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ミッドナイトシャンバラ2

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ミッドナイトシャンバラ2

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オープニング

 
 
 ポーン。
「さあ、日付も変わりました。今宵も、ミッドナイトシャンバラ、開幕です」
 普段とはうってかわった営業用のキャンディボイスで、シャレード・ムーンが放送を開始した。
「ろくりんピックや秋祭りも終わり、季節はハロウィーンや文化祭の時期になりました。一気に冷え込んできましたから、風邪などをひかないように、温かいココアと共に、夜のひととき、しばらくはこのラジオに耳をかたむけてくださいね。
 この放送は、発展を続ける『雪だるま王国』、御依頼は迅速に解決の『冒険屋ギルド』、新規開店『うぉーたーみる』、いつもあなたのそばに『ウェストガーデン会計事務所』、山笠見学なら『空京神社』、世界樹のマップならお任せ『月刊世界樹内部案内図』、紅茶とケーキの美味しいカフェテラス『宿り木に果実』、美しさは宝石『ヴァイシャリー錦鯉協会』、その他の提供でお送りいたします」
『CM入りまーす』
 副調整室からの声にシャレード・ムーンがカフを下げると、ミルディア・ディスティンが短い時間の間にお茶を運んできた。
 
『ミッドナイトシャンバラ♪』
 
    ★    ★    ★
 
『不幸だと嘆いてる方、雪だるま王国に来てみませんか?
 そして雪だるまを作ってみてください。
 雪だるまの加護が貴方を幸せにしてくれるでしょう』
 
 
私のパートナーのコーナー

 
 
『ミッドナイトシャンバラ〜♪』
 
「最初のコーナーは、私のパートナーです。
 リスナーのみなさんは、実に個性的なパートナーさんと契約を結んでいるようですね。なかには、自分より目立ってしまって困っている方もいるようです。
 さて、本日最初のパートナーさんは、どんな方なのでしょうか。
 ペンネーム、るっきーさんからのお便りです。
 ミッドナイト・シャンバラの皆様、こんばんは。
 前に投稿を読んでいただけて嬉しかったです、ありがとうございます!
 いえいえ、またお便りいただいてありがとうございます。
 さて、私のパートナーの話ですが…ゆる族なんです。
 結構ほわほわしていて小さくて、縫いぐるみみたいな…
 …って、ゆる族は着ぐるみだから着ぐるみみたいな感じですよね。失礼しました。
 いいなあ、もこもこのゆる族。あれって、触り心地最高ですよね。
 そんなパートナーに、前に投稿した「ゆる族マトリョーシカな夢の話」をしたら、
 「そんな事したら動きにくすぎるに決まってます」と呆れられてしまいました。
 …夢の話なんだから否定しなくたってー…と思うけど、
 ゆる族のプライドとかがあるんでしょうね。多分。
 ゆる族は、なんだかいろいろなしきたりとかあるみたいですよー。謎ですよね。でも、それを尊重してあげなければ、ゆる族をパートナーになんてできないですよね。
 追伸:
 前回の、着ぐるみの外や内に着るものの話。
 私的には、内側に着るのは肌着とか服で「外に見せないもの」、
 外側に着るのはコートとかの「中を覆うか、外に見せるもの」
 なんだろうなと思います。…あれ、何か違うかも?
 着ぐるみに、肌着とか上着とかあるんでしょうかねー。でも、シャツとかジャケットとかついている着ぐるみってありますよね。あれって、着ぐるみの一部なんでしょうか。それとも、着ぐるみは身体の部分だけで、服の部分はオプションとか、普通に服なんでしょうか。うーん、また一つ謎ができてしまったような……。
 さて、続いては、ペンネーム、新江まちこさんからのお便りです。
 ミッドナイトシャンバラの皆様、こんばんは。
 以前投稿を読んでいただけて、嬉しかったです。
 ありがとうございました。
 たまにちまちま縫い物してます。
 まめですねー。意外と縫い物って難しいんですよね。そういえば、ゆる族の人とか機晶姫の人とかは、手の形によっては縫い物大変なんじゃないんでしょう。まちこさんは平気なのかなー。
 それで、パートナーの話なんですが…
 私より身長も高く、年齢も年上なのに
 興味のあることと見たらすぐに突っ込んで行ってしまうんですよ…
 その都度私がフォローしてるんですが、もう大変で…
 頑張ってくださいね。
 たまにはパートナーを振り回してみようかな、とも思ってます。
 頑張ってください!
 やるときは、思いっきりジャイアントスイングで……違う? 大丈夫です。パラミタじゃ、精神的に振り回すのも、物理的に振り回すのも大差ないですから。
 でも、パートナーの片方が突撃型で、もう片方が押さえ役っていうコンビは意外と多いですね。いいコンビだと思いますよー。これが、両方とも突撃型だと、あっけなく玉砕しちゃいそうですから。
 さて、次のお便りです。
 ペンネーム、ちっぱいは希少価値さん。
 久しぶりに投稿します
 夏ごろ たっゆんたっゆん で盛り上がっていたと記憶しているんですが
 わたしのパートナーの桃花もたっゆんたっゆんの持ち主ですよ
 この間も“幸せのメール”が届いたときに 告白したのですが
 寝てるときに密かに挟まってすりすりするおっぱいは まるで陽だまりのような温かさで ふわふわでふんわりで 甘い匂いがするんだよ
 さすが桃花!桃花最高!桃花ばんざぁぁぁぁぁいっ!!!
 すいません、思わず叫んでしまいました。だって、手紙にそう書いてあるんだもん。
 なんだか、ここのパートナー同士も大変そうですねえ。桃花さん、負けないで頑張ってくださいね。ファイト!」
 
    ★    ★    ★
 
「こ、この投稿は……」
 みんなで和気藹々と夜食を食べていた食堂でラジオから流れてきた放送が、その場の空気を一瞬にして凍りつかせた。フリーズの中心は、秋月 桃花(あきづき・とうか)だ。
「い……く……の……さ……ま……」
 軽くうつむいたまま、秋月桃花が唸るようなつぶやくような声を漏らした。
 秋月桃花は、先日、一世一代の大決心をして芦原 郁乃(あはら・いくの)に告白したばかりだ。その勇気は実を結び、晴れて二人は世間も認めるカップルに……だが、秋月桃花が望んだ世間はそこまで広い世界ではなかった。全パラミタ中に広めてどうする。これでは、いつ暗い夜道で非リア充に突然襲われても不思議ではないではないか。
「なんでしょう、このプレッシャーは……。まるで、戦場のような……」
 荀 灌(じゅん・かん)は、同じように冷や汗を大量に浮かべている蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)と、そっと顔を見合わせた。
 蒼天の書マビノギオンの目が、空気読めとしきりに訴えている。
「郁乃さん、読まれてよかったですねっ」
 やっとのことで、荀灌が言葉を捻り出した。
「ありがとー♪」
 あろうことか、その言葉を聞いた芦原郁乃は、喜んで荀灌にだきついてきたのだ。ハガキを読まれたことが嬉しくてたまらないという風に頬をスリスリまでする。
 ――だから空気読みなさいって!!
 思わず、蒼天の書マビノギオンが心の中で叫んだ。
「郁乃様♪」
 油が切れて軋んだロボットのように、秋月桃花がゆっくりと顔をあげてじゃれ合っている二人を見た。いや、荀灌はじゃれ合っているつもりはさらさらないのだが、秋月桃花ビジョンでは、そういうフィルターがもろにかかっている。一瞬で荀灌は死を覚悟した。
「マビノギオン様、後で少し手伝ってくださいません?」
「な、何をですか……」
 いきなり名指しされて、蒼天の書マビノギオンが焦った。
「お布団の場所を移動させようかなあっと思いまして」
 そう言うと、秋月桃花は蒼天の書マビノギオンの手を引っぱった。
「えー、なんで、そんなことをするのよ?」
 まだ分かっていない芦原郁乃が聞いた。
「さあ、行きましょ」
 そんな芦原郁乃を無視して、秋月桃花は荀灌に手をのばして助けを求める蒼天の書マビノギオンを引きずって食堂を出ていった。