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【2020授業風景】サバイバル調理実習!?

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【2020授業風景】サバイバル調理実習!?

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《14班》

 「ご飯は炊けたし、ウサギの和風ソテーと木の実のドレッシングのサラダに、山菜のスープ……うん、こんなものでしょう」
 調理台の上に並んだ料理を見て、エリーズ・バスティード(えりーず・ばすてぃーど)は満足そうにうなずいた。
 全員が一緒に狩りに出て、全員が一緒に調理をすることにした14班だが、どうにか日暮れまでに料理を完成させることが出来たようだ。
 「サラダじゃなくて、和え物って言ってくれませんか……」
 レジーヌ・ベルナディス(れじーぬ・べるなでぃす)がエリーズの袖を引っ張る。
 「へえ、レジーヌさんて和食好きなんだ?」
 大岡 永谷(おおおか・とと)がレジーヌに言った。レジーヌはこくりとうなずいた。
 「ソテーにワサビみたいなのを添えるって言ったのも、そう言えばレジーヌさんだもんな」
 「自分では、お料理は出来ないのですが……。教導団の食堂では、和食も出るので嬉しいです」
 永谷の言葉に、レジーヌはもう一度うなずく。
 「でぜる、はやくたべよう!」
 叫びながら調理台の周囲を回るルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)と、きゅーきゅー鳴きながら皿に向かって身体を伸ばすクー・キューカー(くー・きゅーかー)を、
 「陳教官の試食が先だから!」
 「ちょっと、もうちょっと待てって!」
 デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)が必死で止める。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《15班》

 「なぁんじゃこりゃあああああ!」
 採集して来たパラミタトウモロコシの選別をしようとした青 野武(せい・やぶ)は、青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)によって採って来たトウモロコシが全部調理され始めているのを見て愕然とした。しかも、メニューが、
 『ゆでトウモロコシの塩がゆかけ(もちろん、塩がゆもトウモロコシ製)』
 という何ともコメントのしづらいものだ。
 「皮が硬いものを選り分けて、デザートにポップコーンを作ろうと考えていたのに、なぜそれまで全部使ってしまうのだ!」
 野武は頭を抱えた。臼で挽いて粉にしてトルティーヤをとか、発酵させてアルコールを、と黒 金烏(こく・きんう)シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)もクレームをつける。
 だが、ノニ・十八号はにこにこして、
 「えー? 皮が硬くても、こうやって挽き割りにして塩がゆを作れば大丈夫ですよ? ポップコーンよりこっちの方が絶対に美味しいですし……。それに、もともとあんまり量がなかったじゃないですか。ポップコーンとかトルティーヤとか作ってたら、一品ずつの量はものすごく少なくなっちゃいますよう」
 と、いっこうに悪びれる様子がない。
 「と言うか、これでは予定していたメニューが揃わんではないか!」
 主菜は他の生徒が準備と調理を担当していてどうにかなりそうだし、主食はノニ・十八号のおかゆがけトウモロコシ(かなり微妙な出来だが)があるが、あと一品と汁物がない。
 「終わったでありますな……」
 金烏がため息をつく。
 「いや、最後まで諦めん! とりあえず、塩がゆを汁物にして、あと一品を手持ちの材料でどうにかするのだ!」
 野武は主菜を作っている生徒たちの所へ行って、材料を探し始めた。
 「えー、塩がゆは汁物じゃありませんよぅ……」
 「食材を全部勝手に使った人間がそれを言うかッ!」
 不満たらたらなノニ・十八号に、シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)が野武の代わりに突っ込みを入れる。
 「人間じゃありませんよう、機・晶・姫……」
 「黙らっしゃい!」
 反論しようとしたノニ・十八号の後ろ頭を張り倒して地面に静めて黙らせ、野武は残り食材で作れるメニューを必死に考え始めた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《16班》

 皆で山羊狩りに精を出した16班のメニューは、山羊肉のカレーになった。
 「焼いたりするより煮込むのが一般的な食べ方みたいなんですよ。野生の動物は肉固いから、ミンチにしてミートボールにしてみました」
 調理担当の生徒が汗をぬぐいながら言う。
 「ふむ、出汁は山羊の骨を使ったのですな。命を頂いた以上、余すところなく使い切るのは良い心がけです」
 ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)が、鍋から引き上げられてまだ湯気を立てている骨に向かって黙祷する。
 「あとはサラダと、野生の果実を使ったデザートか」
 ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)が満足そうにうなずく。
 「これなら、不可ってことはなさそうだな」
 俺たちは他校生だから評価は関係ないけど、俺たちのせいで不可になったなんて言われたくないもんなぁ、と酒杜 陽一(さかもり・よういち)もほっと胸を撫で下ろす。