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リアクション
■決戦!? 業者一味(?)を確保せよ!
「ううむ……まさかパンクしてしまうとは。これではしばらく動けそうにありませんね」
――大荒野の道にて、一台の出虎斗羅が足止めを食らっていた。というのも、どうやら急ぎすぎていたために岩の出っ張りに気づかず、タイヤをパンクさせてしまったのだ。
現在、この出虎斗羅の所有者である悪徳業者がタイヤ交換を進めている。しかし、慣れない作業のためかまだしばらくはかかりそうである。
「しかし、相変わらずこの『ヒプノシス商法』は簡単に稼げますね。早くこれを直して、物を取りに戻らなければ……」
……この悪徳業者はパラ実の卒業生であり、超能力者(サイオニック)として活動していたようだ。
その時に覚えた『ヒプノシス』を何かに生かせないか、と思い始めたのが催眠誘導による詐欺行為。これがあれよあれよと成功し、今では『ミイラのトシ』という自称で何件も詐欺行為をしているらしい。ちなみに、なぜミイラのトシかというと、商談の際に顔を包帯でグルグル巻きにしているところからそう自称しているようだ……。
次はどんな粗悪品を売りつけようか考えながらタイヤ交換を進めていた――その時。悪徳業者はふと上空を見上げると……何かが、飛んでいる。
「こちらダリル、悪徳業者を発見した。ポイントを送信するから全員すぐ来るように伝えてくれ」
――ダリルとルカルカだ。発見情報は『情報攪乱』の合間を縫ってすぐに伝わったのだろう、えらい勢いで他の捜索組も集まりだしてくる。
「ま、まずい……!」
自分を捕まえにきたのだと察した悪徳業者は、タイヤ交換を中断してすぐ出虎斗羅に乗り込んで発進しようとする――が。
「逃がすかぁーーーーっ!!!」
セレンフィリティが駆る小型飛空挺ヘリファルテの機動性を生かした急降下で距離を詰めながら、『ライトニングウェポン』を付与した擲弾銃の弾丸を出虎斗羅のコンテナ部分へ撃ちこむ!
「あーっ! そのコンテナには金がぁっ!」
フィリスはどうやら『トレジャーセンス』で悪徳業者が巻き上げたお金の場所を察知してたらしい。報酬となりえるもののピンチに思わず声を上げてしまうフィリスを、浅ましそうな視線で存英が見ていた。
「――撃ち落せ!」
「了解ですっ!」
……が、セレンフィリティの弾丸は何者かの『グレイシャルハザード』によって斬り落された。
「あたしの邪魔をするなんて、どこの誰よっ!?」
「どこの誰と聞かれれば……説明せねばあるまい!」
セレンフィリティが怒りの声を上げる。……弾を斬った影響で発生した煙が晴れると、コンテナ部分の上に――眼鏡をかけた白衣の男、ドクター・ハデス(どくたー・はです)を中心に、ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)とアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)の計三名がドンッ! と立っていた。
「我が名は悪の秘密結社オリュンポスの大幹部ドクター・ハデス! 骸骨マスコットの独占販売を企む悪を倒すため、ここに参上! フハハハハハハッ!」
……面倒くさそうなのが現れた。捜索班は全員そう思ってしまう。
「卸問屋よ、ここは悪の秘密結社オリュンポスが抑える! だから先に行くがいい! そして無事に卸問屋が逃げ切れた時には、こちらとの骸骨マスコットの専属契約をお願いしようではないか!」
――どうやら、ハデスの目的はあの骸骨マスコットを手中に収め、悪の秘密結社オリュンポスのマスコットキャラクターとして売り出すつもりらしい。……なんというか、残念なセンスが完全露呈されてる気がする。
「わ、わかりました!」
口ではこういう悪徳業者ではあるが、心の内では(なんか知りませんが、金づるが舞い込んで来ました。高く売りつけてやりましょう)とか思っていたりする。悪徳業者は少しでも逃げるべく、パンク状態にも関わらずアクセル全開で前進を開始し始めた。
「卸問屋の撤退を援護する! いくぞ我が部下たちよ!」
「かしこまりました、ご主人さ――じゃなかった、ハデス博士。これより、追跡者に対する射撃、及び卸問屋様の撤退援護を行います」
ノロノロと動き出す出虎斗羅から颯爽と降りたハデス一行。すぐさまハデスはヘスティアに指示を出すと、ヘスティアは背中に背負った三つの六連ミサイルポッド――通称・巨大武装ユニットという……を、『弾幕援護』『破壊工作』を使った状態で一斉発射した!
飛び交うミサイルの雨あられが強力な弾幕を作り、強化光翼や様々な飛空機械に乗る捜索班たちは避けることを重点に置いて、思うように動けずいる。
「あいつらのおかげで、自供させる必要もないな……止まれっ!」
「報酬を逃がすかってんだよ!」
『行動予測』で弾幕を掻い潜りながら、出虎斗羅の逃走する先へ銃を撃ち込んで足止めをする。同様にフィリスも『シャープシューター』を使ったRPGによる遠距離狙撃……という名の爆撃でそれを援護する。足止めはうまくいったようで、爆発に驚いた悪徳業者がハンドルを大きく切ってしまい、タイヤが激しく滑り、車体を横にしてしまった。
「やれやれ、そんな援護になってない爆撃で迷惑かけるなよ? あくまでも業者を捕まえるのが目的なんだから」
「うっせー! 存英の心配したくねぇんだ、とっとといきやがれ!」
減らない口喧嘩をしつつも、存英は弾幕を『先の先』や『神速』に『残心』、さらにダリルが全員に使った『ゴッドスピード』の効果で目にも見えぬ速さで潜り抜け、業者確保の妨げになるハデス一行……ヘスティアへ接近していく。
「――邪魔するなら、少し痛い目に遭ってもらうぞ?」
「」
ヘスティアに向けて『鳳凰の拳』をぶつけようとするが……その拳は、アルテミスの剣によって防がれてしまう。
「けほっ、けほっ……そこまでですよ! 罪もない卸問屋さんを脅迫し、骸骨マスコットの独占販売権を得ようなんて――このオリュンポスの騎士、アルテミスが許しません!」
……なんか、事実がかなり歪曲してるような気がするが、そんなことを言っている場合ではない。すぐさま存英はアルテミスと距離を取り、わずかながら様子を見る。
「って、ちょっとぉっ!? 弾幕かすってます! グレイズってますって!」
だが、ヘスティアのミサイル弾幕は激しさを増していた。アルテミスの頬をかすったりと、よほど精度は落ちてきているようだが。
「――やっと追いついた! 悪徳業者はどこだぁ!」
そこへようやくアッシュや狐樹廊たちの後続組が到着。なにやら戦闘が起こっている様子に少し驚くものの、すぐに本来の目的である悪徳業者確保に動く。
「こっちは俺らが抑える! グロックたちは業者のほうを!」
「わかった!」
アルテミスの気を引いている存英や、ヘスティアの攻撃を陽動するルカルカ、フィリスたち。そのおかげで、薄くなりつつある弾幕の中をアッシュたちは抜け、出虎斗羅から逃げようとする業者を追うダリルたちと合流しにいく。
「ダリルたちの邪魔はさせないんだからっ!」
ルカルカは『サンダークラップ』や『龍飛翔突』でヘスティアやアルテミスに攻撃を仕掛ける。Pキャンセラーでヘスティアの『弾幕援護』などのスキルを封じ、徐々に捜索班側の好勢の兆しが見え始めてくる。
「くぅっ!? お下がりください、ハデス博士!」
弾を撃ち尽くしたのか、巨大武装ユニットをパージしたヘスティアは機晶姫用レールガンによる後方援護射撃へ攻撃方法を変更し、足止めを兼ねた抵抗を続ける。一方のハデスは、元々後ろから指示を送っているだけであったりする。
「弾幕が薄くなってるぞ! そっちから攻撃が来る、避けろ! 下がりつつ撤退の援護を――」
「邪魔よっ!」
悪徳業者の撤退を手伝うハデスに、セレンフィリティの一撃(グーパンチ)が炸裂。攻撃されると思っていなかったのか、思いにもよらないほど空高く飛ばされてしまう。
「がふっ!?」
そのままキラーン☆ と星になって……とはならなかったが、だいぶ遠い所へ落ちてしまうハデス。それに気づいたのか、ヘスティアとアルテミスは攻撃をやめ、ハデスの元へと走っていってしまった。もとより、捜索班の目的は悪徳業者の確保なのでイレギュラーである彼らを追うつもりは毛頭ないようであった。
「ご、ご主人さ――じゃなかった、ハデス博士大丈夫ですか!?」
「く、くそ……今回は失敗に終わったが……次こそは……次こそは、あの骸骨マスコットを……! ――がくっ」
そのまま、かくりと気絶するハデス。……悪の花がまた一輪、散った。だが彼らはしぶとく復活し、襲いかかってくることだろう。ゆけ、悪の秘密結社オリュンポス! 骸骨マスコットは自分で作ったほうがいいような気がするぞ!
――さて一方。出虎斗羅の足を完全に封じ込められた悪徳業者は車から降り、走ってその場から離れようとしていた。
「……あ、稼いだ金はコンテナの中……!」
「待てぇぇ!」
すごい勢いでアッシュが走ってくる。……コンテナ内にあるお金は諦めたほうがよさそうだった。
「観念しろ、もう逃げられないぞ」
さらに回り込むような形で上空からダリルとルカルカの二人が降りてくる。――完全包囲されたと知り、業者はその場でへなへなと座り込んでしまった。
「捕まえる前にまずは一発ぶん殴るっ!」
「悪は許さねぇ! 食らえ俺様の悪砕鉄拳!」
「ちょっと! 二人とも落ち着いて!」
我先に悪徳業者に制裁を加えようと、拳を作って殴ろうとするセレンフィリティとアッシュだったが、それをセレアナが何とか抑えている。セレアナの気苦労が二倍になる中、ダリルは悪徳業者に手錠をかけていた。咄嗟に『ヒプノシス』をかけられないよう、存英の『イナンナの加護』で防ぎながらの作業となった。
「これでこっちは一件落着……かな?」
ルカルカの言葉に、捜索班はひとまず安心する。あとは店主の所へ連れて行き謝罪させた後、国軍へ引き渡せば完全に捜索班の仕事は終わりとなる。
悪徳業者が暴れださないよう注意しながら、捜索班たちは空京へ戻ることにしたのだった。
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