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リアクション
第三章 思惑と思惑の狭間
ヒーローショーの後、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)は約束をしているシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)の元に向かった。
「テロリストから恋人達の時間を守るというのも、シャンバラの平和な日常を守る事になるのではないですか?」
シャーロットにそう言われて、セイニィは囮デートを引き受けたのだった。
「待たせて悪かったわね」
「いいえ、あまり気にしないでくださいね。待っている時間もなんだか大切にしたい、素敵な時間だと思うんです」
そう言って、シャーロットは微笑む。
「それでは、行きましょう!」
セイニィとシャーロットは、メインストリートに立ち並ぶショップへと足を運んだ。アクセサリーや文房具等の小物を見ながら店を回っていると、シャーロットがふとサンタの帽子の前で足を止めた。
「この帽子、セイニィがかぶったらきっと可愛いと思いますよ」
シャーロットがそう言ってセイニィに差し出したのは、猫耳のついた帽子だった。
「どうですか? 似合いそうだなって思うのですけれど」
にこっと笑うシャーロットを見て、セイニィは帽子をさっと受け取る。そしてやや俯き加減のまま自分の頭に乗せた。
「可愛いです!」
シャーロットが帽子をかぶったセイニィに対して抱いた感情は、その言葉に集約されていた。
「本当? ……ち、違うわよ! これは頼まれたからかぶってあげてるだけなんだからね!」
そんなセイニィの様子に、シャーロットは微笑みを浮かべた。
「クリスマス、か」
セイニィが帽子を手にとって、視線を送りながらぽつりと呟く。
「セイニィ。今年のクリスマスイヴの夜、なんですけれど……予定は、空いてますか?」
突然のシャーロットの言葉に、セイニィは目を丸くする。
「空いてるわよ。あんたも暇なら付き合ってあげてもいいけど、……ベ、別に空けておいたってわけじゃないんだからね!?」
そう言ってぷいと視線を逸らすセイニィを見て、シャーロットは嬉しそうに微笑みを返した。
*
その頃、店の外の大通りをリネン・エルフト(りねん・えるふと)が{SNL9998958#フリューネ・ロスヴァイセ}と一緒に歩いていた。
リネンは『テロリスト退治のため』という名目でフリューネを誘った。だがその実、最近フリューネにとって少し辛い出来事もあったので、リネンはその気晴らしになればと思っていた。
「フリューネはどこに行きたい?」
「そうね……店を回ったらカフェで何か食べたいわ」
そう言って笑顔を見せるフリューネ。リネンは、こうしているうちに片思いだとバレちゃうかしら……と思いながらも、フリューネにもう少しでも近付けたら、と思う。
「イルミネーションが綺麗ね」
木々に飾られたイルミネーションを見上げて、フリューネがそんな言葉を零した。そう言うフリューネが、リネンには少しだけ寂しそうに見えた。
どこか笑顔なのに、どこか辛さを隠しているような……。
「あのね、前にも話したけど私はフリューネに救われたわ。何があってもそれだけは本当だから」
唐突に離し始めるリネン。フリューネは、驚いたようにリネンを見つめる。
「だから、それだけは胸張ってほしいな」
「……それだけ、じゃないわ」
フリューネが、リネンの目を見て応える。
「こうして、今も私の支えになってくれて……本当にありがとうって、思っているのよ。
今日もテロリスト退治のためとはいっても、リネンに誘ってもらって嬉しかったの」
リネンは胸が詰まったような、そして高鳴る鼓動を押さえつけるように、繋いだフリューネの掌をきゅっと握り締めた。
「来年もまた、こうしていたいね」
それが、リネンに返せる精一杯の言葉だった。
ふと、リネンは二人の前をマスクをした怪しげな男に気付いた。辺りの様子を窺うようにして歩いていくその背を見て、フリューネと顔を見合わせる。
「テロリストかもしれないわ……様子を窺いましょう」
フリューネの言葉にリネンは頷いて、こっそりと物陰に潜んだ。
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