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トウモロコシ農場を救え

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トウモロコシ農場を救え

リアクション

 ※ ※ ※

「行くぞ野郎共ォ!!」
 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は突撃合図の法螺貝を吹き鳴らし、自分も風車小屋へと駆け出した。
「せっかくの音頭とりだ。最後はトリで締めようぜ、ナガン!」
 カリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)がナガンに檄を飛ばす。
 目指すのは、四天王。
 ナガンに四天王をとってもらうべくカリンは助力を惜しまない。
「つか、なんで自分で四天王とりにいかないんだ?」
「こまけぇこったぁいいんだよ!」
 とにもかくにも、ナガンの姿が目立つのか、ヤンキーたちが次々とやってくる。
 その改造バイクのタイヤを狙いそれぞれリターニングダガーを投げつけるカリンとナガン。
 敵の機動力を奪い、接近戦に持ち込めば勝てる自信は大いにある。
 ローグの身軽さを有利に使い、次々と敵を倒していく。
 そんなふたりの前に現れる男がひとり。
「インスミールの紅蓮の魔術師参ッ上ッ!! パラ実? イルミン? 学校なんざ関係ー! この俺様が、最強だ! 四天王の座はいただくぜー!!」
 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が名乗りをあげ、何を思ったかナガンに挑戦状をたたきつけた。
「そのようなアレは、困る……というか、ちがうし」
「なに言ってるんだよ? ナガンのどこをどうしたら『砂嵐のシャランなんだよ?』」
「なに、俺とは戦えないつっーの? それとも勝つ自信ねーんだ?」
 不適に笑い、挑発しつつハーフムーンロッドを掲げるウィルネスト。
 その先端に雷術で呼び出した電気がぱちぱちと火花を散らし始める。
「だから違うっていうとろーが!!」
「さすがに道化化粧の赤と緑のツートン道化衣装の性別不明の人物が、シャランってどう考えても難しいだろ!!」
「しょーがねーじゃん! シャランの事前情報少ねーんだから!!」
「逆切れかい……」
 ナガンとカリンはうんざりし、ついでこうなったら何でもいい楽しんだものが勝ちなのだと開き直ると、ウィルネストの挑戦を受けてたつことにした。
「負けて吠え面かくなよ!」
「それはこっちの台詞だっ!」
 そんな楽しげな戦い(?)はさておき、藤崎時雨(ふじさき・しぐれ)は、打って変わって余計な名乗りなどせず、リターニングダガーで静かに確実に敵を倒す。
「……」
 その側で綾音双樹(あやね・そうじゅ)もパートナー同様、冷静に対処するように努力していた。
「ガソリンに引火したら大変かと火術は使わないようにしていましたが……」
 ちょっとだけ……とも思わないでもないけど、双樹はやはりと思い直し、エンシャントワンドを握りなおした。

「これから風車小屋に殴りこみに行く、現場まで運んでくれ」
「OK」
 エー テン(えー・てん)テクノ・マギナ(てくの・まぎな)の指示を受け、彼を乗せて上空を行く。
 地上からゆる族たちがエーに向けて一斉射撃してくるが、スウェーとバーストダッシュを巧みに使い分け、避ける。
「さて、どこに着地するでござるか?」
「どこでもいい、適当なところで降ろしてくれ」
 テクノの答えにエーは着地目標を勝手にさだめ、そして実行した。

ドカーン!!!

「なんだ? なんだ?」
「どうした?」
 風車小屋の周囲で戦っていた連中が、衝突音に風車を見上げると、4枚ある羽根が壊れてそのまま建物へと突っ込んだのか大穴が開いていた。
「強行着陸終了でござる」
「……っつしゃ! 行くぜ!」
 衝突の衝撃に目を回していたが、テクノは気合を入れなおすと風車小屋に残るシャロン一味を打ち破るために向かっていった。

「オレは【パラ実のニュー四天王】になる男、ゆくゆくは【ドージェを倒してトップに立つ男】、吉永竜司だ! てめぇらは、全部このオレがぶっ倒すから覚悟しろよ、ゲヘヘ」
 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、風車小屋の前に仁王立ちし、風車小屋大破の衝撃に驚き飛び出してくる連中を、手にした消火器で攻撃する。
 ぶち撒かれた消火器の薬剤が、光条迷彩のゆる族たちの姿をあらわにし、竜司の鉄拳の餌食になった。
「アァ? 四天王とか言うやつはどいつだァ? このオレがぎったんぎったんにしてやるから、出て来いや!」
 拳をぶん回し、挑発する竜司だ。


 ところで、今回あまり存在感のない王大鋸であるが、彼は四天王、砂嵐のシャランを探していた。
 もちろん、四天王を目指すものとして、シャランにタイマンを挑むためだ。
 が、大鋸の前に立ちはだかる野郎がいた。
「なんだ? てめぇは?」
「てめぇが王大鋸だな。パラ実の顔役気取りってな話じゃねぇか。つーこたぁ強ぇんだよなあ。上等上等、群れて調子付いてる四天王何ざ興味はねぇ!!」
 掲げた手に光条兵器の両手剣を生み出した。
「俺の名は駿河 北斗(するが・ほくと)! でめぇを倒して上へ行く男だ! 刻んどけ!!」
 北斗はそう叫び、両手剣を大きく振りかぶり、大鋸の持つチェーンソーを真っ二つにする勢いで切りかかった。
「王!?」
「ふん、シー・イーじゃないし、魔法使いでもないけど……あなたの相手は私よ!」
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)がリターニングダガーを北斗に向かって投げようとするが、そこへクリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)の火術を放つ。
「なにすんのよ!?」
「あら、言わなかったかしら?」
 リネンとクリムリッテの間に火花が散る。
 リネンは大鋸を援護するつもりでいるのに、クリムリッテは大鋸と北斗の戦いの邪魔を排除できればいいらしい。
 どちらの得手得物が動くかという緊迫した状態をヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)の小弓での連射攻撃が打ち破った。
「バッカじゃないの?」
「そうよ、こんなことしてる場合じゃないわ」
 ツンデレのヘイリーが心底という様子で言い放ち、リネンは我に返ると北斗と戦っている大鋸の様子を確認した。

 大鋸は、北斗の両手剣をチェーンソーではじき返し、返す手でそのまま北斗をなぎ払う。
「よけるなっ!」
「あほか?! てめぇは?! よけるわい!!!」
 一応、北斗は相手を傷付けないように設定を光条兵器にしていたらしい。

スダーン!!!

 銃弾が大鋸と北斗の間を突き抜けていった。
 少し離れた場所にオールバックの赤髪の長身の男がスナイパーライフルを構えているのが見えた。
 朱 黎明(しゅ・れいめい)がスナイパーライフルで銃撃したのだ。
「ち……はずれましたか」
「危ねーじゃねぇか、おっさん!」
「誰がおっさんだ?! ふ、ふん……やっていい事と悪い事がある? ハッ、そんなきれい事をほざきながら四天王を目指すなんて、随分と愉快な人ですね」
 思わず怒鳴り返すが、気を取り直し……
 黎明には、大鋸のこの発言が非常にきれい事に思えた。
 また、昔のきれい事を言いながら愛する人を守れなかった自分を思い出させ、異様に腹が立ったのだ。
 それをぶつけられても困るが。
「あーもう、こんなヤツばっかりかよ?!」
 気を取り直す黎明だが、大鋸は呆れて愚痴る。
 いきなり光条兵器の両手剣で切りつけてくるヤツはいるし……今度は、スナイパーライフルで不意打ちだ。
「死んだらどうしてくれるんじゃ?!」
「しるか!」
 そんな様子を、ネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)は物陰から見守っていた。
「黎明様のおっしゃるとおりにしていますけど……」
 手出し無用との黎明の命令だが……
「わたくしが手出しする隙もございませんわ」
 ネアは再度戦いを始めた黎明、北斗、大鋸そしてリネンたちを見つめて、ため息をついた。
「あのかたたち、完全にお忘れですわね……トウモロコシ農場を守る話はどこへいったのでしょう……」
 まったくだ。