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機械仕掛けの歌姫

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機械仕掛けの歌姫

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 第八章 二奏、戦場狂想曲


 大介が率いる部隊と対峙した面々は、襲い掛かる幾多もの銃弾に晒されていた。
 遊撃部隊、と呼ばれるだけのことははあり、その構成員の五分の一以上は狙撃手で構成されていた。

 その一番の標的となっていたのは、詩を歌っている歌姫達だ。
 それは戦場で彼らが歌い始めたと同時に、隊長である大介の動きが鈍り始めたことに起因する。
 また、彼らの詩は幸せの歌を併用していることもあり、戦場で戦う全ての者達に力を与えているからでもあった。

 その為、彼らを守る者達は鬼のような弾幕から楽士隊を守っていた。

「……ッ!」

 神崎 輝(かんざき・ひかる)は一旦歌うことを止めて、自分達の最も前で指揮をするフランを守ることに従事していた。
 殺気看破とイナンナの加護の併用して、襲い掛かる銃弾の位置と方向、場所を明確に察知。
 歴戦の防御術で立ち回りながら女王のバックラーで一発いっぱつ丁寧に受け止めていた。 

 それは、輝のパートナーである一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)も同じだった。
 瑞樹も歴戦の防御術で立ち回り、殺気看破とイナンナの加護を併用する。
 846プロ専属ボディガードという称号に恥じない、プロフェッショナルな護衛を行っていた。

 アインはオートガードを常時発動で、死角からの狙撃にもいつでも対応。
 自ら身を挺してフランや仲間たちを危険に晒す銃弾の嵐を受け止める。

 永谷は傷ついた仲間達にリカバリを唱え、傷を癒していく。
 そして、自分また傷を負いつつ味方を守る盾になる。

 セリカは主に回復に努め、ヒールで味方を治療していた。

 歌姫達に向けて飛来する銃弾の嵐。
 その中の一発の銃弾が、フランツに向けて飛来した。

「……我が友は討たせまい」

 讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)は奈落の鉄鎖でその銃弾の弾道を曲げて地へと落とした。
 そして顔だけ振り返り、フランツに向けて言葉を発した。

「汝の望むまま歌え」

 顕仁のその言葉に、フランツは歌いながらウインクを返す。
 そのフランツの返事に、顕仁は僅かに口元を吊り上げて答える。

 傷でぼろぼろになりながらも、詩を絶やさないために彼らは楽士隊を守り続けていた。

 ――――――――――

「楽士隊を守る人達の負担を減らしてあげないと」

 シエル・セアーズ(しえる・せあーず)はそう呟きながら、神の目を発動。
 シエルを中心として強烈な光が発せられる。そして、シエルは周囲に隠れている狙撃手を炙り出した。

 フラン達の最も近くにいる狙撃手は、左右に二人ずつ。
 それを察知したシエルは左の敵にはサンダーブラスト、右の敵には我は射す光の閃刃を放った。

 天が裂けそこから生み出された一筋の雷と戦女神の威光を光の刃が敵の狙撃手に襲い掛かる。
 落雷に直撃した者は数万ボルトの電撃を浴びその場で戦闘不能に陥った。
 同じく、光の刃に切り裂かれた敵もその場に倒れ伏せる。

 一部の狙撃手の狙いが、歌姫達からシエルに切り替わった。
 途端、シエルに向けて数多の弾丸が飛来する、が。

「あ、危ない、よ……ッ!」

 どこか震える声を発しながら、勇気を振り絞り霧丘 陽(きりおか・よう)がシエルの前に立つ。
 戦場の恐怖に怯える陽はこれでもれっきとした冒険者。いくつもの冒険を経て身体で覚えた歴戦の防御術で、両手に装備した盾を巧みに操り銃弾の軌道をそらしていく。
 陽がシエルを銃弾から守り抜くと、シエルは元気良くお礼を言った。

「ありがとうね! 陽さん」
「ど、どういたしまして……!」

 シエルと陽は守った側と守られた側が反対のような対応を見せつつ、言葉を交わす。
 そして、陽は自身が持った禁猟区のお守りが危険に反応したのを感じてビクッと身体を硬直させた。

「……ね、ねぇ。シエルちゃん」
「どしたの? 陽君」
「よ、余裕ありそうなら……逃げちゃ……だめ?」
「ダメ」

 シエルにそう即答されて、陽は泣きそうな目になるのだった。

 その二人を狙った狙撃手達。
 スコープ越しに二人を確認しながら、銃弾を装填しようと手を動かすのとほぼ同時。

「にゃー」

 猫のような鳴き声が耳元に届き、狙撃手達は一斉に声の主のほうを振り向いた。
 そこにいたのは神崎 瑠奈(かんざき・るな)。瑠奈は猫耳をぴょこぴょこと動かし、尻尾をぶんぶん振る。

「まったく、動きが鈍いですね〜。そんなんじゃボクは捉えられないのにゃー」

 やけに間延びした口調で瑠奈が言葉を言い終えると、周りの狙撃手達は彼女に一斉射撃。
 四方八方から飛来する銃弾が瑠奈の逃げ道を塞ぎ、銃弾が今にも彼女を蜂の巣にしようと迫ったとき。

「空蝉の術ですにゃー」

 人並みの大きさの丸太が、瑠奈の身代わりになり、蜂の巣となった。

 狙撃手達が忽然と姿を消した瑠奈の姿を探す。が、彼女を見つけられない。
 瑠奈はと言うと即座に忍者特有の鋭い身のこなしでその場を離脱したのだった。
 瑠奈の目的は一つ。ガンガン動き回って敵を掻き乱し、可能な限り敵を引き付けるということだ。

「目的を一つクリアですにゃー♪」

 瑠奈はにっししと笑いながら、風の如く駆ける。
 隠形の術で気配を隠しつつ、超感覚の獣特有の鋭い感覚を生かし、また別の狙撃手を探すのだった。