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虹の根元を見に行こう!

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虹の根元を見に行こう!

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 ――一方、完全に制圧されたパラ実生たちは、パラ実涙雨に参加した面々により捕獲され、きついお灸を据えられていた。

「他に取り逃がしが無いか確認してくる」
「鉄心殿、わしも同行しよう。あ、哀れなパラ実生など見ておれぬ……」
 鉄心と狛が辺りを確認しに行くと、弱ったパラ実生が仲間からカツ上げを食らっていた。
「カツアゲはダメです! こんなことばかりしてたらダメですよ!」
 それを目敏く発見して説教したのはティーだった。
 負けたパラ実生は素直で、ティーの説教に正座を始めた。

「オレ様が……こんな……」
「やはは、似合う、似合うぜ」
 鴉は楽しそうに気絶から起きたゲブーを眺めた。
 その姿は、着替え担当の鴉が最初に仕上げた、ネコ耳メイドだった。
「じゃ、次は他の奴らで楽しむかな」
 鴉が捕獲されたパラ実生にきらりと光った目を向けると、パラ実生は怯え、泣き出す者さえいた。
 どうやら彼らにネコ耳メイドという格好は、屈辱を通り越したものらしい。
「いや、可哀想、可哀想」
 未だ装着されたままの壊世は黙って事の成り行きを見守り、ニヤニヤする鴉は、パラ実生の洪水のような涙から作られた虹を見て、虹の根元はパラ実生の涙だった、などと自分の心くすぐって、高ぶるのであった。
 鴉の着替えはトマスが手伝い、サイコキネシスで身体の自由を奪っていた。
「もう悪い事を考えるんじゃないぞ」
 トマスは着替え終えたパラ実生にそう言って、リリースした。
「俺、パラ実生でなくて本当によかった……。猫耳のメイドさんにして戦意を喪失させるってのは、ある意味平和かなぁ……」
 遠目から見ていたテノーリオが同情と身震いをしながらそう言っていると、捕獲された1人のパラ実生が堪え切れずに飛び掛ってきた。
 が、ミカエルによってあっけなく捕まると、トマスに新しい衣装に着替えさせられた。
 全身白タイツである。
 元の世紀末な服装はトマスの火術で燃やされ、今の姿ならば、メイド服でさえ最高の衣装に思える。
「俺……パラ実生じゃなくて……」
 テノーリオがそう思うのも無理ないくらいに、憐れだった。

「うむうむ、こういったことをするのは栄養が足りてないからに違いない、主に頭の。だからコレ、蒼汁☆ 蒼汁を飲ませることで心身共に健康にすれば更正するよね♪」
 裁は蒼汁を取り出すと、捕まったパラ実生に向けて、にっと口角を上げて不気味に微笑んだ。
「ふざけんなよ! んなの飲めるか! 飲むくらいならぶっ殺せよ、ヒャッハー!」
 ――バリバリバリッ!
「あばばばばばばばばばば」
「抵抗しちゃダメだよ〜」
 アリスはサンダーブラストでパラ実生を大人しくさせると、裁が蒼汁を煙を吐く口に一気に流し込んだ。
 直後、意識を失った動物のようにぱたりと倒れた。
「テ、テメェ! 毒でも盛ったんじゃねぇだろうな!」
 仲間の様子を見て、パラ実生が言うが、裁は指を振って否定した。
「さぁ、この特製10倍濃縮蒼汁を飲んで心身ともに健康になるんだ☆」
「10倍ってそれもう汁じゃないでしょう!」
 ドールのツッコミにうんうんと頷くパラ実生は、抵抗のために提案を下衆な笑いと共に言った。
「へ、へへ、なら口移しで飲ませてもらおうかな」
「なに、口移しなら飲んでもいい? わかった、かもん」
 裁が指を鳴らすと、自前のフライングヒューマノイドが飛んできた。
 これから何が起こるのか容易に想像できたパラ実生が縛られた手足にも関わらず逃げようとすると、裁はえい、とかわいい掛け声をあげながらブラインドナイブスで失神させた。
「慣れないとこの子みたいにお花畑にいくけど、慣れればそれも快感にかわるから大丈夫♪」
「りんしたいけーん! いやいやそれ、大丈夫じゃないでしょう!」
 ドールのツッコミはまたやも流され、アリスはパラ実生の携帯を勝手に拝借して、フライングヒューマノイドとの蒼汁口移しを、パシャリと収め、メールを一斉送信した。
「シャメは勘弁してあげましょうよ……ああ、聞きませんねやっぱり。もう死ぬ、それは死ぬ。ボクだったらみずから命を絶つぐらいのショックです!」
 仲間すら絶叫するほどの、更正だった。

「あらあら、大変ですね」
 梓はその優しさから、パラ実生の傷を癒し、お灸の様子を見て笑っていた。
「ああいうのは勘弁願いたいですなぁ」
「今日も良い天気ね。これなら綺麗な虹が見えるでしょうね」
 アルバートとソフィアは、パラ実生の惨劇から目を逸らしながら、一息ついていた。

 これでパラ実生が懲りてくれれば、と思うのだが、やはりパラ実生だし、という思いも拭えず、誰もが心の中で苦笑するのであった。



「クソが……! オレ達を甘く見やがって。天下のパラ実だぞ……」
 うまく逃げ切ったパラ実生は、監視を掻い潜り、何とか一泡吹かせようと機を狙っていた。
「……ン……なんだ、こりゃ」
 それがアシッドミストにより霧だとは、気付けなかった。
 ――さあ、罰の時間じゃ。
 ――とりあえず、シメてやれ、サキ姉。
 声が聞こえたと思った次の瞬間、パラ実生の1人は雷にうたれ痙攣し、倒れた。
「ナ、なんだってんだよぉぉ!?」
「いいぞ、いいぞ。さあ、戸惑え、苦しめ、あははははは!」
 霧の向こうに人影が見えたが、時既に遅し。
「虫唾が走るのよ。仮にも同じパラ実生として、貴方達と一緒くたにされてしまうのは、ね。だから……お・し・お・き・よ!」
 禁じられた言葉によって放たれたサンダーブラストが、残りのパラ実生に直撃した。
「仮にも俺達パラ実なんだし、身内の落とし前はきっちりつけねーとな」
 魔鎧として万が一に備えて刹姫によって装備されていた雪が、戻り、そう言い放った。
「蛙みたいじゃの。せっかくじゃ、解剖でもするかの」
「新しい臓物のコレクションが増えてしまうわ……」
 刹姫と暦の喉を鳴らすような笑い声が、森に響いた。



 こうしてパラ実生の誘拐は、失敗に終わった。
 賢明ならわかっていたはずだ。
 繋がった者達を切り離すなど、可能性が無いということに。