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リアクション
女湯が小雪だるまと戦う女性たちによって混戦しはじめた頃、男湯の露天風呂では――
「あーやっぱ温泉はいいなぁー!」
散々とスキーを楽しんだラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、気持ちよさそ〜うに温泉を満喫していた。
「こう、ゆっくりまったりと浸かってると気分もよくなってくるよなぁ……しかも、雪景色を見ながらってのが、これまたたまんねぇ」
立ち上る湯煙、降っては溶けて消える粉雪、静寂の中で僅かに聞こえる清流の音。
「女湯は、何か盛り上がってるみてぇだが……こういうときは静かな方が良いよな」
男湯は、人が少ないせいか全体的に落ち着いた雰囲気だった。
だが――それも短い一時となってしまう。
バゴォッ!!
「うおっ!? な、何だぁ!? 壁が吹っ飛んじまったぞっ!!」
男湯と女湯の露天風呂を仕切る竹製の壁。それが、いきなり吹き飛んでしまった。
さすがのラルクも、一瞬混乱する。
しかし――
「ってなんだこいつらは!? どっからどう見ても雪だるま……って、襲ってきやがった!?」
男湯にも雪崩れ込んで来た小雪だるまの集団を見て、腰へタオルを巻きつけると、即座に戦闘態勢へと移る。
「とりあえず、ぶん殴って倒すしかねぇな! オラァ!」
ラルクは神速の速さで雪だるまの集団へ接近すると、武術とドラゴンアーツを組み合わせた格闘術で、次々と豪快に小雪だるま達を粉砕していく。
「あぁ……コレが終わったら身体は冷え切ってるだろうし、温泉で温まりなおしてぇな。酒なんか持ち込めるんだったら持ち込みてぇけど……あとで、ホテルのヤツに聞いてみるか!!」
極上の極楽を求めて、ラルクは小雪だるま達を粉砕していくのだった。
そして、ラルクがいる場所よりも、少しだけ離れた位置でくつろいでいた神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)も――
「温泉は、疲れが取れますねえ。雪も有りますので今の季節は、入るのも景色を見るのも気持ちが良いです」
バゴォッ!!
「な、なんですか!? 壁が吹き飛んだんですか!?」
露天風呂へは壁を背にして入っていたため、いきなりの事態にかなり驚く翡翠。
しかし――
「ん? 何か視線を感じますね……って、雪だるま!? というか…………おい、テメェら! 何、人の背中見てんだ!」
背中の傷を小雪だるまに見られ、突然豹変する翡翠。
「おらぁ!」
幸い、彼のいた場所には数体しか小雪だるまが雪崩れ込んでこなかったため、戦闘はすぐに終わった。
「それにしても……女湯では、いったい何がおきているのでしょうか?」
急転直下の展開に、思わず首を傾げる翡翠。
と、そこへ――
「あっ! 翡翠ちゃんだ、やっほ〜♪ 」
女湯から、翡翠のパートナーである榊 花梨(さかき・かりん)がやってきた。
「男湯と女湯が繋がって、広ぉ〜くなっちゃったね。さすがに、泳いだら駄目かな? でも、泳いだら気持ち良いかも♪」
「これは一体……花梨、女湯では何が起きてるのですか!? 壁が吹っ飛ぶなんて、異常事態ですよ!?」
あまりにも突拍子のない事態に、本気で混乱する翡翠。
だが、そんな彼とは対照的に、花梨は至っていつもどおりだった。
「なんか私は詳しいことはよくわからないんだけど、さっき女湯の裏で迷子になってる人が二人もいたから色々話してて……その後、二人と別れた直後に壁が吹き飛んだから……もしかして、あの二人はテロだったのかな?」
「て、テロ!? うーん、ちょっと判断にこまりますね」
花梨の話しを聞いて、ますます混乱する翡翠。
「あ、でも……迷子の一人は小雪だるまを率連れて、谷底からやってきたみたい。やっぱりテロなのかな?」
「谷底から!? つまり、外で何かが起きているのでしょうか?」
「あぁ……この時期の温泉って、本っっ当最高ねぇ」
シャンバラ国際スキー場ホテルの一室――の、家族用露天風呂には、赤いビキニを着た宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)と――
「う〜ん、運動した後の温泉って最高ー! 外が寒いのも、ちょっと温まってから出ると気持ちがいいですよねぇ」
黒のビキニを着用した七瀬 歩(ななせ・あゆむ)が、各ファミリータイプの部屋に設置された家族用露天風呂に浸かって、仲良くガールズトーク等に花を咲かせていた。
しかし、何故彼女達はファミリータイプの部屋泊まっているのかというと――
「でも、祥子さん。今日は貴重な旅行に誘っていただいて、ありがとうございました」
「ん? あぁ、良いの良いの。どうせ、デパートの福引で当たって、移動費意外はタダなんだし。それに、せっかくのファミリータイプを私だけで使うのはもったいないでしょ?」
この旅行、祥子が福引で当てたものだったのだ。
「だったらさ、私と歩――それに悠希も一緒に来て親睦を深めたかったのよ」
実は、祥子たちはこのホテルに三人で泊まりに来ていた。
そしてその、三人目というのが――
「さっき混浴風呂に覗きが出たと聞いたから、ボクがしっかりお二人を護らないと」
真口 悠希(まぐち・ゆき)だった。
彼は、見た目はどう見ても女の子なのだが、正真正銘の男の子だった。
なので……男湯に入ればパニックになるし、女湯に入るわけにもいかない。混浴にいたっては覗き魔が出没したと噂を聞いたので、どこに行っても彼は色々と危険に晒されるのだった。
だからこそ、今回の旅行は家族露天風呂付きでとても安心していた。
「さてと……歩さまと祥子さまが家族用露天風呂から上がったら、ボクもスキーでの汗を洗い流したいです」
三人にとって、とても平和な時間が流れていた。
ところが突然――
バゴォッ!!
外から爆発音のようなものが聞こえてくると――
「……はっ! 何か、来る……!?」
覗きに備えて殺気看破を使っていた悠希は、ただならぬ気配を感じた。
そして、次の瞬間――
「「キャ〜!!」」
悠希たちが宿泊している部屋から、祥子たちの悲鳴が聞こえてきた。
「ま、まさか……覗き!? しまった!」
悲鳴が聞こえると同時に、素早く部屋へ突入した悠希。
すると――
「ゆ、悠希! 助けて、雪だるまが飛んできたの!!」
悠希の目に飛び込んできたのは、数体の小雪だるまだった。
しかも、小雪だるま達は祥子たちに向かって雪球で攻撃していた。
「相手が雪なら……爆炎波です!」
威力を最小限に絞った爆炎破が、あっという間に小雪だるま達を溶かしつくしていった。
「さ、これでもう安心です」
再び平和が訪れる室内。
すると――
「うん、こういう時はやっぱり男の子だね。きちんとキメてかっこよかったよ」
「さ……祥子さま!? だ、抱き締められたら恥ずかしいです……」
「ううん。ありがとう。助けてもらってすごく嬉しかった、本当にありがとうね」
「こちらこそ、純粋に頼ってくれるのが嬉しかったです」
「格好よかったわよ、男の子♪」
祥子は感謝の気持ちを込めて、悠希に軽くキスをしたのだった。
だが――
「……どうしました、歩さまは。浮かないお顔ですね」
悠希は歩が少し寂しそうな顔をしているのに気づいた。
「うーん……実はさっきの小雪だるま、可愛いかったなぁって思って。どうして私達を襲ってきたんだろう? できれば、仲良くしたかったんだけど……」
「なるほど……たとえ襲いかかってき雪だるまとはいえ、歩さまは仲良くしたかったんですね?」
「……うん。襲ってきた理由がわかれば、話し合って分かり合いたいなぁって思うんだ」
少し落ち込んだ様子の歩。
しかし――
「あ、歩。来て来てぇ! 小雪だるま、一匹だけいるよぉ」
祥子が家族露天風呂の浴室で小雪だるまを一匹見つけたようだ。
「わぁ、可愛い♪ たぶん、怒ってる顔だから襲い掛かってくるのかな? えいっ! 眉とかいじっちゃって、ニッコリ笑顔にしてみよう」
歩は、小雪だるまと触れ合い元気を取り戻したようだった。
「それにしても、小雪だるまが外から侵入してくるなんて……外で何か起きてるんでしょうか?」
結局、部屋の中にいた悠希たちは首を捻るばかりだった。
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