リアクション
★エピローグ
「悲しい顔しないで、あたしの胸で泣いて まだ見ぬ世界求めて旅立つ日まで〜♯」
「またそのフレーズ、半音高いですよ」
「悲しい顔しないで、あたしの胸で泣いて まだ見ぬ世界求めて旅立つ日まで〜♭」
「またそのフレーズです、今度は半音低いですよ」
「悲しい顔しないで、あたしの胸で泣いて まだ見ぬ世界求めて旅立つ日まで〜♪」
スッと透き通った。
ピアノの音と、歌が、同調した。
「やった! 歌えるようになったよ、ラナおねーちゃん!」
「やりましたね、アテネ」
2人は手を取り合って喜び合った。
シルキスと別れてすぐの、後日の話だ。
「それでは、キリがいい所で、、早く私達も折らなきゃいけませんね」
「忘れてた! シルキスのために千羽鶴折らなきゃ!」
帰り道、椿がこっそりと参加者全員に提案した、千羽鶴。
今も机の片隅に、折り紙が置かれていた。
「折り方もレッスンしましょうか? アテネ」
「き、厳しくないなら……」
「ふふ、レッスンというのは厳しいものなんですよ……」
「えええ〜〜〜」
アテネはこれ以上厳しいレッスンを受けないように、ああでもない、こうでもないと折り紙がクシャクシャになるほど折り目をつけながら、折り続けた。
(貴方のおかげかもしれませんね……シルキス……)
開けられた窓から晴天を覗きながら、時折吹く風に髪を乱されるよう押さえ、ラナは空を見上げた。
カーテンが風に揺られる。
それがまるで、歌っているように錯覚してしまうのは、どうしてだろうか。
頬を撫でる優しい風を受けながら、シルキスは筆を取った。
風に飛ばされぬよう手元を押さえながら、思いを書き綴った。
拝啓――
言葉を、経験を忘れることはできません。
虹の根元は、確かにありました。
だからきっと、私は手術を受けることができます。
でも、やっぱり心配です。
私の手術は無事に成功に終わりましたか?
それとも臆病な私は、
泣いて手術から逃げ出してしまいましたか?
この手紙を見たら、笑ってやって下さい。
この手紙を見たら、叱咤激励、勇気を与えてやって下さい。
言葉を、経験を忘れることはできません。
虹の根元は、確かにありました。
だからきっと、私は手術を受けますよね。
シルキスは、書き方もわからない宛てのない手紙を書き終えると、そっと引き出しの奥に仕舞い込んだ。
次に見る虹は、自分自身で作り出そうと微笑みながら……。
「シルキスお嬢様」
使用人からあるものが届けられた。
シルキスは、それを手術を受けるその日まで、ベッドの横に飾り続けたのだ。
あの日、あの時、共にいた仲間の思いが込められた、千の鳥達を。
(お終い)
ご参加ありがとうございました。
今回で三度目のシナリオと相成りました、せくです。
遅延公開になってしまい、大変申し訳ありませんでした。
不慮の事態にも備えたスケジュール管理ができなかった甘さが招いたことであり、言い訳の余地はありません。
次、またゲームマスターとして仕事ができる機会がありましたら、
きちっと提出日に、私の出来る限りのシナリオをお届けします。
それでは、皆様に楽しんで頂ける事を願いながら、短いながらもこの項を埋め、マスターコメントとさせて頂きます。
またお会いできる日をお待ちしています。
重ね重ねではありますが、ありがとうございました。失礼します。