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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃

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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃
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第5章 仲間と協力して進め!

「またこの廊下ね・・・どうしようかな・・・」
 4階の道を進もうとしている歌菜たちは、周囲を見回して協力者を探す。
「だ・・・誰かそこにいるんですか」
 彼女の声を聞いた陽太が、恐る恐る通路の角から顔を覗かせる。
「いるっ、いるわよ!」
 陽太に気づいた歌菜が片手を振る。
「よかったら俺たちと一緒に進みませんか、廊下を進もうにもバランスが上手くとらなくて3階へ落ちてしまうんです」
「そうね・・・こっちも何度も通ろうと頑張ったけど、2人だけじゃ進めなかったわ」
「どこに罠があるか分かりませんから、足元に気をつけてくださいね」
 大和は歌菜の手を握り、今度こそ通り抜けようと慎重に歩く。
「バランスを取るのが難しいね」
「オレたちはこっち側を歩こう」
 左右にぐらつく床の片側を歩き、北都と昶は落ちないようにバランスを取る。
「皆で傾かないように協力しないと進めないようですわね」
 箒から降りたエリシアは傾かないように真ん中を歩く。
「ここの床もそうね。皆、気をつけて」
 美羽は3階へ落とされないように、ゆっくりと進む。
「とりあえず渡りきれたようですな」
 上手くバランスをとらないと進めない床を通った玲たちは、しっかりと固定された足場の場所までたどりついた。
「道が分かれていますね、どうします?」
 2つに分かれた道のどっちに進もうか悩んだ陽太が生徒たちへ顔を向けて言う。
「私と大和は左側を行くわ」
「それじゃあ俺とエリシアは右へ進みましょうか」
「僕も右側の方にしようかな」
 陽太と北都たちは右側へ進むことにした。
「ねぇ、2人だけで平気?」
「なんとかなるわよ」
 心配そうな顔をする美羽に、歌菜が明るい笑顔を向ける。
「それじゃあ気をつけてね。マジックボトルとフラスコを見つけたら、ここに集合しよう」
 美羽は片手を振り、陽太たちの方へ走った。



「道が沢山あってまるで迷路ね・・・」
 鍵合成用の道具がありそうなとこを探し、美羽は左右の壁を見ながら進む。
「美羽さんー、こっちに自動ドアがありますよ!」
 金属製の自動ドアの前にいるベアトリーチェが呼ぶ。
「ここ・・・?うーん・・・残念だけど何もないわ」
 駆けつけた美羽が部屋の中をキョロキョロと見回したが何もなかった。
「外れか・・・」
 他の部屋を覗き込み、北都も道具を探す。
「どれも空っぽですね」
 陽太は隠し仕掛けがないか、いくつか部屋を調べてみたがどれも空っぽだ。
「こっちはどうどすか・・・。小さなダンボールがいくつか転がっとるなぁ〜」
「それがしが探してみますかな?」
 イルマが見つけたダンボールの中にないか、玲が手を突っ込もうとしたその時、キリキリと耳障りな機械音が聞こえてきた。
 とっさに箱を掴み部屋の外へ出る。
 その部屋から両手にノコギリのような刃物を持つ機械が、ギコッガシャッと音を立てながら出てきた。
「おこしやす〜、ポンコツロボッ」
 2mほど高さのありそうな、いびつな形をした機械兵に向かってイルマが雷術を放とうとする。
「術が間に合わへん〜っ!」
「時間稼ぎしている間に早く泳唱を!」 
 イルマを狙って斬りかかる刃を玲が薙刀で受け止める。
 ガギィンッ、ギギ・・・ギリリイイィ。
「ィ・・・イキテ・・・ル・・・モノ、ゼ・・・ゼン・・・ブコワ・・・スッ!」
 機械兵は力任せに刃を薙刀に叩きつけ、ギコギコとノコギリのように動かす。
「―・・・ぐっ・・・、もう腕がもたない・・・」
 押しつぶそうとする化け物に玲は力負けしそうになりながらも、両足で床を踏みしめ体勢を保とうとする。
「おっけーどす〜。ほな、いきますぇ〜!」
 泳唱を終えたイルマは玲が機械兵から離れたのと同時にターゲットへ雷術を放つ。
「ふぅ・・・なんとか止まったみたいどすなぁ」
 術によって機械兵がショートし、一時停止したのを確認する。
「今のうちに探そうっ」
「あっ、待ちなはれ〜!」
 ダンボールに目的の道具が入っていないか探そうと、部屋に入り込もうとする美羽を止めようとイルマが大声で叫ぶ。
 イルマの禁猟区の陣内に、得たいの知れない殺意が美羽に向けられたからだ。
 室内へ彼女が足を踏み入れた瞬間、その中から青いレーザー光線が発射される。
 異変に気づいたベアトリーチェが美羽の腕を掴み、ドアの前から引き離す。
 レーザーが命中した床はジュウジュウと音を立てて黒く焦げる。
「よくもやったわねっ!」
 怒りに眉を吊り上げた美羽は、星輝銃で生体感知レーザーを狙う。
「すばしっこいやつ、とっと落ちなさいよっ」
 飛び回る円盤状の機体に苛立ち乱射する。
「なら、飛べないようにショートさせてやりますわ」
 熱湯をぶっかけてやろうと考えついたエリシアが、氷術で氷の塊を円盤の上に出現させて火術で溶かす。
 まだ動こうとする機体へ雷術をくらわした。
「陽太、止めを!」
「はいっ!」
 ターゲットへ照準を合わせた陽太が銃弾を撃ち込む。
「よし、今だっ」
 レーザーマシーンが機能を停止したのと同時に昶が室内へ飛び込んだ。
「どこにあるんだ・・・」
 ダンボール箱を掴み、目的のやつが中に入っていないか探す。
「何だこれ、何かの容器みたいだけど・・・これか・・・?」
 箱の中からルーン文字が書かれたボトルを見つけた。
「うぉあ!?」
 部屋から出ようとすると突然、足元にレーザー光線が直撃した。
「まだいやがったのかよっ。北都、パスッ!」
 転んで割らないように、昶はマジックボトルを北都に投げ渡す。
「目的のものは見つけたから、いったん合流場所に戻ろう」
 北都たちは仲間と約束した合流地点を目指して走る。
「ちくしょう、しつこいぜ」
 追いかけ来る円盤状の機体を、昶は鬱陶しそうに睨みつける。
「このっ、撃ち落としてやる!」
 美羽は低く屈み、レーザーの発射口を狙い撃つ。
「やりましたね美羽さん。追ってくるやつもいないようですし、ここでゆっくり待ちましょう」
 集合地点に着いたベアトリーチェたちは、そこで仲間たちを待つことにした。



「見つからないわね、どこにあるのかしら」
 ブラックコートを纏い気配を隠しながら進んでいる歌菜たちの方は、目的の道具をまだ見つけることが出来ない。
「道の途中で分かれた生徒たちは見つけられたんでしょうか」
 各部屋を覗きながら大和も一緒に探す。
「もしかしてこれかな」
 部屋の隅にあるラックの上に置いてあるフラスコを見つけた歌菜は手に取ってみた。
「うん・・・これで間違いないわ。見つけたわよ大和」
「歌菜、伏せてください!」
 大和の声に歌菜は床へ伏せる。
 彼女の頭上をレーザー光線が通り過ぎた。
 壁の方へ視線を移すと、黒く漕げた点がある。
 その部屋の中に潜んでいる生体感知レーザーが彼女を狙ったのだ。
 ズビュゥウウッ、ビュバババッ。
 円盤状の機体がターゲットを始末しようと、レーザー光線を放つ。
 助けようと大和が煙幕ファンデーションを投げつける。
 光線が弱まった隙に歌菜は部屋から転がり出た。
「なかなか当たらないわねっ」
 轟雷閃で落とそうとするが、すばしっこく動き回るマシーンには命中させることが出来ない。
「気配を隠せると思ったけど、甘かったわね・・・」
「早くここから離れましょう!」
 倒すのを諦めた大和は彼女の手を引っ張り、廊下を駆けていく。
「待って、何か聞こえるわ」
 機械音を耳にした歌菜が足を止める。
「な、何ですかあれは。さっきまで通路にあんなのいなかったはずですよ!」
 両手にノコギリのような刃を装着した機械を目にした大和は思わず声を上げてしまった。
 彼らに気づいたマシーンが振り返り、ガシャガシャと足音を響かせて迫る。
「はぁああっ!」
 歌菜は機能を停止させようと轟雷閃の雷光を纏った刃で斬りかかる。
 止めを刺そうと大和がサンダーブラストの雷球を放つ。
 もくもくと煙が発生し、機械兵の姿が見えなくなる。
「何も見えないわね・・・これじゃあ倒せたのかわからないわ」
「とりあえず動く気配はないようです。進みましょう」
「そうね」
 煙の中を通り抜けようとしたその時、ボタタッと床に真っ赤な血が落ちる。
「―・・・え、何・・・?」
 目の前の血溜りに歌菜は顔を強張らせた。
 しっかりと抱きしめる大和の手から彼の顔へ視線を移す。
「だ・・・大丈夫ですか・・・歌菜」
 機能を完全に停止させる寸前の機械兵の刃が、大和の右肩を貫通したのだった。
「私を助けるために・・・」
「こんなの掠り傷です」
 涙を流しそうになる歌菜に、心配させまいと大和は痛みを堪えて笑顔で言う。
「それよりも早く皆のところへ戻りましょう」
 歌菜の肩を借りて大和は合流地点へ向かった。



「たしかここの辺だったはず。あっ、待っててくれたのね。よかった!ついたわよ、大和」
 フラスコを探し出した歌菜と大和は、北都たちと合流する。
「見つけたんだね、よかった」
 歌菜たちに気づいた北都はほっと安堵の息をつく。
「怪我しているようですね。今、治してあげます」
 大和の傷に気づいたヒールでベアトリーチェが癒そうとする。
「なかなか治りませんね・・・」
「3階で仲間が待っているので、これくらいで大丈夫です」
 SPを切らせないように気遣う大和に術をかけるのを止めた。
「表面上の皮をつなげただけですから、まだ中は完全に治りきっていません。気をつけてくださいね」
「えぇ、ありがとうございました」
 まだ治りきっていない大和は、歌菜の肩を借りて歩き始める。
「待たせているラキたちが心配です。早く戻らないと・・・、ぁああっ!」
 傾く床に足を滑らせた2人は3階へ落ちてしまう。
「戻ってこれたようですね」
「正確にいうと落ちただけのようじゃがな」
 目の前に落下してきた大和を忍が睨んだ。
「そう言わないでくださいよ、目的のやつも探してきたんですから」
 大和は見つけたフラスコを忍に見せる。
「ほう・・・歌菜殿も無事でなにより」
 フラスコを受け取り、無傷の歌菜を見た忍はほっと安堵する。
「大和ちゃん、怪我してる」
「これですか・・・」
 落下の衝撃で開いてしまった傷口を見たラキシスが大和に駆け寄る。
「治してあげるよ」
「俺も手伝ってやろう」
 ブラッドレイと2人がかりでヒールで治してやろうとするが、傷の表面までしか治せなかった。
「うぅ・・・、傷が深すぎて治せない。一応、血は出ないと思うけど・・・」
 治しきれないラキシスがしょんぼりとする。
「やっと傷口が塞がった程度だからな。あまり派手に動かないほうがいいな」
 塞いだ方の肩を動かさないようにブラッドレイが注意する。
「あれ・・・・・・なんだろう?」
 天井付近をくるくると回る円盤上の物体を見つけたラキシスが首を傾げる。
「離れろラキシス!」
 ブラッドレイは禁猟区の陣内に殺意を感じ取り声を上げる。
「ぐぅっ・・・」
 ラキシスを庇ったリヒャルトの腹をレーザー光線が貫通した。
「あいつ、ついてきたのね!」
 4階で遭遇した生体感知レーザーが歌菜たちが落下した時、ついてきてしまったのだ。
「まずい、ゴーストたちに気づかれたようじゃっ」
「どうしよう・・・さっき倒したゴーストに術を使いすぎちゃった」
「これを使って」
 歌菜はラキシスにSPルージュを渡した。
「落ちなさい、この!」
 レーザーマシーンを凍結させてやろうとする、大和の放つ氷術がまったく当たらない。
「―・・・うっ」
 傷口が開いてしまい、照準が合わせられなくなってしまう。
 ビシャシャッと鮮血が壁に飛び散る。
 大和を庇った歌菜の脇腹と両足は、レーザー光線の標的となり貫通してしまったのだった。
「いたぞ!侵入者たちめ、覚悟しろ!」
「うぐぁああっ!」
 機関銃の銃口を向けられたラキシスを守ろうと、ブラッドレイが盾となる。
「このままじゃと皆、捕らえられてしまうっ」
「い・・・いやだ、歌菜・・・・・・歌菜ぁああっ!!」
 忍とラキシスに無理やり引きずられる大和は悲痛な叫び声を上げる。
 深手を負った歌菜たちは兵に簀巻きにされ、牢獄へ連れて行かれた。