両腕のセスタスを打ち鳴らし、ギンッと睨みつけて拳を構えた。「こんぬづわ、外道ども。覚悟はよろしいかね」

 グオン!

 シャランの返事の代わりに改造バイクが唸り声を上げると、邪堂めがけて一気に近づく。
 邪堂は受けてたつと見せかけるも、寸差で身をかわした。
「体当たりする気とは……」
 走り抜けた改造バイクを目で追うと、なにやら罠にはまってしまったようだ。

「ふっふっふっ……嵌ってる嵌ってるアル」
 戦場から少し離れた場所で、戦いの様子を観察していた幻奘(げん・じょう)はシャランの様子にほくそ笑んでいた。
「あとは、サルが四天王になれば……朕の天下アル」
 パートナーを四天王に据え自分は影の支配者になる予定だ。
 なにか壮大な計画があるらしい。
 そのサル……もとい風間 光太郎(かざま・こうたろう)は、計画が少々狂ったことに困惑していた。
「ダージュが来れないとは……」
 大鋸の名を使い(一応本人に伝えたらしい)シャランにタイマン勝負の果たし状を出していたのだが、当の大鋸が他の者に勝負を挑まれていた。
「しょうがないでござる、機を見て拙者が挑むでござる」
 四天王をとれと師匠(幻 奘)も煩いし。

 で、一方のシャランである。
 改造バイクが幻 奘の落とし穴にはまってしまったので、バイクを乗り捨てたところだった。
「いい様だな……シャランさん。折角だからこのままご臨終しちまいなよ」
 シャランのの不利を見て取るやクロイッツァー・ヘブンツ(くろいっつぁー・へぶんつ)はリターニングダガーで襲いかかる。
 が、豪快に吹き飛ばされた。
「いい様やな……」
「……」
 鼻っ柱を殴られクラリとしたをクロイッツァーに、シャノンはハンドガンで狙いをつけ、引き金を絞る。
「どーも! おおきに!」
 そこへサンデー・サンデー(さんでー・さんでー)が飛んでくるなり相方クロイッツァーを担ぎ上げると一目散に駆け抜けていった。
 事前の打ち合わせで、退避経路は確保していたらしい。
「わいの今日の出番、結局これだけ!? セアリアちゃーん! また会いまひょー!」

「まったく……四天王だからって、面倒事を増やさないでもらいたいものだ」
 黒霧悠(くろぎり・ゆう)は隠れ身でトウモロコシ畑に身を潜めていた。
 敵の勢力を潰すのには、敵リーダを倒すのが一番とばかりに、シャランに奇襲を仕掛けるチャンスを狙っていたのだ。
「もらった!」
「そこまでだぜ!」
 サンデーを見送るシャランに、これがチャンスと悠は木刀で殴りかかるが、木刀はネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)の火術で消し炭になってしまった。
「いきなりなんだ? シャランの仲間か?」
「べつにそーいうワケじゃないぜ」
 ブルドックのようなドラゴンニュートは、ただパートナーに協力しているだけだと答えた。
 一方で、ネヴィルのパートナー仲間であるシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)と対峙している。
 ミューレリアも悠と同じく不意打ち狙いで背後か急所を思い切り蹴り上げようと近づいたところで、シルヴェスターの轟雷閃に阻止されたのだ。
「なんで邪魔するんだ? 悪は最後に滅びるってのがお約束だぜ?!」
「理由が必要なんか?」
「ってうか、光学迷彩使ってるのになんで見えてるんだっ!?」
「知らん」
 それは、幻 奘が穴掘ったり水撒いたりして“敵”のバイクでの機動力を奪ったり、光学迷彩を使っていたとしても位置がわかるようにしてたからです。
 シャロンを倒したい者でも光学迷彩を使用するかもしれないということは、諸刃の剣な罠であったのだ。
 もともと風車小屋まわりにも敵の侵入を阻止するために石灰撒かれたりしてたし。
「つか、おんどれら、やかましぃわ!?」
 シャランの機関銃が火を噴く。

 その四天王シャランは、次々と襲いかかってくる挑戦者に辟易していた。
「……なんとゆうか」
 どう言葉にしていいかわからない。
 シャロンがじゃなくて、小雪がですが……
「そこまでです! 四天王の座はこの私“リリーマスク3号”がもらいます!」
 びしっっと指を突きつける百合園女学院制服に額に「百合」と書いてある白いマスク姿の怪しい人物。
「とーっ! 必殺! スーパーリリーキーックッ!!」
 そして、リリーマスク3号ことレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)はシャランめがけてとび蹴りをかまそうと飛びかかる。
「無駄や!」
「させません!」
「きゃーっ!!」
 シャランの機関銃が火を噴く前に、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)のドラゴンアーツがリリーマスク3号を吹き飛ばした。
「なんや、おまえは?」
 シャロンがガートルードを睨みつける。
 彼からしたら、新たな刺客の登場にすぎない。
「べつに、あなたとどうこうする気はありません。私は、万が一の時、パラ実四天王を名のるのが他校生になるのが気に入らないだけです」
 そう、別にシャランを守りたいわけでもないし、自らが四天王を目指すつもりもない。
「パラ実の学生が四天王を目指すというなら、邪魔立てをする気はありませんでしたが、当のパラ実学生の挑戦者は実力が伴わなかったようですね」
「ハーハッハッハ!」
 ガートルードの物言いに、シャランは笑い出す。
「よし、気に入ったわ! おまえに四天王をゆずったるわ!」

「はい?」

 シャランの言葉にその場で聞いていた者たちが一斉に聞き返した。

「おら、てめぇら! 今からこの姐さんが新しい四天王や! 覚えておけや!」
 とかなんとか、シャランは手下どもに言い切ると、その顔を覆っていたヘルメットを脱いだ。
 それを呆然としているガートルードに押し付け、配下のヤンキーやゆる族たちに引き上げる命令を出した。
 もらえるのは、四天王の称号だけのようである。
「ちょ……」
「ま、がんばれや」
 何か言いかけるガートルードの肩をポンっとたたき、砂嵐のシャランはあっけにとられた一同を残し、戦場を後にしていった。

 後に残されたのは……
 荒らされたトウモロコシ畑。
 屋根が吹っ飛び、壁に大穴が2こ開いて大破している。


 ※ ※ ※


「セアリアもじいさんも無事で何よりだナ」
「……」
 とは、シー・イー。
 当のセアリアとおじいさんは、風車小屋の惨状に言葉もない。
 トウモロコシ畑の被害は、それなりに予想されていたことだし、命あってのものだから、助けてもらったことには感謝している。
 しかし、風車小屋は……
「残ったトウモロコシが収穫できても……」
 粉に引くことはできないし、それをバイオエタノールにすることもできない。
 すべて丸ごと出荷するわけじゃなくて、むしろそちらの方がメインの出荷物だったようだ。
「困ったのう……」
「おい! てめぇら! セアリアとじーさんを放って行くわけじゃねぇよな?」
 王大鋸の言葉に「もちろん復旧作業を手伝う」と何人かが名乗りを上げ、有志の者たちで風車小屋の修復をすることになったのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

澤井小雪

▼マスターコメント

 はじめましてこんにちは、澤井小雪です。
 ご参加いただきましてありがとうございます。
 楽しんでいただけましたら幸いです。
 また機会がありましたら、お会いいたしましょうです。