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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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『さあ、はったはった。はっていいのは、湿布薬。はられちゃいけない駐禁切符。おぱんちゅ求めて三千里。そこのかっこいいお兄さ〜ん。遊んでっておくれでないかあい。今ならもれなく勝てばこのパンツがついてくるんだよお〜。さあ、ファイト!』
「うきゃっ」
 景気よく呼び込みをしながら、キャロル著 不思議の国のアリス(きゃろるちょ・ふしぎのくにのありす)が、さっと多比良 幽那(たひら・ゆうな)のスカートをめくりました。
「よっしゃあ、やってやろうじゃないか」
 さっそく、カモ、いえ、勝負相手のPモヒカンが現れました。
『では、ここに持ち金をおいてくださいますようお願いいたします。勝負はポーカーでございます。手札の交換は一回きり。さあ、勝負でございます』
 すぱぱぱーっとカードを配りながら、キャロル著・不思議の国のアリスが説明しました。
「よし、スリーカード!」
『はっはっはっー。フルハウスだぜぇい! 俺様の勝ちだぜぇいっ! 有り金おいてくがいいぜぇい!」
「貴様、俺様がおとなしく……ぐわ」
 負けを求めないPモヒカンでしたが、すかさず葛洪 稚川(かつこう・ちせん)が、彼の膝の上にドサドサと各種教科書を載せていきました。まるで、石だきの刑です。
「ぐわわ、払う、払うから許してくれえ」
 ほうほうの体で、Pモヒカンが逃げて行きました。
「情けない。次は俺が勝負してやろう」
『ありがとうですぅ。じゃあ、今度はこのお兄ちゃんのぱんちゅをかけるですぅ』
 キャロル著・不思議の国のアリスが、今度は葛洪稚川の裳裾をめくりました。何やら、パンツというか、古びた布のような物が垣間見えます。
「それはやだ。こっちの嬢ちゃんのパンツがいい。絶対こっちだ」
「え〜、私のなのぉ〜」
 凄く困った顔で、罔象女 命(みづはのめの・みこと)が言いました。
『いいよーん、こいつのだねー。ほうらー』
 キャロル著・不思議の国のアリスが、罔象女命のアミップの裾をぴらんとめくりました。あわてて罔象女命が手で押さえたので、下着がなんであるかはよく分かりません。
『ロイヤルストレートフラッシュなんだな。これで、ボクの勝ちなんだな』
「ちょっと待て、いかさまじゃないのか!?」
 Pモヒカンが、キャロル著・不思議の国のアリスの手をつかんで言いました。
 あーあ、ついにばれちゃったか。仕方ないなあと、多比良幽那が密かに身構えます。
『証拠はあるのでありますか。我が輩に対して、そのような嫌疑をかけるのでありますれば、それ相応のお覚悟はありますのでしょうね。さあ、御観客の皆様方、あなた方が証人であります。時は白昼、場所は空京大通り。人物は揃っておりますです。さあさあさあ、いかがあいなりましょうか。こう御期待』
「ええい、なんだかまとまりのないしゃべりしやがって。構わねえ、みんなやっちまえ!」
『おっと、そうはいかないよ。幽那ちゃん、やっておしまい!』
「仕方ないわね。アイアイサー」
 キャロル著・不思議の国のアリスに言われて、多比良幽那がちょっと嫌そうに手持ちのパンツをバッと周囲に撒き散らしました。賭場を開く前に道端で拾った物です。
「おおお、パンツだ、パンツ。よこせ、俺んだ!」
 当然のように、お金よりもパンツに価値を見出すPモヒカンたちは、お金やキャロル著・不思議の国のアリスのことなんかそっちのけでパンツを奪い合います。
『今のうちだっだっだー』
 その隙に、キャロル著・不思議の国のアリスの合図で、多比良幽那たちはお金を持って脱兎のごとく逃げだしていきました。
 
    ★    ★    ★
 
「パンツを求める哀れな子羊たちよ。懺悔なさい。神は汝らの願いを聞き入れて、ここに御使いをおよこしなされた。この先にある物が、汝らの救世主となろう。ささ、在庫のあるうちに急がれよ」
 道端に立ったジーザス・クライストが、パンツを奪われて途方に暮れている者たちにむかって言いました。
 この先には、国頭 武尊(くにがみ・たける)のセコールの出店があります。本来なら、南鮪の手前、協力する必要など微塵もないのですが、パンツで困っている人たちを見ては放ってはおけなかったようです。
「さあ、安いよ安いよー。高級パンツが、今日に限って大特価だ。今穿いてるパンツを下取り交換してもいいよー。ああ、そこのお姉さん。新しいパンツに替えませんか。気持ちすっきり、新しい私。最高ですよー」
 思い切りよそ行き言葉で、言葉巧みに国頭武尊が呼び込みをしています。
 下着メーカーセコールで丁稚の身としては、ここで会社に貢献して評価を上げておきたいところです。それに、下取り交換する客がいれば、合法的に使用済みパンツが手に入ります。趣味と実益を兼ねた完璧な計画です。
「ちょっと待て、なんでパンツ番長がパンツ売ってるんだ」
 パンツを買いに来た姫宮和希が、売っているのが国頭武尊だと知って、驚いて聞きました。
「パンツ番長だからだ」
 きっぱりと、国頭武尊が答えます。
「いや、パンツ番長ならパンツ番長らしく、履いている女の子から奪い取るのが筋なんじゃないのか? そして、それを理由にして、俺にぶっ飛ばされろ。うん、それが本筋というもんだぜ」
「ちっちっちっ。いったいいつの時代の話をしているんだね。今はそんな時代じゃないんだよ。パンツ番長もビジネスで動く時代なんだよ。女からパンツをかっぱらう? そんなんで、何枚のパンツが手に入ると思ってるんだよ。一枚か、二枚か? はん、そんなのゴミだよ、ゴミ。お前、中古パンツ市場を見て見ろ。空京だけで何千枚何万枚というパンツが動くんだぜ。俺が相手にしているのは、そういう世界のパンツだ。オレは世界のパンツ経済を牛耳る番長になるんだよ」
「ええっと……難しくって分かりません。わりい」
 国頭武尊の言葉に、知恵熱を出しかけた姫宮和希があっさりと謝りました。これ以上聞いていたらぶっ倒れてしまいそうです。
「君、よく見たら、穿いてないな……」
「な、なんで分かる!」
「ふっ、オレに分からないパンツは存在しない」
 モノクル状に改造した邪気眼レフで姫宮和希のスカートを凝視しながら、国頭武尊が言いました。
 普通の男なら、ここで鼻血噴いてぶっ倒れるところですが、さすがはパンツ番長です。パンツがなければ、リビドーの欠片も湧かないのでありました。
「さあ、それでどれになさいますか、お客様。高級下着セット救世主のパンツリーブラ・ランジェリーカリアッハのぱんつフリューネのぱんつアイシャのぱんつと、各種とりそろえておりますが」
 すかさず、国頭武尊がセールストークを開始します。
「ちょっと待っにゃー。パンツなら、イングリットも売ってるにゃー!」
 ペットのペンギンにおやつ代を稼ぐ生存戦略のチャンスだとそそのかされたイングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)が、間に割り込んできました。
「ふっ、君、いったいどんなパンツを売っているというのだね」
 絶対的な自信を持って、国頭武尊がイングリット・ローゼンベルグに聞きました。
「これがロリロリパンツにゃー。それでぇ、こっちが、アダルトパンツにゃー。それからそれから、これが葵パンツで、こっちがイングリットパンツにゃー!!」
 なんだか適当に名前をつけてパンツを取り出しますが、全部同じパンツです。もしかして、イングリット・ローゼンベルグにはパンツが見分けられないのでしょうか。本人はスクール水着を着ているので、これまた微妙にパンツからかけ離れています。
「これは、男物なのか?」
 なんだかぼーっと彷徨っているうちにここに迷い込んでしまった無限大吾が、なんとなくイングリット・ローゼンベルグに訊ねました。
「どっちでも穿けるにゃー」
 でも、回答は適当です。
「ふっ、相手にもならねえな」
「その通り。貴様の相手は、このおっぱい番長しかいねえぜ」
 ピンクの光るモヒカンをゆらしながら、ゲブー・オブインが現れました。
「困っている女にパンツを売りつけようなど、パンツ番長のしそうなことだぜ。だが、おっぱい番長は違う。おっぱいのためなら、パンツはただでくれてやるぜ!」
「なに、ただでいいのか。もらったぜ」
 それを聞いて、姫宮和希が飛びつきました。さっそく、サジタリウスの衣類24点分から適当なパンツを取り出して穿きます。
「うおっぷ」
 思わず、国頭武尊が邪気眼レフを外しました。サジタリウスの下着は全部シースルーのスケスケ下着です。すっぽんぽんならなんでもありませんが、シースルーのスケスケ下着は凶悪です。パンツ番長にとっては破壊力が強すぎます。
「危ないところだった。直視していたら死ぬところだったぜ」
 はあはあと息を整えながら、国頭武尊が言いました。
「ただですか、ではこれ全部ください」
 セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が、スケスケ下着を指さして言いました。
「全部だと!?」
 それはどうなんだと、ゲブー・オブインが言います。本来は、一人一個で充分なはずです。
「私はセクシーランジェリー番長を目指していますから、こういったセクシー下着は全て私の物なのですわ。そういうことで……」
「ぐっ」
 すりすりとすり寄っていったセシル・フォークナーが、チャージブレイクの一撃で、ゲブー・オブインを気絶させました。
「たわいないですわ。これで、セクシーランジェリーは全て私の物。やはり、パンツ四天王の方が格上。だって、おっぱい四天王はまだいませんもの。そうそう、簡易更衣室貸してくださいます」
「ああ、いいぜ。商売敵を片づけてくれたから特別サービスだ」
 ほくほくしながら、国頭武尊が言いました。
「うう、イングリットも狙われるにゃー。怖いにゃー」
「いや、君は敵の数に入ってもいないから」
 頭をかかえて身をちぢこませるイングリット・ローゼンベルグに、国頭武尊が呆れたように言いました。
「下着ちょうだーい。四人分よ、四人ぶーん!」
 そこへ、新たな客が駆け込んできました。