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ホレグスリ狂奏曲・第2楽章

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ホレグスリ狂奏曲・第2楽章

リアクション

 第7章 血と苦痛と快楽を


「ムッキー!?」
 むきプリ君は、薔薇の蔦で亀甲縛りをされて噴水に突っ込まれていた。胸部と両手指は赤黒く染まり、中身の無い手袋のようになっている。
「これは……トンカチでやられて更に言葉に出来ないようなことをされた後のような……」
 先程の台詞が予言めいたものになってしまったことと、何よりもむきプリ君の惨状に驚かざるをえない。
 では、彼が離れた後について少し言葉にしてみよう――

「ムッキーはハーレムを作りたいんだな。ふふ……その願いを叶えてやろう」
 女装したミヒャエル・ホルシュタイン(みひゃえる・ほるしゅたいん)は、身体を痙攣させているむきプリ君を見下ろして笑った。神無月 勇(かんなづき・いさみ)と共にホレグスリを求めて雷術を使ったのだ。流石に女性には警戒心を持っていたむきプリ君だが、元々美しい彼らが誘惑を使った為に自制心が綻び、一瞬油断してしまった。
 ミヒャエルは勇の制服に絡みついている薔薇の蔦を使って亀甲縛りをする。そして押し倒し、むきプリ君にホレグスリを飲ませた。更に、首筋に噛み付いて吸精幻夜をかけた。
 むきプリ君は変な声を出して、意思の無い瞳でミヒャエルを見上げ、頭を垂れた。
「さあ……勇、用意はできたよ……」
 同様に光の無い瞳で、勇はむきプリ君に近付いた。
「……ムッキーと……すれば良いんだな……」
 日頃から思考力が低下している勇は、ミヒャエルに吸精幻夜をかけられて夢の世界に入っていた。むきプリ君をひっくり返してうつ伏せにして――
 ―――自主規制――――
「さあ、次は僕だよ。掘って掘って掘りまくってやるからね……」
 ―――自主規制――――
「ほら、もっと鳴きなよ……もう終わりなのかい?」

 ホレグスリの効果が続いたまま、いろいろな世界に旅立って帰ってこないむきプリ君に近付いたのは黄泉 功平(よみ・こうへい)だった。手には先のばらけた竹刀と金槌を持っている。
「ふ、ふふ、ははははははは、あっははははははは!」
 何か知らないが裸で笑いこけているむきプリ君に、功平はまず竹刀を振るった。
 皮膚を裂かれて血を噴き出しながら、むきプリ君は笑い続けた。
「何だ? こいつ……とち狂ってんのか?」
 多少引いてもそれ以上は下がらず、彼は手を固定して金槌を振り上げた。
「ほぉー、これは……」
 それを遠くから見ていたドクター・クドー(どくたー・くどー)は訳知り顔でうんうんと頷いていた。
「あの新薬……笑い茸のような効果が出るみたいですねぇ。本当に適当に混ぜたからどんな結果が出るか予想できませんでしたが……まあ、毒性があるものは使ってないから大丈夫でしょう。さて、帰ってホレグスリの成分調査でもしますかねぇ〜」
 クドーが背中を向けた先では、功平が指の1本1本に金槌を使っていた。その度にむきプリ君の悲鳴と笑い声が周囲に響く。
「ホレグスリ……前回の惨状を鑑みるに黒歴史と認めるに十分足りる」
 がつっ。
「今回の件が解決したとしても、第2、第3のおまえが現れることがないように十二分な制裁と見せしめを行い、」
 がつっ。
「人の心を弄ぶ極悪人には、みじめで悲惨な末路しかないことを満天下に示し、後世への教訓とする」
 がつっ。
「ぶっちゃけ、ホレグスリを見て俺も心が動かないわけじゃない。ロマンチックなデートにも憧れる。だが世の中にはやっていい事とやっちゃいけない事があるんだ」
 がつっ。
「むきプリはそれを犯した、破った、踏みにじった」
 がつっ。
「恨むなら愚かな自分を恨むんだな」
 がつっ。
「やらないと天地神明とエリザベートに誓うなら許してやる」
 がつっ!!

 笑いながら二度とやらないと言うむきプリ君を、最後に噴水に投げ入れて功平は去った。