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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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    ★    ★    ★
 
「はい、そこ、パンツのぞかない。スカートもだめ!」
 警笛を吹き鳴らしながら、水橋 エリス(みずばし・えりす)はあわただしく空京の中を走り回っていました。
 臨時警備員大募集というバイト公告に釣られてやってきたのですが、まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。
「それにしても、このモヒカンたち、なんでパンツなんか頭に被っているんです? しかも、何人かは変な機械背負ってるし……」
 激務に肩で息をしながら、水橋エリスは言いました。
「まあ、よろしいではないか。全て殲滅してしまえばいいだけのことであろう」
 久しぶりに、何も考えずに暴れられると、夏候惇・元譲(かこうとん・げんじょう)はちょっと御満悦です。
「こらこら、俺たちはあくまでも民間の警備員だぞ。やり過ぎたら、こっちが空京警察の世話になりかねんだろが」
 困った奴だと、リッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)が夏候惇・元譲をたしなめます。調子に乗って突撃でもされたら、水橋エリスに迷惑がかかりかねません。
「だいたい、こいつらはなんでパンツを集めてるんだ。大事なのはパンツじゃなくて中身の方だと思うが……いや、その、常識的に考えてだ」
 ぽつりとつぶやいた言葉に、女性二人が凄い形相で振り返ったので、あわててリッシュ・アークが取り繕いました。どちらにしろ、パンツでもパンツの中身でも、口にだした時点で変態です。
「はい、そこ、落ちているパンツ拾わない。道路の真ん中で集まらないで。道交法違反です。はい、早く散って散って」
 一箇所に集まって、自分たちの集めたパンツの見せっこをしているPモヒカンたちの中に割り込んでいって、水橋エリスが注意しました。しかし、この行為は迂闊だったようです。
 チョッキン。
 なんだか、不吉な音が響き、パンツアームのハサミに左右をちょん切られた水橋エリスのパンツがポトンと下に落ちました。
 すかさず、我先にとPモヒカンたちがそれを拾おうとします。
 撥ね飛ばされて尻餅をついた水橋エリスが、あわててスカートの裾を押さえました。
「やったぜ、とりたてほやほやのパン拓ゲットだぜ」
 手に入れたばかりの水橋エリスのパンツの開きを額縁に挟んで、Pモヒカンの一人が歓声をあげました。白と緑の綺麗な縞パンの開きです。
「わ、わ、私の、パ、パ、パンツが……!」
 あまりの出来事に、しゃがみ込んだまま水橋エリスが口をパクパクさせながらわなわなと身体を震わせます。
「貴様ら!!」
 それを見て、青いチャイナドレス姿の夏候惇・元譲がキレました。猪突猛進にPモヒカンたちの群れに突っ込んでいって、一気に変態共を吹っ飛ばします。
「まだまだ!」
 チャイナドレスから脚が顕わになるのも構わずに、夏候惇・元譲が身を沈めながら大きく足を開いてブレーキをかけつつ反転します。大きく開いた横のスリットから、黒いガーターベルトとショーツの一部がのぞきますが、怒っているので気にしてなんかいません。再びPモヒカンたちの間に突っ込んでいくと、チャイナドレスの裾を靡かせながら、ジャンビングニードロップで正面にいたPモヒカンを吹っ飛ばしました。
「おお、セクシーランジェリー。いただきだぜ……うぼあっ!」
 その色っぽさにPモヒカンたちが手をのばしますが、かたっぱしから夏候惇・元譲の手刀によってへし折られたり、御褒美として踏んづけられたりしていきます。
「ああ、もう、言ったそばから……。雑魚相手に本気になるな。やり過ぎだぞ!」
 あわててリッシュ・アークが止めに入りますが、そのころには夏候惇・元譲はPモヒカンたちで作った小山の上に登って、ゲシゲシと踏み固めていました。
 
    ★    ★    ★
 
「いいかぁ、あんたらぁ、パンツは愛だぁ!」
「愛だ!」
 大勢のPモヒカンたちを前にして叫ぶクド・ストレイフに、Pモヒカンたちが唱和しました。
「愛は全てに平等に分け与えなければならなあい」
「平等だあ」
 なんだか分からないまま混ざってしまったネヴィメール・メルタファルト(ねう゛ぃめーる・めるたふぁると)が、『パンツー』と書いた看板を持って一緒に参加しています。
「パンツを見せるのが好きならぁ!」
「好きだあ!」
「好きなのー」
 これまた、よく分からないまま楽しそうに混ざっているキャロ・スウェット(きゃろ・すうぇっと)が、ネヴィメール・メルタファルトの肩の上で大声をあげました。
「パンツを愛でるのが好きならぁ!」
「好きだあ!」
「好きなのー」
『好き』
「パンツを集めるのが好きならぁ!」
「好きだぁ!」
「好きなのー」
『大好き』
「お前たちの心はすでにパンツ四天王だぁ!」
「おおう、四天王だぁ!」
「わーいなのー」
『四天王、四天王』
「だが、そこで立ち止まってはぁ、いけないのだぁ」
「いけないのだあ」
「我見たりぃ、我取れりぃ、我勝てりぃ。パンツ四天王に満足していてはいけなあいのだぁ。さらなる高みぃ、パンツ八部衆、パンツ十二星華、パンツ十六傑、PPS48、パンツ百八星、八百万のパンツ神目指してぇ、頑張るのだぁ!」
「頑張るのだあ!」
「ではぁ、散れぇ。パンツがみんなを待っているぅ!」
「おー」
 クド・ストレイフに先導されて、Pモヒカンたちが元気を取り戻して再びパンツを求めて散っていきます。
「パンツ集めるなのー」
『了解』
 キャロ・スウェットとネヴィメール・メルタファルトも一緒になってパンツを……。
「こら、何をしているのだ。説明してもらおうか」
 あわやのところで、駆けつけた龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)が、二人に問い質しました。
「パンツなのー」
『パンツ』
 楽しそうにキャロ・スウェットとネヴィメール・メルタファルトが答えます。
「ねえねえ、廉のパンツは何色なのー?」
「お前たち……」
 思わず、龍滅鬼廉が頭をかかえました。
 ……。
 お説教タイムがありました。
「ごめんなさいなのー。パンツ取ったりはしないなのー」
『同文』
「分かればよろしい」
 ぺこんと謝る二人に、龍滅鬼廉がほっと安堵の息をついたのですが……。
「それで、廉のパンツは何色なのー?」
 懲りずに、キャロ・スウェットが訊ねました。
「そうだぜ。姉ちゃん、パンツよこしやがれ」
 いつの間にか背後に忍びよった、Pモヒカンがキャロ・スウェットに便乗するかのように龍滅鬼廉を脅そうとしました。
 振りむきもせずに、パチンと龍滅鬼廉が指を鳴らします。すると、そばに控えていた賢狼がバクンとPモヒカンの尻に噛みつきました。
「いでででで!」
 あわててPモヒカンが逃げ去っていきます。
「いいかい。ああいうことをすると、ああいう目に遭うのだ」
 諭すように、龍滅鬼廉がキャロ・スウェットたちに言いました。こくこと大きく頭を縦に振って、キャロ・スウェットとネヴィメール・メルタファルトが必死にうなずきます。
「よう、姉ちゃん、パンツ……うぎゃあ」
「ちょっといいですか、パンツ……うげげげ」
「そこのそいつ、おとなしくパンツ……ぎゃあ」
「パ……、ぎゃあ、まだパとしか言ってないのに!」
 次から次にやってくるPモヒカンたちを、龍滅鬼廉は速攻撃退していきました。
「おおーなのー」
 それを見て、キャロ・スウェットとネヴィメール・メルタファルトがパチパチと拍手します。
「貴様ら……、いいかげんにしろ!!」
 Pモヒカンたちの不屈のしつこさに、さすがの龍滅鬼廉もついにキレました。
和服を着ているのに、パンツなど穿いているわけがなかろうが! もし着けていたとしても、締めてるのは青い紐一本だけだ!」
 周囲に響き渡る大声で、龍滅鬼廉がカミングアウトします。周囲の空気が凍りつきました。