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【冬季ろくりんピック】情け無用! アイス騎馬ホッケー!

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【冬季ろくりんピック】情け無用! アイス騎馬ホッケー!

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第二章

 開始早々、パックを取り突き進む芦原 郁乃(あはら・いくの)。そしてその後ろには荀 灌(じゅん・かん)の姿。
「一気にいっちゃうんだから!」
「やってやるですっ!」
「開始早々動いたのは西シャンバラチームの郁乃選手と灌選手。このまま先制点を奪えるでしょうか?」
「ここからさきはとおさせへんで!!」
 そんな二人の前に出たのは奏輝 優奈(かなて・ゆうな)
「一人で止められるほど私達甘くないんだから!」
「ふっふっふ、うち一人じゃないで! スサノオ達頼むで!」
 優奈の言葉と共に現れた鋼鉄の軍勢。『召喚獣:不滅兵団』が現れる。一番前の赤いスカーフを巻いているのがスサノオ……らしい。みんなしっかりスティックを持っている。
「スサノオ、あの子達を止めて!」
 スサノオが小さく頷くと、スサノオをその後ろの兵十人程度がスティックを構え向かってくる二人へ突撃する。
「わわわっ! そんなのもありなのぉ!?」
「審判どうかナ?」
 実況席のキャンディスがコートで主審をしている佳奈子にふる。
「そうですね。妨害行為ではなく純粋なブロック行為ですので。後はなんでもありのホッケーですから。有効です」
「……ということデ、頑張って避けるネ」
「そんなぁ!」
 そんなやり取りをしている間にも、ホッケーのスティックを持った十一人の鋼鉄の兵が郁乃達に迫る。
「ひっ!」
「わわっ!」
 左右に分かれる二人。スサノオ達はまっすぐにパックを持っている郁乃の方へ向かう。
「…………!」
「こっち来ないでぇ!」
 後ろから迫る無言の圧力。とっさに灌へパス。それを見たスサノオ隊。綺麗なフォームで方向転換。灌を追いかける。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「これは……、とても怖いですね。実況席からでも見て分かりますが、追いかけられている本人はもっと怖いでしょう」
「そうだな……。武器が剣ではなくスティックというところもシュールだが、無言でしかも大量の兵隊に追っかけられるのは恐怖以外の何者でもないな」
「うぅ……」
 あまりのプレッシャーに負け、一度味方陣営へと戻る灌。
「一度態勢を立て直さなきゃ……」
 郁乃も一度、自分の陣営へと戻る。
「良い判断ネ。あのまま行ってれば、逆に取られてたネ」
「みんな、ありがとなー!」
 優奈の言葉にスサノオが頷くと、兵隊達が消滅した。

「さぁ、攻撃は未だ西シャンバラチーム。脅威の防御陣を見せた東シャンバラチームに対し、どういう攻めを見せるのでしょうか?」
「少数で攻めれば、再び優奈選手の召喚するスサノオ率いる兵団に潰されてしまうからな」
「西シャンバラチームはどうするカナ? 見ものですヨー」
 パックを持っているのは再び郁乃。
「もう一回……!」
「このまま終われないですっ!」
「その攻撃、俺達も参加しよう」
「任せるでふ」
 十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が二人の元へ。二人とも『翼の靴』、『レビテート』で各々空に浮いているため、その動きに無駄がない。
「見ていた限りだと、数いるとはいえ、別々で動けないようだ。うまくパスをまわすれば掻い潜れるはずだ。慌てず対処すればいけるはず」
「なるほど、よし! それで行ってみよう!」
「行くぞ!」
 郁乃達が再び攻めに入る。
「なんど来たって同じやでー!」
 優奈の前に召喚されるスサノオ隊。スティックを構え、パックを持っている郁乃へ向けて綺麗なフォームを取りながら滑っていく。
「え、えっと……! それ!」
 郁乃が宵一へとパスを送る。スサノオ隊もそれを見て方向転換――
「はっ!」
 すぐさま灌へとパスを送る。スサノオ隊も慌てて方向転換。
「ほう、パス回しで命令に忠実なスサノオ達を止めるか。良い戦法だ」
 ヴィゼントの感心した声の中四人は着実とゴールへ近づいていく。スサノオ隊はすでに対処出来ず遅れ気味状態。
「やるなぁ……。でも、守備はうちだけじゃないんやで」
「出番だね!」
 後方に控えていたウル・リネル(うる・りねる)が『賢狼』と『シルバーウルフ』数匹を引きつれ登場。
「いっけー」
 ウルの合図と共にウルフ達が四人を強襲。
「今度はウルフか……!」
「これはやっかいでふ」
 知能を持つウルフは各自散開。動きを封じられる四人。
「今だね!」
 『地獄の天使』で空から見ていたレン・リベルリア(れん・りべるりあ)が『サイコキネシス』で灌の持つパックを弾き飛ばす。
「東シャンバラチーム、見事なブロックを見せました!」
「人数が少ないなら増やせば良い。良い考え方だな」
 パックは東チームのゴール前にいる清泉 北都(いずみ・ほくと)へ。
「三人ともお見事。さぁ、反撃お願いしますねっ!」
 北都が前線にいるネノノ・ケルキック(ねのの・けるきっく)へ。
「よしっ! 出番だ!」
 ネノノが、単騎でゴールへ。
「おっと、東シャンバラチームが一気に攻めてきた! 西シャンバラチーム守備が追いついていないぞ!」
「手に入れた情報にヨルト、西シャンバラチームのほぼ全員ガ、攻撃メンバーになってるネ」
「これは西シャンバラチームピンチか!?」
 ほぼフリー状態のネノノ。対するは西シャンバラチームのキーパー六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)
「リラードさんをお願いします」
「ここでキーパーの優希選手がパビモン リラード(ぱびもん・りらーど)を導入! 何か作戦があるのか!?」
「ティー、リラードを」
 鉄心がティーへと指示を飛ばす。
「了解です。リラードさん。頑張ってきてくださいね」
「任せるリラ!」
 ティーが優希の方へとリラードを投入。
「これで一点目!」
 その間にもネノノはシュートフォームに。
「ごめんなさいね」
「リラ!」
 優希がリラードを叩いて分身させる。
「それっ!」
 そして、それをネノノのギリギリ届く位置に打ち出す。
「えっ!?」
「優希選手、リラードさんをネノノ選手の近くへ! これはどういうことなのでしょう!?」
「球を相手に渡しているようなものネ。下手すると大量失点も辞さないネ」
「よし!」
 ネノノもこのチャンスは逃さない。一度シュートフォームを解き、飛んできたリラードも打とうとするも。
「させませんよ!」
 優希がネノノの前に出てプレッシャーをかける。
「っ!」
 欲を裏目に取る。それが優希の作戦だった。相手が飛んできたリラードに気を取られたら、打たせずパックを回収すれば自分ゴールに球が飛んでくることはない。
「お願いします!」
 すかさずパックをかすめ取り、前にいる郁乃達へカウンターのロングパス。
「チャンスだね!」
「次はいれるぞ!」
 再び攻めへと転じる四人。
「わわっ!」
「まにあわへん!」
 とっさの事に反応できないでいる守備メンバーをすり抜けゴール前へ。
「いくです! それっ!!」
 『抜刀術』から打ち出されたシュート。ゴール前には北都。
「……よしっ!」
 『両利き』の北都。二本のスティックを構える。
「はぁっ!」
 見事なスティックさばきでパックをはじき飛ばす。だが、飛んでいった先にいたのはリイム。
「リラードをお願いするでふ!」
「リイム選手がパビモン リラードを要求。ティーさんお願いするぞ!」
「了解です!」
「リーダー!」
「あぁ!」
 リイムが、パックとリラードを『サイコキネシス』で浮かす。
「はあぁっ!!」
 その間に宵一が『チャージブレイク』を発動。そしてシュートフォームへ。
「あの構えは!?」
「一本足打法ネ。野球で使われるフォームだけド、この競技で使うトハ、驚きネ」
「せやあぁぁぁぁ!!」
「リラーーーー!!」
 そのフォームから繰り出された強力なシュート。
「二つはまずいかな……」
「我も手伝う。まだ諦めるのは早いぞ」
 モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)が北都と共にゴール前へ。
「そうだね……。よし!」
 高速で飛来するパックとリラード。
「これでっ!!」
「ふんっ!!」
 が、それをなんとか弾き返す二人。
「なんと、はじき返した!!」
「まだでふ!」
 弾き飛ばされたパックとリラードを『サイコキネシス』で拾うリイム。
「もう一回でふ!」
「あぁ!」
「私もいくですっ!」
 再び、一本足打法の構えを取る宵一。
「バランスとって……よし、いくですよ!」
 一緒に一本足打法の構えを取る灌。そこにリイムがパックとリラードを飛ばす。
「喰らえぇぇ!!」
「受けてみろです!!」
 ダブル一本足打法から再び放たれた球が高速で北都達にせまる。
「なんとか……止めてみせるっ!」
「くっ……!」
 キーパー二人が奮起するも、一つを弾き飛ばすのがいっぱいいっぱい。受け流せなかったパックがゴールへと突き刺さる。
「ご、ゴールです! 西シャンバラチーム、先制点を奪いました!」
「ふむ、見事なシュートだっだ! 優希選手も相手の欲をついた戦法には恐れ入った! この調子で盛り上がっていこうぜ! ボンバー!!」
「やったですっ! いたた……」
 シュートを打った灌。もちろん氷の上で片足で立って思い切り打てば最後はすっころぶ。喜びながらもぶつけた腰をさすっていた。
「あぁ! 二点取れなかったのが残念だが、貴重な一点だ! ほら、立つと良い」
「ありがとうです」
 『翼の靴』で浮いている宵一は何も影響なし。灌に手を貸し立たせてあげる。
「よーし! この調子で行こう!」
「おーでふ!」