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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

 某所、某日、ある異変が起きつつあった。

「むうううう! むううううううううううう!!」

 薄暗い実験室の手術台に寝かされているのは、変熊 仮面(へんくま・かめん)
 あくまで変熊である、繰り返す、あくまで変熊である。
 ヒーローである彼が何故こんなところで寝ているのか。
 その謎は今にも解ける。
「……いいサンプルだ。ヒーローの力を怪人に利用する。我ながら天才的アイディア!」
 変熊の前に現われたのは、白衣を着用し、黒ぶちの眼鏡をかけた男だった。
 猿轡をされている変熊の口元に、謎の男の手がかかり猿轡を外す。
「っは! 貴様! 俺を捕らえてどうするつもりだ!」
「知れたことを! 我が野望の第一歩となってもらうのだよ!」
「くっ! この鎖を外せ、外すんだ!」
「フゥーハハハハハ! そんなことをするはずがないだろう。貴重な実験サンプルに」
「実験サンプル……だと……?」
「さあ、大人しく改造されてもらうぞ。ヒーロー怪人第一号としてな!」
「お、己! 極悪非道のマッドサイエンティストめ! 俺様は貴様らなぞに屈指はしないぞ!」
 必死に体を震わせて脱出を試みる変熊。しかし、鎖はびくともしない。
 ヒーロー変熊の力を持ってしても鎖は断ち切れない。薄暗い実験室にはじゃらじゃらという音だけがしばらく響き続けた。
「はぁ……はぁ……」
「ふむ、大人しくなったか。丁度いい」
「き、貴様……まさかこれを狙って」
「さて、どうだかな変態仮面。フーハッハハハハァッ!」
「許さん、許さんぞー! あと変態ではない! 変熊だ! 熊だ!」
「では改造するとしよう。おい、押さえておけ」
 謎の男(実家は墨田区)の一声で、薄らぐらい影から何人か出てきて、変熊の体を押さえつける。
「やっ、やめろ!」
「最早聞く耳などもたん。それでは改造開始」
「貴様らっ! やめろ、や、ひゃめ……」
 抵抗むなしく、着々と改造を施されていく変熊。
「よし、ここにすごい装置をつけて……わかりやすいよう、体に説明書きをしておこう。あとはこのカブトムシをここにつけて」
 謎の男(本名、高天原 御雷)は変熊の股間辺りに生きたカブトムシを設置。
「痛っ、かゆっ! 足のとげ刺さってるってば!」
「よし、出でよカブトンガー!」
 叫びと同時に電流が流れる。勿論、カブトムシがいる辺りを重点的に。
「ぎゃー!」
 体をぎっこんばったんと、魚のように振るわせた後、ふにゃりとなる変熊。
「ふむ、予定通りとはいかなかったか。もうこいつは使い物にならんな。廃棄するか」
「く、くそぅ……」
 薄れる意識の中、変熊が最後に見たのは。
 薄ら笑う、何とかハデス(ドクターっぽい)の姿だった。


「さあさあ皆さん! 大変なことになってまいりました! あっ、実況は私、ルカルカ・ルーが担当させてもらってまーす!」
 【空飛ぶ箒シュヴァルベ】に乗って、異様な雰囲気をリポートするのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。
 そして彼女が飛んでいるその下には、総勢50名近くの契約者たちの姿があった。
「あーっと! 出てきました、今回の原因の張本人である人物が!」
ルカルカが指差した人物、その男は白衣の男だった。
『フーッハハハハ! よくぞ来てくれたな! ヒーロー諸君! 待ちわびていたぞ!』
 白衣を風にたなびかせて、威勢良く喋りだす謎の人物。
『そして、この時を待っていた! よおおおおく聞くがいい! 我ら、秘密結社オリュンポスは今ここに宣言する!』
 右手を大きく前に突き出した、謎の男(秘密結社オリュンポスのボス)は高らかに叫ぶ。
『この世界を、我らが頂く! フゥーハッハハハハごっほごほっ!』
 高笑いのし過ぎから咽てしまった謎ハデスだが、遂に彼は乗り出したのだ。彼の野望、世界征服に。
『……おっほん! 止めたくば全力で来るがいいぞ、ヒーロー諸君』
 言い残し、身を翻して機動城塞オリュンポス・パレスの中へと消えていった。
 それをきっかけとしてヒーローたちが一斉にオリュンポス・パレスへと向かう。
 そうはさせまいと行く手を阻む怪人たち。
 こうして、ヒーローvsオリュンポスの大規模バトルが幕を開けた。


「さあ、ついに始まってしまったヒーロー対オリュンポスのバトル。現場を見てみましょう! 現場のフィーア・四条さーん!」
「はーい! こちらフィーア・四条だよ! 両者走り出して、もうすぐにでもバトル勃発の寸前だ!」
 ルカルカの問いに答えたのはフィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)だ。このバトルを実況するためにこの場に来ていたのだ。
「あーっと! 早速始まったー! 第一戦線同士がぶつかり、遂にバトルの火蓋が切って落とされたよ!」
 そう実況するより早く、バトルの中に身を投じた者。
 【ツインバイク】に乗っていち早く戦線に乗り出したのは、クコ・赤嶺(くこ・あかみね)赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)だ。
「クコ、それに朔望、一体今度は何に影響されたんですか?」
「細かいことはいいのよ! それよりも秘密結社オリュンポスをどうにかしないと!」
『そうですよ! あくのひみつけっしゃは、ひーろーたちにやられるんです! クコと一緒に見たあにめでやってました』
 霜月に纏われており、魔鎧の状態で話すのは戦闘舞踊服 朔望(せんとうぶようふく・さくぼう)
「成る程、そういうことですか。ですがクコ、ヒーローになるなら周りへの被害は最小限に抑えて……」
「細かいことはいいの! さあ、怪人たちが来たわよ!」
 クコが見ていたもの、それは怪人たちの群れ。【ツインバイク】を乗り捨て、怪人たちの眼前に立つクコ。それに合わせる霜月。
「バイクだってタダじゃないんですから」
「平気よ、あの程度で壊れるのだったらとっくの昔に壊れているわ」
「普通に止めなさいと言ってるんです」
「さあ、かかってきなさい怪人ども! 私が叩きのめしてあげるわ!」
 襲い来る怪人たちを相手に生身で戦闘を開始するクコ。並みの怪人たちはあっという間に蹴散らされてしまう。
 だが、今回のバトルは並以上の相手もいるのだ。
「グハハ! 復活してみれば、面白いことになってるじゃねぇか! このブリッツファング様が手を貸してやるぜ!」
 モブ怪人たちを押しのけて前に出たのは古代遺跡より復活したブリッツファング。
「強そうじゃない!」
「俺ほどじゃないが、貴様もいい線いってるぜぇ!」
 その言葉を最後にクコとブリッツファングが戦い始める。
 ブリッツファングから繰り出される攻撃は強力無比、自信過剰気味なその自信に見合う以上の実力を持っていた。
 さすがのクコも先ほどまでの怪人たちを倒したときのようにはいかない。
「天晴れね……だけど、これでこそ変身しがいがあるってものよ! さあ霜月! 変身よ!」
「ああ、本当にするんですね」
 他の怪人たちを相手にしていた霜月が返事をする。
 遂に、その力を解放させるときが来た。
「蒼く燃え盛る炎よ、我が身に……! 変身!!」
「朔望、行きますよ…変身」
 蒼き炎に包まれるクコと、強烈な光の中に輝く霜月。
「ブルーフォクス推参! 黙ってやられなさい!」
「決め台詞まで、やる気マンマンじゃないですか」
「ほう、妖狐か! だが狐如きじゃタイガーには敵わないぜ!」
「それはどうかしらね?」
 ブリッツファングの言葉を置き去りにして、攻撃を開始するクコ。先ほどよりも、早く強く。クコの手足には蒼い炎が灯っていた。
「ぐぅ!?」
 静かに燃え盛る蒼い炎を纏ったクコの鋭い蹴り。その熱波、重さがファングを襲う。
 クコとファングが戦ってる間に、霜月と朔望は周りにいるモブ怪人たちを倒していた。
『霜月! そこですよ!』
「了解です」
 襲い来る怪人たちも、ヒーロー化した霜月たちの前ではどうすることもできず、ただただ押されるばかり。
『霜月と一緒にひーろーになった自分は負けません!』
「そうですね、負けてはいられませんね」
 そう言いながら怪人たちを圧倒する二人。
 一方のクコはファングに善戦するが、中々倒せない。それだけ二人の戦力は拮抗していたのだ。
「やるじゃない! ブリッツファング!」
「貴様こそ、狐の分際で俺と戦うとはな! だが俺の本気はここからだぜ!」
 そういってファングは自身に帯電している電気をビリビリと起動させる。その電気を利用し、先ほどよりも爆発的に早く移動する。
「くっ!」
「喰らいなぁ! 『ボルトジェノサイドクラッシュ』!!」
「ぐぅあ!?」
「! クコ!」
 吹き飛ばされるクコ。何とか態勢を立て直すものの、与えられたダメージは安くない。
「おーっと! 今のは! 最大限に加速した状態から、回転しつつ鋭く強大な剣牙に自身が持てる最高クラスの電量を纏わせて相手を打ち貫く必殺技!」
「そう、それが『ボルトジェノサイドクラッシュ』だ。貴様も喰らうか?」
「遠慮しておきます!」
 いきなり実況に割って入ったフィーア。ブリッツファングのお誘いをきっぱりと断る。
「ルカルカさーん! ヒーローさんが怪我をしたのでこちらにお願いしまーす!」
「既に来てるよ! それ、『命のうねり』!」
 クコを回復するルカルカ。それに対して、礼を言うクコ。
「ありがとう。助かったわ」
「自分からもお礼を、ありがとうざいました」
『自分からも! ありがとー!』
「どう致しまして、でもどうするの? 相手は中々強敵みたいだよ?」
「こちらにも秘策があるわ。ねっ、霜月」
「まあ、やられた分はやり返しましょう」
「それじゃ、GO!」
 同時にスタートする二人。悠然と迎え撃つブリッツファング。
「さあ、一体どうなるんだ!」
 ファーアが叫ぶ。
「はぁぁ!」
 クコが先ほど以上、空気を裂くような鋭利さを兼ね備えた蹴りを放つ。更に、その傷口を蒼き炎が燃やし尽くす。
「ま、まだまだぁ! 俺は倒れるかぁ!」
「でしょうね。でも今回は私だけじゃないのよ!」
「そういうことだ!」
 霜月の必殺技が発動する。
「説明しよう! 霜月さんことシノディクムーンの能力は『1〜10秒間の間、身体能力を強化する』もの。それを利用して、極限まで速さを増した居合斬り。
 その速さは一瞬のうちに丸太を木屑に変えてしまうほど! これが彼の必殺技だ!」
 何故そんなことまで知っているのか、的確なフィーアの解説。
「ぐおぉっ!? があああああああああああ!!」
 その必殺技を受けた張本人、ブリッツファングは悲痛の叫び声を上げて後ずさる。誰の目から見ても、大ダメージは拭えない。
「おみごとっ! それで二人のヒーローコンビ名は?」
 ルカルカが聞くとクコがニカっと笑いながら答える。
「満月に現われる蒼き狐、フォクス&ムーンよ!」
「そんなものまで決めていたんですか」
「クハハ……このブリッツファング様が追い詰められるか……」
 最早戦うこともできないほどの傷を負ったブリッツファング。
「退きなさい。命だけは助けてあげる」
「バカを言うなよ……このブリッツファング様は誰にも負けねぇ! 俺を殺せるのは……俺だけだぁぁぁ!!!」
 ファングの体に帯電していた電気が暴走し始める。
「自爆する気!? みんな、逃げて!」
「……この時代の強き戦士と戦えて……望外だ、満足だったぜ」
 そして爆発を伴う大放電が辺り一体を襲う。その威力は地面にクレーターを作るほどだった。
 怪人こと、古の戦士、ブリッツファング。最後まで己を肯定し、信じ続けた真の戦士だった。
「……大丈夫ですか?」
「かなりの痛手ね」
「だけど、回復はしないよ」
「そうね、あいつの最後の攻撃。魂を感じた、ヒーローの魂に近い何かを」
『あんな……怪人さんも、いるんですね』
「……さあ、止まっていられないわ! この事件の主犯はまだ奥にいるんだから!」
「そうですね」
『よーし! がんばろうー!』
 そう言って、ブリッツファングとの戦場を後に、前進する三人だった。
「ブリッツファング、場所さえ違えば、ヒーローとして実況できたかもしれない。残念だよ」
「そうだね。でも平気、彼の強き戦士として戦った証は、撮ってあるから」
 フィーアはそう言い残し、ルカルカは敬礼をして、次の実況場所へと向かう。