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リアクション
第二章 山頂での三つ巴
「ん? 何だろう、アレ……?」
スキー場の食堂で鼻歌交じりに作業をしていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、ふと窓の外を見たとき、ゲレンデに異変を感じた。
『兄さん。何か、変なものが山頂付近に見えるよね。兄さんの方からは見える?』
精神感応によって、自分の兄――佐々木 八雲(ささき・やくも)へと話しかけてみる弥十郎。
『あぁ、よく見えるぞ。巨大な雪だるまが遊んでる』
どうやら、雪下ろしのバイトで食堂の屋根に上っていた八雲には、山頂付近の様子がハッキリと見えているようだ。
『あ、そなんだ。どんな風に遊んでるの?』
『そうだな……何だか小さい雪だるまを撒き散らして、追いかけゴッコをしているね』
『え? 小さい雪だるまを撒き散らすって……兄さん、それなんか違わない?』
『そうだなぁ、なんか悲鳴みたいな悲鳴が聞こえるな。でも、気のせいだよ』
兄はマイペースに話しているが――弥十郎は気が気ではなかった。
なにか騒動がおこりそうな予感に落ち着かない彼は、手元の大根の桂剥きが異様に長くなっていくのだった。
弥十郎たちが巨大雪だるまの存在を確認したころ、スキー場では少しずつ異変が起きはじめていた。
ここ、シャンバラ国際スキー場こども広場では――
「おいおいおい、何だこいつら? 戦闘態勢バッチリって感じじゃねぇか」
雪だるまモドキの着ぐるみに身を包んだ高柳 陣(たかやなぎ・じん)を、数体の小雪だるまが取り囲んでいた。
「ったく……バイトに来てみりゃコレかよ!」
面倒くささの極みとばかりに、特大の溜息を着ぐるみの中で吐き出す陣。
「でも、ガキどもに怪我があったらクビかもしれねぇからな。ユピリア、ティエン! とりあえず。ガキ保護者どもをホテルに行かせるぞ!」
着ぐるみに仕込んでいた武器を取り出しつつ、陣はパートナーのユピリア・クォーレ(ゆぴりあ・くぉーれ)とティエン・シア(てぃえん・しあ)に誘導の指示を出す。
「まずはティエン。お前がガキどもを先導してホテルに行け! 丸いからって、仲間と思われて雪だるまに攫われんなよ!」
「うん。わかったよ♪」
子供達を怖がらせないよう、明るく答えたティエンは――
「さ、みんな。雪だるまさんがいっぱい来ちゃったから、僕たちはホテルでお休みしようね♪」
パニックを防ぐため、タンバリンで更に場を明るく楽しいものにして、子供と保護者達をホテルへ誘導していった。
「よしっ。そんじゃ、ユピリア。お前は――って、な……何だよその目はっ!?」
「別にぃ。ただ、ティエンがちっちゃくて可愛いなら素直にそう言えばいいじゃない……シスコン!」
ジットリとした白い目で陣を睨むユピリア。
「う、うるせぇ! い……いいから、お前はティエンたちの先頭に立って道を開け。周囲への警戒怠んじゃねぇぞ!」
陣は、追い払うようにしてユピリアを子供達の護衛に回した。
「さてと……じゃあ、殿は俺がキッチリ勤めさせてもらうぜ。かかって来いよ、だるま共!」
陣は子供達を守るため、雪だるまの着ぐるみのまま、武器の引き金を引いた。
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