リアクション
第6章 オークスバレー(2) 空京の各所に、こんな張り紙が張り出されたわけであった。 教導団。ピンチの第四師団からの募兵! 貴方の力求む。 「第四師団か。よ、よし。……やってみるか。今度は、今度は僕自身の意志で……」 これを見て、募兵に応じてきたのは、 「影野 陽太(かげの・ようた)です。……えっ、あれ?」 「うむ。一人だけのようだな。 では貴官。頑張ってくれたまえ」 「えっ。まぢでしょうか?」 「……うむ。まぢだ」 団長に似た位の高そうな水着姿の男はそう言うと、教導団本校の軍議室からさっさと出て行ってしまった。 「……」 さて、かくして影野は第四師団を救うべく義勇兵として、本当に一人で南西分校のある森の辺りにまで、やって来たのである。 南西分校か。 懐かしいな、少し。そう、思う。 この影野陽太、かつてのオークスバレー解放戦に一度、同じように傭兵として参戦したことがある。(あのときは、各校からの勇士(ベオウルフ隊なども懐かしい)、それに国頭などもオークを相手に、第四師団と共に戦ったものだ。) 今は、他に共に戦う者もなく文字通りの一人だ。「(あのときは……パートナーに無理矢理放り込まれたんだったな。)」 薄暗い森を進む影野。「ああ、確かこんな森だったな」まだ少しびくびくはとれないけど、でも影野にも、あの頃からは心境の変化があった。そう、会長に認めてもらえるよう、必死に努力すると決心したのだから。 武器である冷線銃をしっかり手に、歩む影野。 とは言え、戦いが正義だとは思わないけど、戦いのある現実に向き合って足掻くことで、少しは成長できるかも。どんなに怖くて酷くて哀しい戦場でも、前を向いて……「つ、着いた!」 影野の前にそびえる、南西分校。 第四師団の最初の戦い、オークとの戦いの拠点となった場所である。 今は、ここをパラ実が占領している。 「ひっ」 正門にさしかかると、早速、いかにもな不良どもが、屯していた。 「なにしにきたごるぁ!」「誰だよ、てめぇ」「昴コウジか。あ??」 「か、影野 陽太です!!」 6-01 昴コウジ討伐軍 校長室。 今、ヒラニプラ南西分校・校長の座に居座るのは、国頭 武尊(くにがみ・たける)。 パラ実も、教導団と同じく空京などで募兵をしたが、応じてきたのはこちらも一人だった。指揮を一任できるクラスの優良な不良なので、不満はなかったが。一方シャンバラ大荒野などからパラパラと集まってくる格下の不良は、もうオーク程度の兵力にしかならない者ばかりだった。兵を募るのは、この辺が限界か。 とん、とん。扉をノックする音。 「国頭さん!」 「入れ」 影野が招かれてきた。 「あの……影野 陽太です」 「?」 「オークスバレー解放戦役に、一度だけ参加した、……えーと」 「……。ふむ、そうか君は…… うん、とにかく、よく来てくれた。まあ、かけてくれたまえ」 「ハ? ハイ……?」 「これで二人か」 * 視聴覚室。 「いいッス? さあものども、この、サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が、国頭さんから500の指揮を預かり南部諸国への遠征軍を率いることになったッス!」 「サレン隊長ー!」「サレン隊長ー!」「サレン隊長ー!」 「討つべき悪の名……それぁ、昴 コウジ(すばる・こうじ)!! ッス」 ぐく。唾を飲む、パラ実の不良ども。しかし、彼らに怒りと闘士がこみ上げる。 「昴コウジ」「昴コウジ」「昴コウジ……悪の手先」ゴゴゴゴ…… 「昴コウジ……悪の手先」ビクビク。ビクビク。それでも影野も、決意の闘志をみなぎらせる。「え、それで僕は……」 「いざ、出陣ッスー!!」 「おお」「おお」「おおー!」 「お、おう……」 かくして、サレンと影野は、昴コウジを討つべく南部諸国へ500の不良を率いて、進軍を開始した。 「さあ行くッス!」 「えっ、あれ……?」 |
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