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ミッドナイトシャンバラ2

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ミッドナイトシャンバラ2

リアクション

 
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「いったい、こんな屋根裏部屋で何をしていたのよ」
 エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)を探していたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、本人を前にしてお説教モードに入っていた。親子電話の子機がどこにも見あたらないし、ラジオもどこかにいってしまっていたので、犯人を探していたのだ。
『はーい、お名前をどうぞー』
パワードスーツマニアだ』
 ラジオからは、番組の続きが聞こえてくる。
「呆れた。こんな所でラジオ聞いてたの?」
 ローザマリア・クライツァールが問いただすと、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァがこくんとうなずいた。
『――ということで、現在あちこちから狙われ、おたずね者として闇から闇へと渡り歩く毎日でして』
『まあ、それは大変ですね』
「本当、大変な手間かけさせてって、あら、もう電話コーナーになっちゃってたの……って、あんたまさか、ラジオに電話かけてたとか!?」
 ローザマリア・クライツァールの言葉に、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァが再びこくんとうなずいた。
『そうですねえ。シャンバラも激動の時を経験しましたから、西では善人、東では悪人というレッテルを貼られた人も多いですからねえ。もちろん、その逆も』
『オレは、これからどうしたらいいんだ……』
「下でみんなと一緒にラジオ聞けばよかったのに。私もエリーが出演するとこ聞きたかったのになあ」
 残念そうにローザマリア・クライツァールが言った。
「うにゅ、ごめんなさい、なの」
『謝っても許してくれそうもありませんからねえ。いっそ新天地を求めるというのもありかもしれませんけれど』
『マホロバ、コンロン、ポータラカ、ナラカ、ザナドゥか!』
「もう、これからは黙ってどこかへ行ったりしないのよ。電話切れちゃって残念だったね。さあ、下でラジオの続きを聞きながらみんなでお茶でも飲みましょ。まだまだ番組は続くんでしょ」
「ふゅゅん。はい、なの」
 そう元気に答えると、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァはローザマリア・クライツァールと共に屋根裏部屋から下へと降りていった。
『分かった。オレはやるぜ。ありがとな』
『どういたしまして。お悩み相談電話のコーナーでしたー』
 
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『ラジオの仕事をしていると、忙しくて自分の諸経費とか簡単に処理できないのよね。だからいつも年度末あたりにあたふた。こんなときに力になれるものはないのかしら』
『――そんな貴方の力になります。複雑怪奇、ブラックボックス、ミステリアスと呼べる貴方の諸経費も、的確、迅速、素敵にお掃除』
『こ、これで、年末もゆっくり過ごせるわ。彼氏とゆっくりできるわね♪』
『……霧深き島に咲く一輪の花。ウェストガーデン会計事務所!』
『ちょっとまって、今の間は何?』
『――ウェストガーデン会計事務所! いつも貴方のそばにあります』
 
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「お夜食です」
 CMの間に、高峰結和と日堂真宵が差し入れを持ってきた。
「どっちがいいかなあ……」
 二人が持ってきた凸凹した形のおむすびと、カレー臭漂うサンドイッチを前にして、一瞬考えたシャレード・ムーンは、きっちりとおむすびの方を手にとった。時間がないので、急いでぱくつく。
「うん、美味しいわよ」
 そう言われて、高峰結和がぽっと顔をほころばせた。
「チッ」
 しくったかと、日堂真宵がアーサー・レイスの激辛カレーを挟んだサンドイッチを持って引き下がった。
 番組の方は、彼方御前が投稿してきたテープを元にしたラジオドラマが流れている。
『刮目せよ! 天に輝く紅蓮の光! 悪を打ち砕く正義の焔! 魔法少女スカーレット★カナタ、ここに見参!』
『はははは、そのようなもの、このカレーの王子様には通用しまセーン。さあ、行くのデース、カレーの魔王よ!』
「ちょっと待って、誰よ、こんなふうに編集したバカは!?」
 流れているドラマが、いつの間にか内容が違っているのに気づいて、一同が顔を見合わせた。
『シャレード☆ムーン……おぬしを倒すのはこのわらわよ!』
『パラミタ撲殺天使……降臨!』(V)
 はっきり言って、ドラマの方向性がまったく分からない。
『……何故、敵であるわらわを助けたのだ?』
『カレーは、すべての人に等しく手をさしのべるのデース』
「ちょっと、なんか、今、敵が主人公助けなかった!?」
 いいのかと、おむすびを食べながらシャレード・ムーンが副調整室に訊ねたが、答えられる者は誰もいなかった。
『か、勘違いするでない! 決してわらわは、おぬしを助けたわけではないのだからなっ!』
『さあ、歌いましょう。歌は、番組を、いいえ、世界を救うのよ!』
「収拾がつかないわね……。いい、ドラマあけたら、何知らぬ顔して七不思議のコーナーに入るわよ。振りむいちゃだめ!」
 こめかみを押さえながら、シャレード・ムーンは指示を飛ばした。
 
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