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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

リアクション

「えぇ!? そんなぁ……それは本当なんですか?」
 それは美央にとって、とてつもなくショックな報告だった。
「美央殿、まことでござる。巨大雪だるまは魔法石を額から取ってしまったら、もう二度と動かないただの巨大な雪だるまになってしまうんでござる。元々、フィリップ殿たちが魔法石を偶然雪に落としてしまって、偶然に魔法石内の術式が破損してしまって、偶然にもその破損した術式が雪に一時的な命を与える出来損ないの術式だったんでござる」
「つまり……偶然に偶然が重なって、この巨だ雪だるまは動くようになったわけですね?」
 美央は、密かに巨大雪だるまを雪だるま王国に連れて帰ろうと計画していたので、非常に落ち込んだ。
 すると、魔鎧と化したサイレントスノーが美央に語りかける。
『美央。二兎追うものは一兎をも得ず、ですよ。今回は、雪だるまを護れただけでも御の字です』
 たしかに、サイレントスノーの言うとおりではあるのだが――
「じゃあ、この巨大な雪だるま……どうしたらいいのでしょか?」
 どうしても、目の前の巨大雪だるまを連れて帰りたいと思う美央は珍しく口を尖らせていた。
 するとそこへ――
「陛下、ちょっと良いか? 何か、マルクスが話しがあるって」
 皐月が、パートナーのマルクス・アウレリウス(まるくす・あうれりうす)と……見慣れない老紳士を連れてやってきた。
「あの……失礼ですが、こちらの方は……?」
 老紳士に困惑しつつ、彼のことをマルクスに尋ねる美央。
「あぁ。この人は、シャンバラ国際スキー場ホテル――つまり、ここの総支配人だな」
「え!?」
 突然の展開に、戸惑う美央。後ろに控える王国メンバーの頭には『賠償金請求!?』の恐怖が駆け巡っていた。
 ところが――
「実はな、さっき総支配人と話し合ったんだが……この動かなくなる巨大雪だるま、出来てしまった物を有効活用しないのは勿体無い。という、ことで意見が合致して、このホテル・スキー場のシンボルとして利用する事が決定した」
 マルクスが語ったのは、賠償請求ではなくただの嬉しいニュースだった。
 しかも――
「この巨大雪だるまの管理・維持は、雪だるま王国が完全バックアップすることになった。そして、入客数やグッズ販売による利益から数%だが王国にも金が入ることが決定した。まぁ、そのためにも冬季は管理・維持のために月数回ここまで来なければならないがな。だが、その間はホテルの一室を貸してもらえることになったから安心しろ」
 怒涛の勢いで商談の成立を報告してくるマルクス。
 実はこれ、彼なりにこの巨大雪だるまを保護しようという考えの下の計らいだった。
「いやいや、皆様。当ホテルにも、雪だるま王国の噂はかねがね届いております。どうか皆様の技術を生かして、この巨大雪だるまを皮切りに当ホテルお呼びスキー場のシンボルとして行きたいのです。皆様にはご迷惑をおかけしますが、どうか力添えください」
 総支配人も、すっかりその気だった。
 そして、いつの間にか美央の顔にも笑顔が戻ってきた。
「そう……ですね! 雪だるまが動く動かないは関係のないことですよね。私、動く巨大雪だるまを前にして、少し目が眩んでいたみたいです。これからも、より一層雪だるまに励んで行きたいと思います。王国の皆さん、ホテルの皆さん、頑張って雪だるまを広めて行きましょう!」
 こうして、長かった雪だるま騒動は幕を閉じたのだった。