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リアクション
■踊る大荒野戦 悪徳業者を確保せよ!
――契約者たちの朝は、早い。
日も明け切らぬ早朝。雑貨店の前には様々な理由を持った、店主のチラシやらなにやらでやってきた協力者たちが集まっていた。
「買出しにきただけなんだけどな……ま、店主に泣きつかれちまったし仕方ねぇか」
「報酬が出るらしいから、受ける分には問題ない。だが……報酬は高いぞ?」
……中には、霧丘 陽(きりおか・よう)に頼まれて買出しに出ていたところへ協力を頼まれたフィリス・ボネット(ふぃりす・ぼねっと)と十河 存英(そごう・まさひで)もいたりする。「泣きついた覚えはないぞー」と、店主のツッコミが入ったりしてるが、フィリスはガン無視である。
「じゃあすまないが、業者のほうと店の経営のほうは任せた。俺はあの疫病神を売るほうに付くんでな」
各チームへ色々と説明を終えると、店主はそう言って骸骨マスコット販売組の準備に加わっていった。それに合わせ、他のチームも準備を始めていく。
悪徳業者を確保するチームもまた、足取りを追うために業者が使っていたという事務所へ向かうのであった。
「絶対に捕まえてやる……捕まえたら、一発ぶん殴ってしばき倒す! 軍法会議で即日死刑にしちゃえばいいのよ!」
「おう、その通りだ! とっ捕まえたら俺様にも一発ぶん殴らせてくれよ!」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、悪徳業者確保に燃えていた。……燃えている、というよりは暴走に近いものがあるが。そしてそれにアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)も呼応してるために燃え具合は二乗に近いものがある。
それをなんとかセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が抑えながら、またたび 明日風(またたび・あすか)と共に聞き込みを進めていた。
明日風は『人の心、草の心』で草花からも話を聞いているようだが……あまり、有用なものは得られそうになかった。しかし、聞き込みは足で稼ぐもの。ものぐさながらも、他の人や草花から聞き込みを続けていく。
――聞き込みが続く一方、業者が使っていたという事務所へやってきたルカルカ・ルー(るかるか・るー)と空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)の二人。よほど急いで出ていったのか、もぬけの殻といっても机や応接テーブルなんかは残っているようだ。
「たくさん情報を見つけよう! これだけあればきっと手がかりを掴めるよ!」
「ええ、再犯や模倣犯によって空京の名に傷を付けられては困りますから。しっかり調べ上げましょう」
二人は声を掛け合うと、残っている様々な物品へ『サイコメトリ』を使って、染み付いた情景を読み取っていく。……幾つか調べていくと、応接ソファへの『サイコメトリ』から、業者が店主へ『ヒプノシス』を使って催眠術をかけ、骸骨マスコットを買わせていたことが判明した。しかし、肝心の顔は店主に覚えられないためか包帯で顔の半分以上をぐるぐる巻きにしていたために全てを確認できなかった。
「む、これだと『呪詛』で罰を下せませんね……」
『呪詛』は相手の姓名・顔・全身が判明していないと使えないスキルだ。今の状態では姓名と顔がわからず、このままでは『呪詛』は使えそうにない。
事務所の中をある程度『サイコメトリ』した二人は、続いて駐車場の調査に入る。業者はトラックを持っていた、とのことだったので駐車場を『サイコメトリ』してその情報を得ようということらしい。
……事務所の時と違い、こちらはすぐに情報を得ることができた。トラックの外観は……どう見ても、パラ実卒業生の多くが乗る出虎斗羅であり、そのナンバーもすぐに把握することができた。
「うわー……ここまでわかりやすいのもアレだよね。と、とにかく連絡しないと」
ルカルカは呆れながらも、トラックの情報やセレンフィリティたちが聞き込みで得た情報を、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)や狐樹廊の提案により、情報まとめ役に抜擢されたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)へ連絡していくのだった。
さらなる聞き込みの結果、出虎斗羅が大通りを通ってシャンバラ大荒野のほうへ向かっていった事が判明。さらに業者の名前もわかり、その筋では有名な悪徳業者ということも判明した。その情報をまとめたリカインが、情報共有のためその旨を業者捜索チーム全員へ連絡していく。これにより、情報の聞き込みから悪徳業者の追跡へと行動を変更することとなった。
「うーん、逃げたってことは売れないのを知ってたのかな」
「だろうな。ただでさえ説明を故意に怠ったり適合性原則違反をしている上に違法である催眠誘導をやっているんだ。これらの観点から見て、詐欺として契約の取消や錯誤による契約の無効を主張、返金を求めることもできるし、違約金も追加できるはずだ」
「え、何、てきごーせいげんそ……な、何の呪文?」
「……とにかく、捜索を続けるぞ」
ダリルの口から飛び交う専門用語にぽかーんとしてしまっているルカルカに、やれやれと思いながら連絡を切るダリル。彼らは今、強化光翼による高速移動により北へ向かい、シャンバラ大荒野の道を走っているであろう悪徳業者の出虎斗羅を捜索していた。
フィリスも同様に強化光翼を使った高速移動でいち早く大荒野の上空を飛び、同伴していた三人の飛装兵も使い、フルに捜索する。もし何かあれば陽からお守りから渡されている『禁猟区』が反応を起こすだろう。
(リカインだけならまだしも、存英の野郎にも報告しなきゃならねぇのはシャクに触る、というかすっげぇ嫌だけど仕方ねぇ! とっとと見つけてやる!)
見つけ次第、後続で来る捜索班側に付いている存英へも連絡しなきゃならないと考えるだけで嫌そうな顔をするフィリス。しかしその気持ちを抑え、今は捜索に全力を尽くすのだった。
「絶対逃がさないわよっ……!!」
鬼気迫る勢いで小型飛空挺ヘリファルテを駆り、悪徳業者を捜すセレンフィリティ。後方から普通の小型飛空挺で追うセレアナも、そのフォロー……というより、抑え役に必死である。
……なぜ彼女がここまで燃え上がっているのか。それは彼女の背負うトラウマからなるものらしい。どうやらインチキ商法に引っかかったことがあり、今回の騒動と重なる部分があったのだろう。悪徳業者へ完全な憎悪を向け、粛清するつもりのようだ。
「ちょっと言葉、間違えちゃったかな……」
……先ほども、セレアナがセレンフィリティを抑えるつもりで「何もしないで月収一万Gゲット、とか普通ありえないでしょ」とツッコミを入れたら、逆効果となってしまい、暴走させてしまったらしい。それが今に至ってるわけで、セレアナは溜息をつくほかなかった。
――捜索を続ける中、ある問題が出てきた。何者かが『行動予測』『情報攪乱』を使って、捜索組の情報伝達を妨害してきていたのだ。とはいえ、受信妨害による連絡の聞きづらさが目立つ程度ではあるのだが。
「誰か協力者がいるのかも……一体誰が?」
まとめ役として動くリカインはこの状態に首を傾げながら、なんとか惑わされないように捜索班からの情報をピックアップし、まとめる。
と、その時。ダリルからの連絡が入り、リカインはそれに耳を傾けた。
「――出虎斗羅をみつけた!? うん、わかった……送られたポイントを全員に連絡するわ!」
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